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婚約破棄されたら実態評価★1.2の公爵に拾われました ~検索履歴、全部わたしで埋まってます~  作者: じょな


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15

王都の新しい政府から、実家が隠し持っていたすべての財産と権利が、私たちの元へ引き渡されてから数日の月日が流れていた。


かつては凍てつく吹雪が吹き荒れていたフロストヘイムの領地は、今や見違えるほどあたたかで、活気あふれる街へと生まれ変わっている。

領主館の窓から見下ろす大通りには、新しく敷設された美しい石畳の上を、隣国からやってきた色鮮やかな交易馬車が列をなして進んでいた。

市場からは、焼きたてのパンの香ばしい匂いや、南国の珍しい果物の甘い香りが、心地よい春の風に乗って最上階の執務室にまで届いている。


しかし、領地がどれほど豊かに賑わおうとも、私の隣にいる旦那様の過保護な甘やかし方だけは、さらなる深い領域へと突き進んでいた。


「レティシア、その隣国の特使から届いた手紙には直接触れないでくれ。先ほどセバスが魔法で厳重に検査したとはいえ、紙の裏に、どのような異国の怪しい毒が仕込まれているか分かったものではない。お前が指先を僅かでも痛めるようなことがあれば、俺は今すぐその隣国へ軍を向け、王宮の書庫ごとすべてをこの世から消滅させる。そんな恐ろしい事態は未然に防がねばならないのだ」


大執務室の机に向かっていた私の真横で、ギルバート様が国の一大危機にでも直面したかのような厳しい顔で私の手元を遮っていた。


白銀の髪を美しく揺らし、仕立ての良い漆黒の軍服の襟元を端正な手つきで直した彼は、まるで世界に一つしか存在しない壊れやすいガラス細工に触れるかのような手つきで、私から手紙をそっと引き離す。

その深く美しい紅色の瞳には、私という存在をこの世のあらゆる危険から守り抜きたいという、あまりにも熱く重い情熱がぎらぎらと宿っていた。


私の網膜の奥だけで稼働するシステムウィンドウは、今日も今日とて視界を埋め尽くさんばかりの黄金文字を点滅させている。


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【現在の感情ゲージ:レティシアへの愛しさが限界突破】

ログ:『隣国の特使の男め、手紙にこれほど大袈裟な花の香りを仕込み

おって絶対に許さん。レティシアを誘惑しようという魂胆が見え透いている。

今すぐあの使節団を領内の最も冷たい氷の地下牢へ閉じ込めて、

俺の温かい魔力だけで満たしたこの部屋の中にレティシアを囲い込み、

一生二人きりで甘い時間を過ごすべきではないか。領内の仕事など

他の奴らに丸投げすればいいのだ。なぜレティシアは、これほど俺に

愛されているというのに、平然と新しい隣国の税率の計算など

できるのだ。ああ、俺の全財産もこの力も、お前の爪の先ほどの

価値もない。レティシア、愛している、俺だけを見てくれ……!』

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


私は手元の羽ペンを置き、私の手を愛おしそうに包み込んでいる彼の大きな手を、私の両手できゅっと握りしめた。

剣のタコが固い彼の逞しい肌から、彼の内面にある熱い想いが、心地よい体温となって私の肌へと流れ込んでくる。

これほどの過保護は普通なら息苦しいはずなのに、私にとっては、これほど愛おしく、大切にしてくれる旦那様は他にいないと思えるほど、胸があたたかさで満たされていた。


「ありがとうございます、ギルバート様。けれど心配しすぎですわ。私、この領地に来てから、貴方の温かい魔法のおかげで毎日とても元気に過ごせておりますもの。ほら、そんなに怖いお顔をなさらないで? せっかくの格好良いお顔が台無しになってしまいますわ」


私が悪戯っぽく微笑み、彼の引き締まった顎のラインを指先でトントンと突くと、ギルバート様の頭上のウィンドウは、私からの優しいおねだりに完全にノックアウトされ、頭の中が真っ白になってしまったという表示をしてフリーズした。

彼は普段の冷徹な表情を崩さないように必死に堪えながら、耳の付け根から首筋までを真っ赤に染め上げ、私の腰をそっと抱き寄せてきた。


「お前がそう言うのなら、俺は我慢するが……。だが、お前が俺以外の物事に夢中になっている時間は、俺にとっては耐え難いほど寂しいのだ。レティシア、お前は俺が生涯をかけて愛すると誓った最愛の妻だろう。俺にこれほど狂おしい執着を植え付けた責任を、一生をかけて取ってもらうからな」


