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30 竜騎士団2年目 帝国と魔国

プロットを少し修正していて、投稿に時間が空きました。

エタってはいません。


やってきたのは市長室。

いつも通り、応接用のテーブルセットの椅子に座る。


市長が口火を切り、先ほど詰所で行った話に関して打ち合わせを始めた。


「島関連の不穏な動きのことは聞いているな。列島領の件は確定情報ではない、ということだったがほぼ間違いない。可能性は100%ではなく90%ですよ、という程度の意味でしかない」

「その根拠は?」

「帝都にいる近衛の伝手からだ。列島領の警備から近衛の出張所が入手した情報が帝都の近衛本部に上がった。出張所の近衛は他騎士団との情報共有ルートが確立している。信用できる」


組織力の近衛騎士団、という言葉がケイに浮かんだ。

市長はケイの方を向いて補足した。


「出張所の近衛の責任者は人間関係構築能力に優れた者がつく。国境に配備される性格上、帝国軍(対人騎士団)との適切な関係を築けることが重要になってくる。一癖ある団員たちに睨みを利かせることが求められる、竜騎士団の団長とは要求事項が違う」

「私も竜騎士団の皆を掌握しているとは言い難い。近衛でやっていくのはなおさら無理だろうな」

「カイは戦闘の特化型スペシャリスト。それはそれで必要不可欠な存在だ」


人を相手にするのと魔物を相手にするのでは勝手が異なる。

各人が適切に役割を果たすべきだということか。


「ケイ、君は将来を考えたことはあるか?このまま竜騎士団員として特殊個体を狩り続けるのか、あるいは上の立場に立って、組織をマネジメントしたいのか」

「私は・・・」


俺は、どうなりたいのだろう?

ずっと団長を目指していた。となると、特化型スペシャリスト


市長らが望む方向は特化型ではないだろう。団長補佐を任命された理由は、マネジメント方向の役割を担う団員として期待されたためと推測できる。

となると、自分がやりたいことと、市長が求めることが違うことになる。


数か月前まで、ツララの方向性について悩んでいた時と同じ状況だ。

決定権を持つものと自身の望む方向が違っている。


ケイ自身の意思がある程度尊重される点は、仮所属中のツララと異なる。

もっとも、自分の教育担当がいないために本人の意思の比率が上がっているだけなので、素直には喜べないが。


「まぁ、今ここで決めることではない。現時点では心の奥で考えておけばよい。・・・話を戻すぞ」

「はい・・・」


「賊が諸島連合の住人であることに加え、その後ろに魔国がいることまで調べがついている」

「魔国、ですか」

「それは確かなのか?」


団長の問いに対して、市長は答えた。


「こちらもほぼ間違いない。7年前と同じだ」

「そうか・・・」

「あの、7年前になにかあったのですか?」


ケイの言葉を受けた市長の視線に対し、団長が答える。


「まだあの件は話していない。いい機会だから、ここで話そうと思って」

「そうか。ではその件もだな」


市長は続けた。


「7年前に大規模な魔国の侵攻計画が進んでいた。それを事前に潰したのだ」

「侵攻計画、ですか?」


「魔国の操り人形となった者が列島領の為政者に対する大規模デモを先導すると同時に、魔国が捕獲した特殊個体を一斉にばら撒く。加えて各地の重要施設を魔人の精鋭部隊が強襲するというものだった」

「・・・」

「列島領の奪取は向こうにとっては悲願だ。そのための計画だった。で、計画を誰がどう潰したか、という話だが」


チラっと団長を見て市長は続けた。


「当時の竜騎士団団長、カイの義父殿だな。当時の采配は見事だったと聞いている」

「義父は戦闘力という点ではそれほどでもないのだが、運がいいというか、とにかく感が冴える人でね。向こうの作戦を悉く阻止した。その一つが、私とケイの最初の出会いに繋がる」

