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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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119/123

15-15

 諦めと共に俺は火の海の中へと飛び込む。

 ここから先は早乙女との肉弾戦。といっても正直に真正面から戦うつもりはないので飛び道具から。適当に武器を生み出し、猛り狂っている早乙女に投げつける。小道具のために体力を消耗しても仕方がないので消耗品は雑にいくのが一番。その分効果はいま一つになるのも仕方がない。

 奴さんはフィクサー側に薬物か何かを投与されてご乱心。全方位に力を放出しているのだから飛び道具を用いたところで傷を負わせることはできない。

 そんなことは理解したうえで飛び道具を使い続ける。目的は早乙女を傷つけることではない。重要なのは暴れている存在の行動に意味を持たせること。何も考えず力を振るう相手など対処が難しい。ならば身を守るために多少強い抵抗されても理解出来る行動をとらせた方がまだ対処ができる。

 ご乱心でも身の危険に対しては正確な防御機能は発動するらしい。早乙女は俺の投擲を念動力の石礫と頭髪で薙ぎ払う。

 暴発状態の中にありながら自身の身を守るという理解できる行動をとる早乙女。そのとばっちりの合間を縫って距離を縮める。偉大な力を持つヒロイン様の暴走なので事は容易ではない。頬に傷を負って、手足に穴を開けて何とか距離を埋めていく。

 無傷など当然無理で無茶も無謀も押しとおす。そうしてようやく早乙女に肉薄する。


 そこで確認できたものはヒロインがヒロインでない姿。

 目は虚ろで口は半開き。おまけによだれが垂れているという世間様には見せられないもの。まあ、お薬で暴走させられればそんなものだろう。


 生気の感じられない早乙女と手を伸ばせば触れられそうなほどの距離。

 そこで早乙女の首がガクンと落ち、その反動で白く美しい髪が飛来する。

 早乙女の髪の毛はただの少女のモノではない。先の戯れでそれが鉄剣と同等であると理解体験している。詰まる所、俺には無数の剣の雨が降り注いだわけだ。


 それをどうするか。

 答えは至極簡単。

 どうもしない。


 肉薄したところで振りかざされた白髪の剣。それは伸縮自在でかわすことが出来ない。距離をとっても追跡してくる。ならばどうするか。逃げなければいい。

 早乙女の綺麗な白髪を俺は度量の広い胸で受け止める。右胸から左胸までくまなく受け止める。

 もちろんだが、痛い。

 血が出る。吐血する。

 けれど、それだけだ。


 こちとら既にニンゲンなどやめている。ならば肉体にこだわる意味はない。最悪様子見として残してあるロジィがある。

 そう理屈をこねて本能と感覚をねじ伏せる。凡人である俺にはそんな方法でしか痛みと恐怖は覆せない。


 痛みと恐怖を抑え込めば目の前にあるのは無防備な少女。面倒な髪の毛を俺自身に巻き付けて制御を奪い早乙女を羽交い絞めにする。どれほど優秀で切れ味の良い剣であっても振るう事が出来なければ役に立たない。おまけに髪であるがゆえに切り離せずに距離もとることが出来ない。

 まあ、髪の毛など切り落とせばどうとでもなるのだがご乱心ではそこまで気が回らないのだろう。


 肉薄し相手の動きを制限できればこちらのもの。往生際の悪い早乙女は念動力による石礫で傷を増やしてくるが痛みなど既に許容量を超えている。今更増えたところで大して変わらない。

 そうして絡めとった少女の首筋に歯を立てる。

 胸に手を突き立てて心臓を責める方が効率的なのだが制御に手を用いているのでそうも出来ない。心臓以外にニンゲンの身体に効率的に負傷を負わせることが出来、なおかつ今の体勢で狙えるのは首筋ぐらいしかないのだ。


 少女の柔肌に歯を突き立てると同時に生暖かい液体が顔を濡らし鉄のにおいが鼻を衝く。かなり猟奇的で生理的嫌悪を想起させるのだが仕方のないことだ。とはいえ単純に肉体破壊が目的ではないので超常的なこともしておく。

 イメージは吸血鬼。血を吸い上げるのではなく早乙女自身の持つ魔力妖気生命力、そういった摩訶不思議力を吸い上げていく。この辺りはイメージや思い込みが重要なので適当にいく。

 後は俺と早乙女との根競べ。こちらが痛みと恐怖に屈するのが先か早乙女が干物になるのが先か。戦況は持久戦の様相を呈してきた。


 しばらくして力関係が崩れそうになったところで状況が変化する。勝負の決着とはそう簡単に決まらないものだ。吸引に必死になっている中でロジィの悲鳴に似た声が脳内に響く。



「今、何かとてつもないものがあなたの元へ飛んでいきましたが大丈夫ですの!?」



 残念なことに全然大丈夫ではなかった。

 ロジィの警告が言葉として脳内で理解するころには体に結果が表れていた。



「かっ、くっふっ」



 吐血にうめく声は誰のものだっただろうか。俺のモノか、あるいは早乙女のモノか。

 いずれにしても俺も早乙女も盛大に血を巻き散らかした。既に血を流し過ぎている俺からは然程の飛散はなかったものの早乙女の胸元からは盛大に飛び散っている。

 原因は簡単なこと俺の背中から通った巨大な鉄杭が早乙女の胸まで貫通していた。それはまるで吸血鬼退治の様。いろいろと血生臭すぎる。


 そしてそんな面倒なことをしてくれた御仁は誰かというと。



「えっと、誰だっけか」



 それは見覚えのない女性だった。

 だから面倒だったのでサクッと首を撥ねた。小さな声で「お兄様」などと漏らしているような気もしたが聞こえなかった。俺の周りにはシスコンブラコンなどいないしな。たぶん。

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