第206話、さやか「広樹、もう葉月は我慢しませんよ」榛名「逃げて下さい広樹!その人は危険です!」
大変お待たせしました!
書き上がりましたので投稿します!
それと本日の夕方頃、文章にいくつかミスが見つかり、数話ほど一括修正しました。
ストーリーや設定は修正しておりませんので、そのまま次話を読んで頂いて大丈夫です。
これからもよろしくお願いします。
「おはよう。そしてただいま。いや〜夜織先輩に本気で殺されかけたよ。久しぶりに地獄を見たね」
円卓に現れたのは、悪びれもなく呑気に笑顔を振りまく好青年。
「さて、僕が眠っている間に会議は進んだかい?」
笑顔で天乃が質問すると、進行していた会議を一度中断させ、立ち上がるのは屈強な強面男。
躊躇も迷いもなく、降磁は渾身の一蹴をその醜悪な笑顔をする天乃に打ち込んだ。
「いきなり!?ちょっと酷いじゃないか!?」
だが寸前で防ぐ天乃。
「キサマの笑顔を見ると無性に歪ませたくなるんだ。常日頃の行いが悪いと思って受け入れろ」
そう言いながら殺気丸出しで拳を構える降磁に、天乃は慌てて距離を取る。
「待って待って!?謝るから!せっかく治したのにまた傷だらけにされるのは御免だよ!」
破れ焦げた己の服を手振りで強調する天乃たが、それがかえって降磁の逆鱗に大きく触れた。
「だぁああああッッ!もう我慢できん!その姿を見れば分かる!キサマは耐え難い苦痛と罵倒を散々に受けたのだろう!どうしてキサマばかりぃいい!」
「そっちの意味で怒ってる!?待って!それ本当に理不尽!?」
「黙れっ!もう許せん!キサマを殺せば次は俺の番になる!戦闘学の汚点も消え、序列第二位の椅子は俺の物!メリットだらけではないか!」
「二位の椅子には興味ないよね!?欲しいのは罵倒される立場だけで!それは僕を殺しても手に入らないのは理解してる!?」
「キサマを殺して全てを手に入れる!!」
「その耳は飾りなのかい!?ちょっ!?本気で殺しに来てるっ!?」
「逃げるな!」
「逃げないと死ぬでしょ!?」
円卓の端で男達の闘争が開始される。
そんな中、女性陣はのんびりお茶をすすっていた。
「結局どうするのかしら、これ」
「知らないよ」
そこには決まらぬまま放置された要請書がある。
アイリ・エデルマンの案内兼監視役。その責務を務めたいという序列者はいなかった。
葉月──安定の興味無し。
天乃──瀕死中につき無回答。
降磁──もっと危険な任務を優先したいと拒否。
鈴子──当然の如く拒否。
詩織──能力の不安定を理由に拒否。
「もう、これでいいと思うよ」
【受注者・光崎天乃】
そう鈴子が要請書の欄に書き入れた。
「妥当ね」
「これで片付いた」
「勝手になに決めてるの!?」
「「ちっ」」
舌打ちする少女達。
「しかも油性ボールペンで書いた!?冗談じゃ済まされないよコレ!」
ゴシゴシと擦るが、全く消える気配を見せない自身の名前。
「は、葉月ちゃん!君の能力なら文字を消すくらい簡単だよね!」
青年が泣きながら助けを求めたのは、円卓の奥で沈黙を貫く白髪の少女。
「…………」
だが少女はいつも通り、何も答えないまま虚空を眺め続ける。
「やっぱり無視!?お願いだよ!ついでに僕の服も治してくれると助かるんだけどなぁ!アレだよ!第二位に恩を売るのは結構大きいよ!必ず良い事で返すから!きっと損はさせないからさ!」
頭を下げながら両手を合わせる天乃。彼が提示した内容は、詩織達が聞く限り破格の条件。
さすがの葉月でも、簡単に要請書と服を元に戻してしまうと思った。
だが、
「…………」
少女はピクリとも興味を示さなかった。
「……葉月ちゃん?」
ふと首を傾げながら近づく天乃。
そんな青年に不快感を示すように、懐から銃を取り出す葉月。
「君は……」
「…………」
銃口を向ける葉月から目を離さないまま、天乃の声は背後にいる男に向けられた。
「…降磁。僕は夜織先輩にお仕置きされてから、何時間くらい寝ていたんだい?」
「ん?丸一日だが…」
「っ。当然、会議はずっと続けられていた訳じゃないんだよね?」
「そんな訳ないじゃない。しっかりと用意された部屋で寝たわ。今日は二日目で、昨日残した議題を消化しているところよ」
「……」
詩織の言葉に天乃の瞳から笑みが消える。
そして眼前に向けられた銃を素手で握り締め、内を見せない少女に声を尖らせた。
「君は誰だ?」
────。
────。
これは犯罪ではない。
「…………」
「…………」
あ、やばい。やっぱり犯罪臭がする。
小学生くらいの女の子を家に入れるのってセーフ?アウト?それともデッドボール?
