表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

希望

「今日はすごい日だったな……」


 ベッドの上で伸びをしながら俺は言った。思い返してみても、色々ありすぎて大変な一日だった。肉体的にも精神的にも疲れているようで、さすがに眠くなってくる。


「だなぁ、しょうちゃん」


 弟は泣きすぎて喉が渇いたらしい。絶対にもう二度と、大事なゆうちゃんを泣かせたくない。強く、そう思う。

 甘えてゆうちゃんが抱きついてきた。なんとなく、くすぐったいような気恥ずかしいような。でも、そんな由紀がたまらなく愛しい。


「構って欲しいのかよ」

「うん、お願いします」

「じゃあ三秒、目つぶって」


 弟は言われたとおり瞳を閉じる。


「ゆうちゃん、大好きだよ。おやすみ」


 そう言って、俺は彼に優しくキスをした。その途端、ゆうちゃんの表情がふわっと笑顔に変わる。


「うん。今日はお疲れ様」


 それを見て、思わず強くぎゅっと抱きしめる。あんまり力を入れすぎて、「苦しいよ」って苦笑いされてしまったけど。


 長かった一日が、ようやく終わった。明日から、俺はまたバイトと大学の、弟と妹は学校の日々が始まる。でも、これからはこれまでとは違う、新しい毎日が始まるんだ。

 いつまでも家族みんな、そして誰よりもゆうちゃんが幸せでいられますように……そう心の中で願いながら、俺たちはそのままゆっくりと眠りに落ちていった。



 あれから俺たちは何度も口付けを交わした。さすがにまだセックスは出来ないけれども。

 男同士であって、兄弟であって。性別の壁を壊して、ようやくひとりの人として愛し合おうと思ったら、兄弟の壁があることを再確認した。あまりの壁の多さに泣きたくなる。

 男兄弟で恋愛だぜ?狂ってるよな。でも俺は弟が好きで、弟は俺以上に俺のことが好きなんだ。

 家族愛とかそんなんじゃない。倫理観を無視した恋ってのは知ってる。兄弟でこんなことしてるのは俺らだけだろうな……。

 始めは弟との関係を思い出すたび、気持ちに反して吐いてばかりだった。こんなにも弟が好きなのに、理性が、体が拒否してた。精神的にもヤバくて、自分の手首をじっと見つめてる時があった。

 実は、弟に別れを切り出した時、ポケットに睡眠薬が入ってたんだ。駄目だったら死のうと思って。自殺を考えてた俺は、かなり追い詰められてたんだと思う。

 兄弟間で恋愛って難しいよ、死にたくなるよ。でも、支えてくれた人たち全てに感謝してる。今はもう、ゆうちゃん、あーちゃん、母さんを泣かせるようなことはしないって誓う。

 弟妹は大切に、兄姉がいる奴らはたくさん甘えておけばいい。ひとつ屋根の下で生きてるってとんでもない奇跡だからな。

 みんなに、ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