「ええ、望むところですわ。貴方のその深い愛を、私が世界一幸せな形で受け止めて差し上げます」


――ここで、カメラの視線をテラスの窓の外、領主館の緑豊かな中庭へと一気に切り替える。


中庭の白い東屋では、王都からやってきた若き文官のリーダーであるエドガーと、数人の部下たちが、実家から取り戻した新しい交易路の地図を広げて熱い議論を交わしていた。

そこへ、完璧な仕立ての衣服を着こなした執事のセバスが、冷たい特製の果実水が載った銀トレイを手に、音もなく歩み寄ってくる。


「皆様、少々休憩にいたしましょう。奥様が特別に配合してくださった、頭の疲れがすっきりと取れる蜂蜜入りの果実水でございますよ」


「おお、セバス殿! ありがとうございます!」


エドガーは喉を鳴らしながらグラスを受け取り、一気に飲み干した。

その顔には、かつて王宮でカイル王子に理不尽に虐げられ、泣きそうな顔をしていた頃の面影はどこにもない。自分たちの実力で領地を支えているという誇りと充実感が、その瞳に満ちあふれている。


「それにしても、セバス殿。先ほど執務室へ新しい書類を届けに行ったのですが……殿様が奥様のお手紙をそれはもう恐ろしいほどの真剣な顔で見つめていらっしゃいまして。私はてっきり、何か重大な戦争の予兆でも発見されたのかと緊張したのですが、あれは……その、ただお二人が仲睦まじくされていただけ、なのでしょうか?」


若手の文官の一人が、顔を赤くしながらセバスに尋ねる。

セバスは眼鏡の奥の瞳を悪戯っぽく細め、ふっと優しく微笑んだ。


「おや、気づかれてしまいましたか。旦那様にとっては、奥様に届く異国からの手紙一通すら、領地の何よりも重大な大事件なのです。先代の公爵様方は、その大きすぎる愛の魔法を制御できずに領地を極寒の地へと変えてしまいましたが、今の旦那様は違います」


セバスは中庭から最上階の執務室の窓を見上げ、深い愛着の籠もった声で続けた。


「レティシア奥様という、世界で唯一の完璧なパートナーが隣にいる。奥様が旦那様の熱い想いをすべて受け止め、領地を温める魔法や産業を動かす力へと一番良い形で繋いでくださっているからこそ、このフロストヘイムは今、歴史上最もあたたかく、豊かな春を迎えているのです。あれはお二人が共に生み出す、極上の幸せの形なのですよ」


エドガーたちはセバスの言葉に深く感じ入ったように、最上階の窓を見上げ、それから手元の書類へと力強く視線を戻した。


「なるほど……。王都での過去の苦しみを乗り越えて、これからは世界中の市場が奥様の手によって新しく生まれ変わっていくのですね。私たちも、もっとしっかりとお二人の手足として働かなければなりませんね。さあ、次の計画の続きを始めましょう!」


――再び、カメラワークは最上階の大執務室、レティシアとギルバートの元へと戻る。


扉が静かに開かれ、セバスが完璧な一礼とともに入室してきた。その手には、隣国の特使との直接交渉を目前に控えた、一本の美しいペンが握られていた。


「旦那様、奥様。隣国の使節団が、謁見の間にてお待ちかねでございます。実家の古い書類に隠されていた、彼らの秘密の弱みをすべて握った状態での交渉となります。準備は万端でございます」


セバスの報告に、私はふっと冷ややかで、しかしどこまでも美しい、これから始まる勝利を確信した笑みを浮かべた。


「あらあら、実家の愚かな人間たちが遺してくれたデータが、こうして世界を動かすための最大の武器に化けるなんて、本当に面白いわ。カイル殿下たちが鉱山の底で泥にまみれて働いている間に、私たちはこの世界の経済そのものを、我がヴォルフィード公爵家の味方にしてしまいましょうか」


「当然だ。お前を傷つけようとしたすべての過去を踏み潰し、この世界のすべての富を、お前の足元に捧げてみせる」


ギルバート様が、私の腰を抱く腕にさらにぎゅっと力を込めながら、冷然と、しかし世界で一番格好良い声で告げた。

その瞳には、私を害するすべての過去を完全に支配したという、圧倒的な強者の風格が満ちあふれている。

けれど、彼の頭上には、レティシアが世界を動かす立派な姿を称えて、今すぐ彼女の記念館を建てて永久に飾りたいという、相変わらず愛の重すぎる本音が踊っていた。


私を無価値だと切り捨て、物置小屋に閉じ込め、夜会で笑いものにしていた人間たちは、すでにこの世界から完全に追い払われた。

そして今、私たちの前に広がるのは、自らの能力と愛の熱量によって無限に拡大していく、どこまでも幸せな未来だけだ。


「さあ、ギルバート様。世界中を驚かせる新しい計画も、私たちの力で完璧に成功させましょう」


「ああ、レティシア。お前の望むままに、俺のすべてを好きに使ってくれ。俺は一生、お前だけの忠実な騎士であり、お前を世界一甘やかす夫だ」


私は彼の広い胸にそっと身を委ね、春の光に満ちた新しいフロストヘイムの領地を見渡した。


ちょっと困ってしまうほど愛の重い旦那様と、世界を相手に大活躍する有能な追放令嬢の、終わりのない幸福の物語。

私たちの結んだ完璧な結婚の帳簿には、これから先も、どこまでも豊かで、あたたかい愛の喜びだけが、永遠に刻まれ続けていくのだった。


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