いや、それを考えるのは後だ。
とにかく今はソレを取り返さなければ…
「……は、葉月、それ返してくれないかな?」
「…………」
そこにあるのは白い封筒。
校長に渡そうと差し出した退学届けは、無垢な瞳をする少女に取られてしまっていた。
「それは大切な封筒なんだ。分かるね?」
「…………」
「は、葉月さん?どうして封筒を両手で摘んだの?えっ、破こうとしてない?ちょっ!ちょっとストップ!それ本当に大事な封筒だから!」
「…………」
必死の懇願に力が解かれる。
良かった。破れていない。
でもどうして破ろうと?
え、思い当たる節がないんだけど?なにか怒らせるような事した?
「……あー、葉月さん、どうして俺の家に?」
「…………」
「隣の部屋と間違えたのかな?確か片方は空室だったから、もう片方の部屋に用事があったんじゃないか?」
そうなると必然的に詩織に会いに来たことになる。
「隣は詩織の部屋だったな。序列第十位のエリート。まさか葉月の知り合いだったりするのか?」
「…………」
無言の圧力が半端ない。
え、本当になに?怖い。
なにも反応しないのも怖いけど、小さな女の子を部屋に入れている状況は現在進行形で危ない。
できれば早く封筒を回収してお帰り願いたい。
くっ、なにか彼女のご機嫌とりになる物は……
「…そ、そうだ葉月、面白い物があるんだ」
つい最近もらった物を思い出し、棚からそれを取ってくる。
そしてブィイイン!──っと、青いビームが出現。
それは榛名からもらった、使用者の精神状態によって様々な色のビームを出す玩具である。
「…………」
は、反応なし?
もしかして女の子はビームに興味が沸かない?
「そ、そうだ。葉月もビーム出してみないか?これは握る人によって色を変えるんだぞー」
正常な時が青色で、怒っている時が赤色だった。
もしかしたらこれで葉月の本心が分かるかもしれない。そしてついでに、
「その封筒は預かるから。ほら、このビームが出る玩具を……あ」
封筒に手を伸ばしたら避けられた。
そしてポケットに入れようとしたが、大きさが合わず折ろうとする。
「ストップ!さっきも言ったけど大切な封筒だから折らないで!」
その言葉を聞いて折るのをやめてくれた。
「ほ、ほらビームが出る玩具〜。葉月は何色のビームが出るかな〜?」
テーブルに柄を置いて葉月に行動を促すと、持っていた封筒を膝に乗せて、柄が小さな手に握られる。
「…………ん」
ボタンが押されて、葉月の手元からビームが出現する。
そして色は──
「く…黒色?」
「…………」
葉月が出したビームの色は黒だった。
青は正常、赤は怒り。
なら黒は何を表している?
