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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


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健康診断をします。前編

 数日後、ようやくアルベルトは意識を取り戻した。

 経過も順調とのことで、病室に集められた俺たちにアルベルトは頭を下げる。


「心配をかけてすまなかった」


 薬が効いたようで、すっかり顔色も良くなっている。

 若干やつれはしたものの、これならそのうち全快するだろう。


「皆のおかげで何とか回復したよ。順に礼を言わせてくれ。……まずはロイド、お前が僕を運んでくれなければあのまま手遅れになっていたかもしれない。ありがとう」

「気にしないで下さい。当たり前のことをしたまでです」


 深々と頭を下げるアルベルトに手を振って返す。

 普段から世話になっているし、もし万が一があればその恩恵に預かれなくなるからな。


「そしてシュナイゼル兄上、わざわざ戦場から戻ってきてまで僕の代わりを務めてくれたようで、本当にご迷惑をおかけしました」

「このくらい、兄として当然だ」


 第一王子シュナイゼル=ディ=サルーム。

 恵まれた体躯と優れた頭脳を持つ、サルームの守護神だ。

 俺たちが好きなことを学べるよう第一王女クルーゼと共に将軍として戦場を走り回り、周辺国に睨みを利かせてくれている。

 今回アルベルトが倒れたことで急遽帰還、守りをクルーゼに任せて内政やらなにやらを代わりにこなしてくれたのである。

 おかげでアルベルトが倒れたにも拘わらず大きな混乱は起こらずに済んだのだ。


「アルベルト。お前はしっかり者だが少々一人で頑張りすぎる節がある。王を目指すなら少しは周りに頼れ」

「シュナイゼル兄上に追いつこうと必死の日々ですよ。……でもそれで身体を壊したら元も子もありませんよね。情けない限りです」


 頭を下げるアルベルト、シュナイゼルは肯定とも取れる仕草で目を閉じる。

 無口で厳しい人だが、アルベルトはそんなシュナイゼルを目標としているようだ。逆にシュナイゼルはアルベルトのそういうところを高く評価しているように見える。

 この二人が王位継承権の最有力候補だ。なのに互いを尊重し合っている……本当にいい関係なんだよな。


「最後にリオン、僕が回復したのはお前が作ってくれた薬のおかげだ。お前は僕の誇りだよ」

「あ、あああ、ありがとうございますアルベルト兄上っ! き、ききき、恐縮です!」


 アルベルトに褒められカチコチに固まるリオン。

 慌ててまともに喋れていないぞ。


「勿論他の皆もだ。色々迷惑をかけて申し訳なかった」

「よせやいアル兄、水くせぇぜ」

「このくらいお安い御用である」


 第四王子ディアン、第三王子ゼロフの言葉に他の皆もうんうん頷く。

 彼らは皆、アルベルトがいない間その代わりとして働いていた者たちだ。

 アルベルトは皆にもう一度頭を下げた後、大きく伸びをした。


「――さて、ようやく身体が動かせるようになったことだし、仕事に戻るとしようかな」

「いけませんアルベルト兄上、まだ無理をしては! 病み上がりなのですから、しばらくはご自愛して下さい」

「し、しかしそれでは皆に迷惑が……」

「というか皆もです!」


 声を張るリオン。病室に集まった兄姉たちをぐるりと見渡す。


「アルベルト兄上は言わずもがな。父上は御年を召しておりますし、ゼロフ兄上は運動不足で太り過ぎですし、ディアン兄上は鍛冶仕事のしすぎで目や皮膚を悪くしている恐れがありますし、サリア姉上は表情筋が全く動いておらず怖いですし、アリーゼ姉上はいつも動物に囲まれ過ぎて何らかの感染症の危険があります。シュナイゼル兄上はそもそもあまりに傷だらけで見てられません! 家臣たちもあまり顔色がいいとは思えない。このままでは僕も心配でアセンブラに帰れませんよっ!」

「……」


 どうやら多少図星の部分もあるようで、その場の全員が目を逸らし無言になる。

 まぁ皆、普段から無茶しているからなぁ。

 アルベルトが倒れた直後ということもあり、皆も他人事ではなさそうだ。


「――おほん、そこでですね。明日は緊急健康診断を行います」

「健康診断?」

「えぇ、実はアセンブラでも年に一度行われておりまして、これを始めてからというもの、国民の健康寿命がなんと十年も伸びたのですよ。国で働く者として、健康管理は大事ですからね。……もちろんロイドもだぞ。お前は暗い場所で同じ姿勢のまま本ばかり読んでいるからな。ちゃんと健康を意識しているのか? んん?」

