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15 竜騎士団2年目 4つの課題

団長と共に竜騎士団詰所に戻ったケイは、そこで自分がツララの指導団員になることを、団長から周知された。

といっても、それを聞いたのは、詰所にいたマヤとツララだけであったが。


ケイは、指導団員なんて制度があったのか、と思った。

では、去年1年の自分の指導団員はだれだったのか?マヤ?団長?後で聞かなければ。


一方マヤは、同性の後輩なので自分が指導団員になりたかったようだった。

だが、ツララがこの一年の仮所属であること、年が近く、来年の領都学校入学に向けて最近の学校についての知識をツララに教えることなどを理由にケイが適任だと、団長に押し切られ、最後には納得した。


定時後、いつもの竜騎士団行きつけの定食屋に団長、ユリ、マヤ、ケイ、ツララの5人で繰り出した。こういう会に滅多に参加しないユリが参加の意思を見せたことで、団長は微妙な顔をしていた。


ツララはそこでも良い食べっぷりをみせ、店主のおばあちゃんに早速気に入られた。お土産に袋一杯のお菓子をもらい、ツララの入団歓迎会は終わった。


会の終了後、団長はユリに引きずられて帰っていった。ご愁傷様である。

方向が同じマヤはその二人と共に帰るということで店の前で別れ、ケイは途中までツララと共に歩くことになった。


「どう?竜騎士団でやっていけそう?」

「・・・大丈夫だと思います。みなさんいい人です」


「疑問点があったら、何でも聞いてね。指導員だから」

「はい。よろしくお願いします」

「もちろん、俺だけじゃなくて、マヤさんや団長でも質問すれば大体教えてくれるから。その他の人たちはちょっとクセが強いけどね」

「はい」


こうしてみると、本当に幼い外見だな、と思っていると、ツララが口を開いた。


「あの、ケイさんは私のこと、どれくらい聞いていますか?」

「どれくらい・・・暗部だったこと?」

「いえ、それもそうなのですが・・・」


言い淀むツララに対して、二人の会話内容が外部に漏れないように幻術を展開、細工をしたうえで正直に答えることにした。

マヤほどではないが、ケイにも簡単な幻術は使える。


「この一年で転生者として覚醒したことなら聞いてるよ」

「・・・そうですか」


ツララはその回答を予測していたようだった。

詰所に戻ってからは転生者に関する話題は何もしていない。マヤやユリは、ツララが竜騎士団に入団したことから、転生者であると予測している。

だが二人は、ツララが、帝国が転生者をどう扱っているか知っているとは思っていない。その知識は竜騎士団2年目になって初めて得られるものだからだ。


ツララは、歓迎会で明るく接してくるマヤやユリに、どう対応すべきか迷ったのだろう、と考え、ケイはフォローすることにした。


「みんな、ツララさんに竜騎士団を早く好きになって欲しいんだと思う」

「好きになる?」


「ああ、竜騎士団は色々と色眼鏡で見られることもあるからね。誹謗中傷を受けることもある。そういう時に、仲間のいいところを知っていたり、自分が竜騎士団(ここ)にいる理由を持っていれば、外には勝手に言わせておけばいい、っていう風に、ダメージは最小限で抑えられるからね」


