24 竜騎士団2年目 帝都出張5
洞窟は入口付近こそ天然洞窟のような趣だったが、少し中に入ると石畳で整備された通路へと変わった。
所々に照明として光る石が設置され、視界はよくないものの、見えないほどではない。
(ダンジョンなんて聞いたことがない。どこかの遺跡?それとも何かの巣か?)
この世界には魔法もあるし、魔物や魔族も存在する。
だが、いわゆるゲームのようなダンジョンは存在しない。無限に魔物が湧いてくる洞窟など、一般常識にはない。
遺跡は少ないながら存在する。放棄された古代王朝の宮殿が、魔物の住処になっていた、という事例がある。そういった遺跡には侵入者撃退用の罠が残っていることもあるが、基本的には機能不全で動作しないか、既に動作済の場合が多い。
また、魔物のなかには巣をつくるものがいる。種族として作るものもあれば、特殊個体が突然作り出すものもある。だが、これは例外中の例外。
竜騎士団の業務では、屋内戦闘はレアケースだ。
そこで自分が一般常識を基に考察を続けていることに気づいたケイは、以降の考察を一度放棄した。
どうせこれは幻術。夢のようなものだ。夢は理不尽なもの。
何が起こるか分からないのであれば、起こったときに考えよう。真面目に考えるのは、ルールが分かったときでいい。
もともと罠検知の魔術が得意ではないケイは無造作に通路を進んでいく。
そのうち通路の先に光が見え始め、そのまま歩き続けたケイは大広間へと出た。
直径50メートル近いドーム状の空間、中心部には意味ありげに石の台座が置かれている。
大広間につながる通路は3本、それとは別に扉が3枚あった。
通路の上にはパネルが表示されており、それぞれ赤、青、黄で塗られている。
ケイは黄色の通路を通ってきたことになる。
扉の色も赤、青、黄の3つ。対応しているのだろうか。
台座まで近づいたケイは、そこに何かをはめると思われるくぼみを3つ見つけた。
「完全にゲームだ、これ」
ケイは、扉の先に進んで何かを見つけて戻ってくる必要がある、と思った。
周りには誰もいない。通路が3本ということは、3人が合流すると推測し、ここで待つことにした。
ドームの壁や扉を調べていると、青い通路から男がやってきた。
「おや、あなたは、ケイさんですか」
「ええ。コウキさんもいたのですか」
やってきたのはコウキだった。昨日挨拶をした近衛騎士団員である。
最初は互いに警戒したものの、昨日挨拶していたこともあり、現状を確認し合う。
ケイは最初雪原にいたこと、目の前の洞窟に入って通路を歩いていたらここに来たことを説明した。
コウキも状況は似たようなものだった。
「私は気づいたら、無人の竹林にいて・・・意味ありげな洞窟があったので歩いてきたらここに来ました」
「竹林?」
「ええ。ラクチの竹林に見えました」
ラクチは帝都からほど近い、有名な観光地だ。コウキの出身地らしい。
ケイとコウキが話している間に、赤い通路からも人影が見えた。アイナだ。
アイナもケイとコウキに合流し、状況を確認する。
「私は、海辺の砂浜でした。近くの岩場に大きな洞窟があって、そこに入って歩いてきたらここに・・・」
「アイナさん、その砂浜に見覚えは?」
「あれは、ワフの海水浴場だったと思います。実際の海水浴場には洞窟などはありませんが・・・」
「どうやら、自分の出身地を再現した場所から、この場所に集められたみたいですね」
「そうですね」
ケイは、通路が3本であることから、この3人でチームを組め、ということだと判断した。
3人は自分の技能を紹介することにした。
まずはケイから。
「自分の戦闘スタイルは近距離メインで比重は魔術、体術半々。今は防御力の強化に重点を置いているので、前衛向きだと思っています」
次にコウキ
「私の戦闘スタイルは遠距離メインで比重的には魔術7体術3くらいです。式神たちを使います。中衛ですね」
最後はアイナ
「戦闘スタイルは遠距離、比重的には魔術9体術1です。カートリッジロッドを使う、後衛です・・・お二人は回復系の能力は何かありますか?私は苦手なので」
「一般的な回復魔術でよければ使えます。回復専用式神を使うには少し準備が必要です」
「私も、自分の応急処置くらいであれば大丈夫です」
オーソドックスなケイに対して、コウキとアイナは多少クセのあるスタイルだった。
だが、役割がかぶるわけではないので、チームとしてそれなりに上手くいきそうではある。
「ぶっつけ本番にはなりますが、頑張りましょう」
「あの・・・」
アイナが手を上げて発言する
「同期だし、敬語はなしにしません?」
「・・・そう、だね」
「・・・わかった。これからは敬語なしで、よろしく」
「ええ。よろしく」
そして、リーダーを決める。ケイが提案した。
「リーダーはコウキでどうだろう?中衛だし、近衛だし」
「戦闘以外であればそれでいいが・・・実は近衛は戦闘経験が乏しい。戦闘中の指示は討伐任務経験が豊富なケイかアイナの方がいいと思う」
「私は団長と討伐任務をこなしたことはあるけど、単独討伐はまだ・・・役職なら、団長補佐のケイが一番上では?」
アイナには、ケイが竜騎士団団長補佐という肩書を持っていることは教えていた。二人の視線を受け、ケイは言った。
「わかった。戦闘指示はまずは俺が出すよ」
これからの方針を決めようと、コウキが口を開く。
「どこにも今回の課題やルールのようなものは書いていない。分かるのは、通路の色と共通の扉がそれぞれ1枚。これの意味するところは何だと思う?」
「中央台座のくぼみの数からも、各扉の向こうにキーアイテムがあるのは間違いないだろうな」
「3人が別々にとりに行くのかな?」
コウキが判断する
「いや、それであれば3人の意味がない。わざわざ3人集めたということは、全員で順番に捕りに行く、と考えるのが自然だ。・・・・3人が個人で集めた後で、この場でボスと対決、という可能性もあるが・・・その時に急造のチームで戦うよりは、ある程度慣れておいた方がいいと思う」
「そうだな。コウキの言うとおりだ」
「ですね」
「で、最初にどの扉にするか、ということだが」
3人は扉の前に移動する。赤の扉は空かなかった。次の黄の扉も反応はなく、青色の扉の前まで来たとき、扉は自然と開いた。
「ここらしいな」
「青、か。コウキの歩いてきた通路も青だな」
「・・・たぶん、何か関係あるんだろうな」
「コウキ関連の強敵かもしれない。注意しよう」
「ああ」
ケイは二人の保有する戦闘技術について簡単にレクチャーを受け、チームとしての戦闘方針を考えた。
ここまでに経過した時間は、地下室で意識が暗転してからおよそ1時間。
ようやく、3人の準備は整った。
ケイを先頭に、3人は青い扉の向こうへと、足を踏み出した。




