55 竜騎士団3年目 出向者
新年度も一ヶ月が過ぎ、聖騎士団からの出向者が竜騎士団にやってくる日となった。
今は団長が出向者を出迎えに行っており、詰所ではメンバーが待機している。
どんな組織でも新しい人がやってくるときは特別な雰囲気になる。
特に、ナツキ以外のメンバーにとっては久しぶりに非転生者を迎え入れるということで、興味もひとしおである。
そんな中、団長と共に詰所の扉を潜った出向者は女性。
真面目そうな雰囲気。銀縁メガネがキラリと光っている。
「出向者を紹介します。聖騎士団のフウカさん。期間は半年間を予定しています」
「宜しくお願いします」
挨拶を終えると、団員は解散。
そんな中、ユリは詰所に残っている。
「聖騎士団からの出向者ってフウカだったの?」
「うん。ユリ、久しぶり」
「ええ。久しぶり」
二人は親し気に話し始めた。
「分かってたなら、言ってくれたらよかったのに」
「驚かせようと思って内緒にしてたの。びっくりした?」
「びっくりしたわよ」
見た目真面目そうなフウカさんと、見た目だけは真面目でデキる感じのユリさん。
傍からみているといかにもキャリアウーマンの交流という雰囲気だが・・・
「お二人はお知り合いなのですか?」
「ええ。同級生。懐かしいわ~。あの頃はお互い若かった・・・」
「10年近く前のことです。ユリは当時から問題児だったね」
「人聞きの悪いことは言わないでほしいわ。それを言うならフウカの方がヤンチャだったじゃない」
「えー?そんなことないよ。変なイメージ着くようなこと言っちゃダメだよ」
見た目以上に親しみやすい性格のようだ。
「カイ団長はどう思う?」
「コメントは差し控えたいと思います」
フウカは団長に話を振った。
「団長も知り合いなんですか?」
「ユリさんの友達だからね。昔馴染みではあるんだ。・・・当時は何度も酷い目にあわされたよ」
「酷い目ですか」
「冬の雪山で断崖絶壁から落とされたこともあった。一瞬死ぬかと思ったし、リアルに殺意を感じた」
「またまた~。カイ団長はあの程度で死ぬようなタマじゃないでしょう?実際無傷で生還したし。信頼の証だよ」
「ほら、こういう人だから。ケイも十分気を付けるように」
団長は真面目な顔でケイに告げた。
類は友を呼ぶ。ユリさんの友人という情報だけでも、普通じゃない人のような気がしてきた。
実際はそんなことはなく、前述の出来事も団長と親しく、実力を知るが故の無礼講だと思いたい。
・・・それでも親しい人間を崖から落とす時点で大分おかしい気もする。
そのまま話しを続ける3人に、なんとなく他のメンバーは混ざり難い。
新人が来たと思ったら、年上で自部署のベテランと親しく、対等に話せるような人物だった。
何だかモヤモヤする。
そう思っていると、フウカの視線がケイに向いた。
「貴方がケイさんね」
「はい。ケイです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。コヨミがお世話になったみたいですね。その節はありがとうございました」
「いえ・・・こちらこそお世話になりました」
当然、出向の原因となった事件のことは知っていてしかるべきだが、この言い方はそれ以上の含みがありそうだ。
ケイの疑問を感じたのか、フウカは続けた。
「コヨミとは個人的に親しくしているんです。部署は違うけれど可愛い後輩といったところですね。妹さんのことも聞いています。彼女たちの友人として貴方には非常に感謝しています」
「そんな、気になさらないでください」
このままだと聖地関連の話が出てきそうな気がする。この場にはナツキもいるので、あまり変なことは喋れない。
「昨年プライベートで、ケイくんがコヨミさんって聖騎士団員さんとその家族と色々あったの」
「あ、そうなんですね」
ナツキにはマヤが小声で説明しているのが聞こえた。
フウカも聖地関連の話題は公にしたくないことを何となく察したようで、ケイの話題変更に乗ってきた。
「コヨミさんは今も警備部門だと聞いていますが」
「ええ。私も前は警備部門に所属していたのですけど、今の所属は事務処理関係の部署です。なので、長いこと実戦経験から遠ざかっていて・・・業務についていけるか少し不安です」
個人戦闘力が重視される竜騎士団への出向者が事務処理の部署出身?と思ったところでユリの注釈が入った。
「騙されたらダメ。フウカはバリバリの武闘派だから。脳筋と言ってもいいわ」
「脳筋は酷くない?」
「ひどくない。正しい評価よ。カイだってそう思ってるわ」
「カイ団長、それ本当ですか?」
「学生時代までの記憶だと、フウカさんの戦闘技術はなかなかのレベルだったね」
団長の言葉はどちらか一方の側に立つようなものではなかった。
こういうところ、団長の危機回避能力は見習いたい。
ケイも話を戻した。
「フウカさんは竜騎士団に来て、本当に討伐任務に携わるのですか?先ほどの紹介では業務内容はおいおいということでしたが」
「今のフウカさんの実力次第だが、私としては無理のない範囲で討伐任務をやってほしい。半年という短い期間ではあるが、特殊個体討伐についてのノウハウを共通して聖騎士団が特殊個体を処理できるようになると、我々としても楽になる」
「ノウハウとか、聖騎士団に渡してもいいの?」
フウカさんの質問は多少挑発的なニュアンスを含んでいた。
団長はきっぱりと答えた。
「構わない。討伐任務の目的は特殊個体による被害を最小限に抑えることで、竜騎士団がその業務を独占することではない。聖騎士団と共有することで目的が達成できるなら、それでいい。・・・とはいえ、全部が全部情報を共有できるわけではないので、そこは要相談です。それに、逆に聖騎士団のノウハウも共有してもらうと、竜騎士団としては嬉しいな」
「ふーん・・・」
フウカは思うところがあるのか、いったん言葉を止めた。
その後出てきたセリフは
「まぁいいわ。そういうことなら、私もそのつもりでやらせてもらいます。じゃあ、早速腕試しということで、闘る?相手は・・・貴方、お願いできますか?」
「・・・え?」
フウカの視線の先にいたのは、今までの話を傍らで聞いていたナツキだった。




