あとがき
この作品は僕の主宰する文芸サークル『文机』の発行する文芸誌『コトダマ』創刊号に掲載したもので、「はじめまして」をテーマに書き下ろした短編小説です。
意外と挑戦作になってしまいました。ここまでマトモに恋愛小説を書いたのは初めてです。マジで。
念頭にあったのは「はじめまして」を別れの挨拶に使うこと。だから「はじめまして」に的を絞り、梨本理子を形成する要素として「さかさま理論」を設定したのです。本来の用途と、最後の「はじめまして」に対する「さかさま理論」の使い方は間違っている気もするのですが。
全く関係のない挑戦要素としては、実際の舞台や飲食物をたくさん出したことです。東京メトロの駅や、浅草、お台場のスポットなどですね。
こういうときは実際に行って、自分で感じたことを書くのが基本なのですが、大阪からぱっと行ってくるというわけにも行かず、仕方なくガイドブックを買ってそれを元に書きました。
ただ、資料不足もあり、物語の都合等からいくつか実際にはない店や、想像で書いた部分があったりしますので、その辺の突っ込みや追求は勘弁してください(笑)。
本作は僕にしては珍しく、一人称小説になっています。今まで書いてきた話は主人公とは違ったサイドから語る必要性があったのですが、今回はそれがなかったですし、主人公の心情をストレートに表すのには一人称が適当だったのです。
ラストの展開などは一人称の強みがすごく出ていたとおもうのですが、いかがでしょうか?
これからも企画短編では小説家としての挑戦が続いていきそうです。怖いような楽しみなような……。




