↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

385/447

【第376話】敵中突破

「城壁の一から五番砲塔、全て破壊されました!」


 伝令兵の声が響き渡り、前庭で空中の敵と対峙する兵士たちに緊張が走る。


「サウラープロクスの残りは?」


「三体です!」


 魔導榴砲(エクスプレームス)なしで、三体のサウラープロクスを止める事は出来ないだろう。


 城壁が破壊されるのも時間の問題だ。


 戦局は芳しくない。


 ワイバーン三体を倒したものの、残る対空用のエクスプレームスは二門。


 敗北の文字が、アリエルの脳裏に浮かぶ。


「いいえ、まだっ」


 アリエルは拒絶するように首を振った。


 終わらない、終わらせない。


「ラヴィトル、指揮所を城内の広間へ移して」


「はっ、直ちに」


 ようやくアリエルが後方に下がる決断を下した事に、ラヴィトルは胸を撫でおろした。


 戦況を直に見極めるためとはいえ、ハイエルフの王女が戦闘の最前線に出る必要はない。


「それから、指揮は貴方に任せる」


 アリエルは神弓『エネイブル』を手に立ち上がった。


「お任せを」


 急ぎ城内へ向かおうとしたラヴィトルだったが、アリエルが動こうとしない事に気付き足を止める。


「アリエル様?」


「先に行って。わたくしは、城館遺構の装置で反魔導領域(リ・エクスレウム)を起動させる」


反魔導領域(リ・エクスレウム)、ですか? それは一体……」


 ラヴィトルは首を傾げる。


「六百年前に廃棄された、古い仕組みの魔力結界。たぶん、まだ動くはず」


「お待ちください! 城館遺構は城壁の外、あまりに危険過ぎます!」


 しかも、目標は動くかどうかも分からない年代物だ。


 だが、アリエルの決意は変わらない。


「聞いてラヴィトル。このままでは城壁を破られたら、わたくしたちは確実に負ける。それなら、賭けてみるのも悪くない。もしリ・エクスレウムを起動できれば、後三日は持ちこたえられるから」


「では、私が」


 身代わりを申し出るラヴィトルに、アリエルはそっと首を振る。


「あれは、ハイエルフのわたくしにしか動かせない」


 ならばせめて。と、護衛の兵四名の同行を進言し、アリエルもそれを受け入れた。


「じゃあ、後はお願い。行くよ、リィルム」


「はっ」


「ご武運を!」


 それぞれが、目的の方向に向かい駆け出す。


 城館遺構は九百年前に建てられた旧城跡で、現在の城から北西の方向に建物の一部が残されている。


「そこに、旧型の結界装置があるのですか?」


「そう」


 城壁の階段を駆け上がりながら、アリエルはリィルムの問いに短く答える。


 魔物に囲まれているため、城門から出る事はできない。


 飛翔(ソアース)の魔法も、空中に敵がいる状況では危険過ぎる。


 アリエルたちは、城壁の上から風魔法を使って飛び降りた。


「気を付けて!」


 着地したと同時に、護衛はアリエルの周囲に散開。


 先頭をリィルムが務め、遺構に向かって駆け出す。


「邪魔をするな!」


 次々と飛び掛かってくるフォレストウルフを、リィルムが即座に斬捨てる。


 見事な剣捌きだ。


「リィルム。槍が得意ではなかったの?」


「はい。ですが、今は()()で」


 リィルムは、軽く剣を掲げた。


 密集した状態では、剣の方が取り回しが良いという事だろう。


「グロムレパードです!」


 正面先に、二頭のグロムレパードが立ち塞がる。


 やつらに殺撃(エレクトロ)放電(キューション)を撃たれるのは不味い。


「皆、避けて」


 前にいた兵士が脇に避け、アリエルの射線を開く。


 すかさず、アリエルが神弓『エネイブル』を構え、光の矢を放つ。


 一条の光は弓を離れた直後二つに別れ、二頭のグロムレパードを同時に貫いた。


「もう少し!」


 魔物を蹴散らし、遺構の入口へと駆け寄る。


 扉脇の仕掛けにアリエルが手をかざすと、分厚い金属の扉が開く。


 全員が建物に入り、扉を閉める。


 これで、暫くは魔物の侵入を防げるだろう。


「装置は三階」


 中央の階段を駆け上がる。


 一階と二階には辛うじて壁が残されているものの、三階へ上がるとそこには殆ど壁も屋根もなく、むき出しの状態だった。


「空からの攻撃に警戒しろ!」


 状況を見て、リィルムが叫ぶ。


 崩れた廊下を抜け、奥の広間へ。


 広間へ駆け込むと、その中央に古い結界装置が見えた。


「起動に少し時間がかかるかも」


 アリエルは、結界装置の前に立つ。


 その直後、妙な違和感を覚え装置に置いた手をふと止めた。


 誰の返事もない。


 代わりに、遠くから響く戦闘音に混じって、微かに聞こえた呻き声。


「困りますね、こんな古い物を持ち出されては」


 今度ははっきりと、リィルムの声が響く。


 アリエルが振り返ると、そこには息絶えた四人の兵士と、血の滴る剣を握り、悪意に満ちた笑みを浮かべるリィルムが立っていた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下記のサイト様のランキングに参加しています。
よろしければクリックをお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング
こちらもよろしくお願いします。
【異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで】
― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 骨董(ロステク)もロマンですなぁw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。