榛名から何も聞いておらず、ますます葉月の本心が掴めなくなってしまう。
そしてまた僅かに恐怖心が生まれた。
「の、喉乾いていないか?」
そう言って立ち上がり、黒いビームを出す葉月を後にする。
少女がいるリビングから壁一枚隔てたキッチンに立ち、やかんに水を溜め、ガステーブルに火をつけた。
「黒色…」
何の気持ちを表しているのか想像がつかない。
放っておく?でも同じ部屋にいる以上、無視できない。
あの無表情の裏で、彼女はどんな気持ちを隠しているか。
…………駄目だ。気になる。やっぱり聞こう。
もちろん聞くのは本人ではなく、作った製作者である。
ポケットから端末を出して、彼女の連絡先を探す。電話をかけて数コール。スマホの先で彼女はのんびりとした声が響いた。
『は〜いもしもし〜』
「寝てた?」
もう昼過ぎの時間なのに声が眠そうだ。
『寝てませんよ〜、徹夜で奉仕活動をしているだけで〜す』
「え、徹夜?」
『奥さんのご機嫌を回復する為に〜……うぅ、察して頂けません?』
眠そうな声に涙がこもり始めた。
「お、おおぉ、そうか…」
どうやら相当反省したらしい。
そして今は奥さんの為に頑張っていると。
「いきなり電話して悪い。あ、それで今質問、大丈夫か?」
やや申し訳ない気持ちで榛名に聞く。
『ええ、何でも聞いて下さい。手が動かせれば問題ないので』
プロってる。さすが大人顔負けの天才だ。
じゃあ直球に聞いてしまおう。
「前にもらったビームが出る玩具なんだが──」
『ライトエールです』
「ライトエール?」
『あの玩具の名前ですよ。教えてませんでしたっけ?』
聞いてない。
『見た目がペンライトにそっくりで、さらに相手に気持ちを送る意味でその名前になりましたぁ』
「気持ちを送る?」
『ライトエールが自分の気持ちをビームの色で表現するのは知っていますよね。つまりそう言う事です。例えばピンク色が出たらアナタに恋していますみたいな』
ピンク色は好きという意味なのか。
じゃあ他にも色が設定されていても不思議じゃない。
「その色で質問なんだが」
『変わった色でも出たんですかぁ?』
察しが良い。
「ああ、黒色が出た」
『え、黒?』
そして声からのんびり感が消える。
「知り合いが出したんだ。それってどんな気持ちの時に出すんだ?」
『…今、そのお知り合いと二人っきりですか?』
「ん?そうだけど」
『っ、…本当に黒色なんですか?見間違いではなく?』
榛名の声に緊張感が帯びる。
一体何が言いたいんだろうか。
「黒色だ。間違いない」
『…………』
沈黙する榛名。そして微かに荒くなっていく息が聞こえた。
『……さい』
「榛名?」
『早くそこから逃げ─ッ!』
突如と声にノイズが走る。
電波が悪くなったのか?
『その人は危─ッ!』
立て続けに声が切れる。
だが何かを必死に伝えようとしている事だけは分かった。
「榛名、声がよく聞こえない。もう一度頼む」
電波が悪くなっているのか、端末に問題があるのか、榛名の声がノイズに掻き乱され聞こえず、そして─
『その人は広樹を─ッ!』ッ────。
ついに電話が切れた。
え?どういう事?
榛名は何を伝えようとしていた?
もう一度電話をかけようと端末を見る。だが画面の右上が圏外を表示していた。
いや、あり得ない。このマンションで圏外になった事なんて一度もなかった。
だんだんと謎の悪寒が背筋に昇る。
解けない疑問に胸が苦しくなる。
嫌な何かが背後に迫っている予感がした。
振り返る。だが誰もいない。
気の所為だ。そう自分に言い聞かせるが、拭い切れない違和感が消え切らない。
そして突如『ヒューーーーッッ!』と甲高い音が鳴り響く。心臓を破ろうと驚かせたその音は、沸騰したと伝えるヤカンの音だった。
「お、驚かせるなよっ…!」
反射的に文句が垂れる。だが帰ってくるのは鳴り止まない沸騰の音だけだ。
荒くなった呼吸を落ち着かせ、汗が滲んだ手をコンロに伸ばした。その時である。
『やん〜で〜れの〜、かな〜た〜へと〜』
「ひやぁああああッッちょっおおおおッッ!?」
突然鳴った着信音に驚き、指がコンロの熱い部分に触れてしまった。
「は、榛名ぁ〜〜!」
画面に映った名前を見て怨めしい感情がぐつぐつと沸く。
元はと言えば、あのライトエールをくれた榛名が悪い気がしてきた。
ちょっとでも文句を言ってやりたい気持ちを胸に、画面に指を押──「……へ?」
瞬間。背中に違和感が走った。
背中から胸に、体内を通じて走るのは生温かい謎の感触。
『脆弱の、き〜みに〜』
鳴り続ける着信音が耳を覆う中、端末の影に隠れた胸元を見ると、そこに黒い何かが生えていた。
…………これは?