「7年前というと、まさかあの時の?」


領都学校へ入学するため馬車で移動中だったケイたちが襲われた事件。覚醒のきっかけになった戦い。

それが当時の侵攻計画阻止行動の一つだった。


「当時、市庁舎ココも狙われた。待機していた私が対処したのだが、敵の逃げ足が早かったせいで君たちを巻き込んでしまった。本当に悪いことをした」

「いえ、そんな・・・」


何とも言えない。


「7年前に使われたのが、魔族を強制的に魔人化する薬だ。今回もその成分が賊から検出されている」

「・・・」

「この薬は魔国で作られたものだ。鹵獲したものを解析済。帝国でもほぼ同等の薬を作成することはできるが、今回検出されたのは過去使われたものと同じだったそうだ」


この世界の魔族は魔物とは違う。人種の違いのようなもので、外見的にも基本的には帝国人と同じ。先天的に魔力の取り扱いに優れた人物が多いため魔族と呼ばれている。


稀に角や羽の名残のようなものが現れる場合があり、そういった特徴を持つ人物は先祖帰り(魔人)と呼ばれ、優れた能力を発揮することが多い。

この世界は体力、知力に加えて魔力がその人物のカタログスペックになる。魔力に優れているというのは色々と有利である。


そういうわけで魔国は古からの超大国であり、魔道具関係の技術水準も高い。

一方で帝国は歴史があると言っても魔国と比べると新興国側。ただし近年の技術発展は目覚ましく、その技術の結晶が飛行船である。


諸島連合内では魔国寄りが主流派であり、在住する魔族も多い。

列島領では魔族であっても一律で諸島連合住人としての権利を行使できるので、政治活動の隠れ蓑になっているという指摘もあるが、未だ権利の見直しには至っていない。

(領都学校・社会情勢講義資料より抜粋)



薬も気になるが、まずは自分たちの状況について聞いてみた。


「今回は市庁舎ココは狙われていないのですか?魔導研究所が狙われたということですが」

「今のところはまだ報告はない。竜騎士団詰所や関連する場所はマヤによる防衛幻術があるとはいえ、過信は禁物だ」

「・・・現状は警備の警戒レベルを上げて対応、というところだな」


戦闘力では他の団員に一段劣るマヤであるが、彼女は竜騎士団の留守を預かるという重要な任務がある。

市庁舎は警備騎士団によって守られている。

加えて市庁舎の外れにある竜騎士団詰所は、マヤの幻術によって敵意を持つ人物を排除している。


とはいえ常時幻術を発動しているわけではない。

幻術はいざというときのみ使用し、今回は警備騎士団の巡回強化で対応する。


「そういうわけで、マヤとツララはこの件では戦力外だ。マヤは守りを固めるし、ツララに任せるには危険な任務だ。正直言うと、今のケイでも、魔人との遭遇戦は厳しい。特殊応援も何件かは経験してもらうが、メインはこれまで通り領内の特殊個体狩り。ただし、レベルの高い特殊個体への対応もやってもらう」

「わかりました。特殊応援というのは、列島領の特殊個体を討伐する任務ですよね?」

「そう。他領の竜騎士団を応援する任務のことだが、うちの場合は基本的に列島領が応援対象」

「了解です」


「特殊応援は危険な任務になるが、辺境伯領に生息しない魔物との闘いは参考になることも多い。観察力、判断力などの地力の底上げには有効な任務だと思う。注意点としては、特殊応援は下手に粘って相手に戦闘経験を積ませることは避けないといけない。会敵して無理だと判断したら、即撤退がセオリーだ」

「分かりました」

「列島領の近衛経由で情報も貰えるから、まずは一度誰かと一緒にやってみよう。領をまたぐ手続きも覚えないといけない」


島関係の話のあとは秘書さんの作ったお菓子を食べつつ、雑談になった。

本日のメニューはチョコチップクッキー。


「ケイ、結婚の予定は?」

「まだその予定はないです」

「その気はあるのか?カイみたいにふらふらしてると愛想をつかされるぞ」

「まだ大丈夫、のはずです」


団長は苦笑している。

ケイはプライベートの課題と同時に、帝都の戦闘訓練で見たスキー場のことを思い出した。


今年はあそこで同窓会を開くのもいいかもしれない。

前広に連絡しておけば、冬の休みには全員集合できるだろう。


不安と希望が混じりつつ、2年目の後半は始まった。


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