まあ、その外の声がごもっともで、真摯に聞き入れた方がいいこともあるけどね、とケイは思ったが、そこまでは言わなかった。


「いいところ、自分がいる理由・・・ですか?」

「うん・・・」


といってケイは言葉に詰まってしまった。

そもそも竜騎士団としてのいいことってあるのか?適当なことを言っても不誠実だと思ったケイは、自分の気持ちを素直に答えることにした。


「俺は竜騎士団がどうこう、というよりは団長みたいになりたいって目標があって、結果として竜騎士団(ここ)に入った。・・・あまり参考にはならないかな。ごめんね」

「いえ、とんでもないです」


そのまま会話は途切れ、少し歩くとケイの行先とツララの行先が分かれる場所に来た。


「では、ここで。これからよろしく。ツララさん」

「あ、はい。お疲れさまでした・・・あの、ケイさん」

「?何かあった?」

「あの、私のことはツララで。呼び捨で構いませんので」

「・・・わかった。じゃ、ツララ。また明日」

「はい。おやすみなさい」


ケイとツララは交差点で別れた。



ツララと別れたケイがこれから向かうのはカオリの家である。

目的はお弁当の容器を返しに行くことだ。

だが、それだけでは済まない予感がしていた。


カオリとはあの日以来、何度か会っているが、場所はいずれも外だった。

カオリおすすめのお店でご飯を食べたり、ショッピングをしたりのデートはしているが、それ以上のことはなかった。


これには理由がある。カオリの出身地は別の町であるが、卒業後、領都で就職した。当然一人暮らしをしていたのだが、今年から親戚の少女・サオリが領都の学校に通うことになり、入寮までの直前半月の間、カオリの部屋で過ごしていた。


自然と、サオリが二人のお出かけに同行したり、家を訪ねたときに家にいたりで、ケイとカオリが二人っきりで込み入った話ができる状況ではなかった。


サオリは今の都会的なカオリとは雰囲気の違う、素朴な感じの少女だった。が、カオリの親戚だけあって各パーツは似ており、カオリも最初会ったときは、サオリみたいなイモっぽい娘だったことを思い出した。

サオリは先日学校の寮へと引っ越し、ケイはカオリの彼氏としてその引っ越しを手伝った。


今日はカオリとマヤさんの関係を聞かなければ、と考えつつ道を歩き、ケイはカオリの家に到着、扉をノックした。


「はーい」

「俺だけど」


カオリの声が聞こえ、鍵を外す音が聞こえた。

扉が少し開くと、顔だけを出したカオリがケイを見て言った。


「入って、準備できてるから」

「?・・・ああ」


素早く部屋に入る。そしてカオリの姿に驚いた。あの時の扇情的な服の上にストールを羽織ったのみだった。


「ちょっと・・・頑張ってみた♡どう?」


下半身に来る見た目だが、ここで主導権を奪われるわけにはいかない。


「ああ、イ(・)イ(・)な。(それよりも、聞きたいことがある)」


思わず、聞きたかったことが引っ込み、本能に正直になってしまう。


「って違う。そうじゃない」

「そうだよね。まずはご飯?」

「あ、夕食は食べてきたんだ・・・ってそれも違う」


ケイは真面目になって、とりあえず玄関から奥の部屋へ向かう。カオリは外見や身に着けるものにも気を使っており、なんだが部屋もいい匂いがする。


ソファーに座ると、隣にカオリが座った。

くっついて来ようとするので、肩をつかんで距離を保つ。


「今日は真面目な話をしたい。カオリとマヤさんの関係についてだ」

「マヤさん?」

「そう、どうしてカオリは竜騎士団の皆と知り合いだったんだ?」

「あ、それ?うーん、どうしよっかなー?」


カオリは意地悪そうに笑う。


「頼む。はっきりさせたいんだ」


あくまでも真面目な雰囲気を崩そうとしないケイに対して、カオリは言った。


「じゃあ、条件出すね。私はあのお店でケイに‘あること’をしていました。それには理由があります。その‘あること’、とその理由が分かったら教えてあげる」

「え?俺に何かしてたの?」

「内緒。ノーヒントです。自分で考えて」

「・・・」


こんなに真剣に頼んでいるのに、カオリは教えてくれないのか?とケイは少しイラっとした。

そして、カオリの姿を見て、この家には、今二人きりだということを認識した。

今日はあとでマヤさんに遭遇することはない。

気が大きくなり、心持ち乱暴な口調になる。


「何?教えてくれないの?」

「・・・♡」


急にケイが強気になったことを察し、カオリの瞳の奥に淫靡な炎が宿ったような気がした。

カオリの手がケイの体に伸びてくる。


その手首を逆につかみ返し、ソファーに押し倒す。

相変わらず、ケイの理性は脆かった。



翌朝、ケイはカオリからお弁当をもらって家を出た。

あの後、色々な手口で白状させようとしたものの、最後までカオリは口を割らなかった。


逆に、翌朝正気に戻ったケイが謝った際、マヤに聞いてはいけないという約束をさせられてしまった。



・竜騎士団2年目としての自分の成長

・ツララの指導

・竜騎士団の組織改革

・カオリの行動の理由解明


ケイは竜騎士団2年目の初週、4つの課題を課されることになった。


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