沸騰の音。鳴り止まない音楽。胸から突き出た何か。
立て続けに襲ってきた恐怖の連鎖が、残りの理解力を殺し、恐怖のみが身を襲う。
「広樹」
そして聞こえてきたのは忘れかけていた少女の声音。
ゆっくり振り返ると、そこには──
────。
────。
「…………はぁ」
「「「「っ!?」」」」
その姿に全員が瞠目した。
沈黙を貫いていた白髪の少女が、気の抜けた溜め息を吐き出して、葉月らしからぬ歪んだ表情を見せていた。
「序列第二位に疑われたら終わりですね」
円卓は警戒心一色に染まり、ただ一人、白姫葉月の姿をしたナニかに銃口が向けられる。
「初日だけは葉月に出席させましたが、二日目は機嫌が悪く、私が代わりを勤めることになりました」
「まさか……さやか?」
「正解です」
笑う葉月の影に、いつも背後で付き添っていた女性の姿が見えた。
「身体は葉月に作ってもらいました。よく出来ているでしょう?」
「怖いわよ」
「違和感だらけ」
「恐怖しかないな」
詩織、鈴子、降磁が続いてさやかに不満をぶつける。
だが一人だけ、険しい顔で見つめる青年がいた。
「……さやかちゃん」
「何ですか?」
「葉月ちゃんは今どこにいるんだい?」
「…………」
天乃の質問に、さやかは笑顔のまま固まった。
「…………気になりますか?」
「すっっごい気になる!!ていうか会議サボってリスクを背負った時点で絶対正気じゃないよね!」
思考能力がパッパラパーの集まり。
それが大人達から変人集団と呼ばれている『序列者』である。
だがそんな彼等でも、『集合会議』だけには必ず出席する。それは校長から課されるペナルティーを恐れての理由だった。
「こうしちゃいられないッ!」
天乃は走って円卓の部屋から出ると、すぐに地上に続くホールに辿り着いて上に視点を絞る。
そして青年の身体に眩い閃光が煌めき、視界に捉えきれない速さで地上に向かって飛んだ。
「あー、そう言えば言ってなかったわね」
「寝てたから」
「構わんだろ。勝手に抜け出そうとしたアイツの自業自得だ」
上を見上げながら語り合う序列者三人。
そしてしばらくして、遥か上で小さな悲鳴が上がり、それは下に向かって落ちてきた。
「…………」
人体強化によって怪我を回避した天乃。
だが、その姿は黄色いローションに塗れていた。
「これは?」
「対天乃用ローションだ。それにヌメられれば最後、もう序列第二位は能力による高速移動はできん」
「なんでローション?」
「分からん。開発した製作者が変わった思考の持ち主で、結果的にローションになったらしい」
ウヘヘヘ、と。
見知った少女のニヤケ顔が思い浮かんだ詩織。
「くっ!せっかくのチャンスが!そしてなんで僕だけ専用ローションが作られてるの!?」
悔しさを顔に出して、天乃は降磁を見た。
「降磁!」
「断る」
「まだ何も言ってないよ!?」
既に厄介ごとの種だと、降磁の瞳は汚物を見つめるものになっていた。
「よく考えて欲しい!僕が脱出しようとしただけでこんなにも酷い姿になったんだよ!つまり君も!」
「貴様は何を言っているんだ?」
溜め息を吐き出して頭を抱える降磁。
「俺は真面目な気持ちで会議に出席したんだ。それなのにお前は自分勝手に脱出を試み、挙句の果てにボロボロにされてしまえば俺も我慢できなくなるだろ」
「ん?どっちの意味で?」
鈴子が声を漏らした瞬間、激しい衝撃音が鳴り響き、降磁の姿が遥か彼方へと飛び去った。
「あのドMの対策は…」
「聞いてない…」
天乃の脱出対策は、彼を除いた全員に周知されていた。それは校長からの天乃に対する嫌がらせであり、面白いことがあれば必ず脱出しようとする天乃の行動を予期しての事だった。
故にまだ、他の序列者に何が襲いかかってくるか分からない。そして、また上から小さな悲鳴が鳴り響いた。
「降りてきたわね」
そこには傷一つなく、襲われた痕跡のない降磁がいる。
だが両手には何十冊にも及ぶ薄い本が集められていた。
「それは?」
「触るなッッ!」
「「っ!?」」
「…………お前達にはまだ早い」
さっきまでの興奮はどこに行ったのか、冷めた口調で表情を落とす降磁。
「校長も考えましたね」
背後から本を抜き取り、一枚めくる葉月…の、姿をした人工知能さやか。
「序列第八位が描いた本です」
「「……」」
それを聞き、詩織と鈴子が一歩下がる。
「天乃×降磁のBLモノですね」
「言うな」
「訓練中に襲われて『痛めつけられて喜ぶ君でも、こっちの方はどうかな?』と」
「抜粋して読むのをやめろぉおおッッ!!」
怒りの形相で本を奪うと、降磁は息を荒くしたまま廊下の奥へと向かった。
「気の毒ね」
精神に深い痛手を負った男の背中に、哀れみの言葉を呟く詩織。
「そうですか?人選はともかく、ストーリー性と画力は評価しますよ」
冷静に分析するのは、また別の一冊を持っていたさやかだった。
「それは?」
「彼が奪い損ねた分です。最初から二冊抜き取っていたので」
抜け目のない人工知能は、フムフムとページをめくっていく。
「彼女も腕を上げましたね」
「さやかにそういう趣味が?」
「これも立派な愛の形ですよ。生物の愛し方は千差万別無限大ですからね」
葉月の顔で真面目に論じられ、激しい寒気に襲われる詩織と鈴子。
「葉月に言われると恐怖があるわね」
「本気になったら私達は逃げられない」
相手が本物の序列第一位と仮定して勝手に震える彼女達に、さやかは微笑んで言う。
「葉月は女の子が好きではありませんよ」
「でも男が好きでもないわよね?」
「それ私も思う」
詩織の意見に鈴子も同調した。
「まだ異性を意識できない雰囲気があるし」
「いえ、異性への意識でしたら数年前に開花してますよ」
葉月の保護者役である人工知能の言葉に、二人は疑いを漏らす。
「あの葉月が?」
「きっかけは?」
「んー、主人に黙って教えていいか悩みますね」
ニヤニヤと笑う葉月の顔。
だがふと、視線は下に向けられた。
「あ、僕のことは構わず、そこらに転がったローション塗れの小石と思って話しの続きを」
いつもの真顔になった少女の幼顔。
無言で振り返り、詩織と鈴子の背中を押した。
「さあ部屋に戻りましょう」
「いやいや〜。僕のハッキング能力は知っているよね。今すぐにでも君の頭に触れて、データを吸い上げることだって出来るんだよ?」
「その時は緊急消去を起動させて私は消えます。もちろんバックアップは葉月が持っているので心配ありません」
「自分を大切にしなよ〜、そうなったら今の君は消えるんだよ〜」
「人工知能に恐怖心があるとでも?」
一切の迷いも見せない人工知能に、天乃は完敗だと溜め息を吐き出す。
「でも一つだけ聞かせてくれないか?」
「嫌です」
「取り付く隙も無し?」
「灯花様からお願いされ、葉月にも命令されましたので。アナタに向ける態度は最底辺でいいと」
読みに来てくれてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