「えぇと、まぁ多少は……」

「なんにせよ問答無用だ! ……ということですので、明日朝八時、全員すぐに脱げる格好で大広間に来ること。わかりましたね」


 リオンの迫力に、全員はただ頷くのみであった。


「……それにしてもリオン様、とても張り切っておられましたね」


 銀髪のメイド、シルファが呟く。

 と言っても今は検査用の白い服に着替えているのでメイド感はゼロだが。

 彼女もまた健康診断を受けるのだが……帯剣はやめた方がいいと思うぞ。


「うん、ボクたちも一応検査してくれるんだって。あ、わざわざ女の先生を呼んだみたいだよ」


 同じくレンもだ。皆で大広間に向かう途中なのである。


「オン!」


 ちなみにシロも見て貰うことになっている。

 動物の診断も行うとは流石医療大国。進んでるなぁ。


「ね、ロイド」


 そのすぐ後ろを歩くメガネ少女、コニーが俺の耳元で囁く。

 彼女は色々あって魔王をその身に宿しており、色々あって俺のメイドとして働いているのだ。


「健康診断はいいけど……バレないかな。魔王ベアルのこと」

「大丈夫だろ。多分」


 仮にバレたとしても適当に誤魔化せばいい話だ。

 というかよく考えたら俺自身にも魔人グリモ天使ジリエルが入ってるしな。

 そんな話をしていると向こうの廊下からディアンとゼロフが連れ添って歩いてくる。


「おいおい、参るよなぁゼロ兄。健康診断だってよ。でもさ、こういうのちょっとワクワクしねぇ?」

「……我輩は不安で仕方ないぞ。ここ最近はずっと引きこもっていたからな」

「だはは! まぁこれもいい機会だぜ。たまには俺と一緒に運動しようじゃねぇかよ!」

「ぐぬぬ……人は何故身体を動かさねばならぬのだろうか……」


 ……なんだか二人共、楽しそうだな。

 あの二人、案外良くつるんでいるよな。性格は正反対だが気は合っているようだ。

 今度は反対側の廊下から、サリアとアリーゼが来る。


「ふふふー身体測定なんて久しぶりですね~。小さい頃、一緒にやりましたねサリア姉さん。昔の私は小さかったけど、今は少しは成長してるかなぁー?」

「アリーゼは色々育ち過ぎ。……私なんか全然変わってないってのに」


 ブツブツ言いながらため息を吐くサリア。

 何の話をしているのだろう。よくわからないが大したことではないだろうな。


「うおおおおおっ! 麗しき女性たちの何とも艶かしい会話であることか……! 私は、私はここにきて本当に良かった……っ!」


 ……なんかジリエルが興奮してるが、黙らせた方がいいのだろうか。


「一生黙らせときやしょうかい? ロイド様」

「程々にな」


 俺がそう呟いた時である。


「ロイド」


 背後からの声に飛び上がる。シュナイゼルだ。いつの間に後ろに……びっくりするじゃないか。


「シュナイゼル兄さんも今からですか。やはり何か懸念はあるのですか?」

「……この身体も長年酷使してきた。何があってもおかしくはない。……それに、万が一倒れたら他の者たちに示しがつかんからな」


 シュナイゼルはほぼ戦場に出ずっぱりだからなぁ。

 サルームの守護神には特に元気でいて貰わないと困る。


「それにしてもリオン兄さんはすごいですね。若干十一歳で医者も顔負けの知識を得ているとは。弟として誇らしいです」

「ふっ、お前がそれを言うのか?」


 苦笑するシュナイゼル。

 レンやグリモたちがすごく白い目を向けてくるが多分気のせいだろう。


「無論、俺とてリオンは大した奴だと思っている。だがそれは奴の才ではなく、偏にその努力量にだ」

「努力、ですか?」


 サルーム王族はその血筋ゆえか、皆様々な才能を発揮している。

 リオンもまたそうだと思っていたが、違うのだろうか。


「まだ小さかったから憶えてないかもしれんが、リオンはよくお前と遊びたがっていた。すぐ下の弟だから可愛がりたかったのだろう。しかしどうもお前は子供の遊びが好きではないようでな、本ばかり読んで碌に相手をしなかった」


 ……ま、暇さえあれば本を読んでいたのは今に始まった話じゃないからな。

 仕方ないだろう。転生した当時の俺にとってこの城はまさに宝の山、子供の相手をするほど暇ではなかったのだ。


「難しい本ばかり読意でいたお前に対抗心を燃やしたのか、リオンは俺に最も難しく、人の役に立つ学問を教えて欲しいと聞いて来たのだ。何の気なしに医学ではないかと答えたが、その翌日には父上に留学の願いを出していたらしい」

「そうだったのですか……リオン兄さんがそんなことを……」


 興味があるならともかく、そうでもないことに力を注ぐのは難しい。俺にはそれがよくわかる。

 にも拘らず俺への対抗心だけでやたら知識が必要な医学に挑戦するなんて……やはりリオンはすごいな。


「……少し口が滑った。どうもお前の前では口が軽くなっていかん。……このことはくれぐれも内密にな」

「わかりました、誰にも言いません」


 俺の言葉にシュナイゼルは軽く咳き込んだ後、足早に去っていった。

 シルファはその様子を目を丸くして見送りながら、ポツリと呟く。


「……驚きました。あの方があんなに喋っている所を見るのは初めてです」

「シュナイゼル兄さんは戦いにおいては口数少ないけど、兄弟のことに関してはそうでもないよ」


 以前、共に戦場を駆けた時などは俺や他の兄弟のことをよく気に掛けてくれていたしな。

 リオンのことも同じなのだろう。無口で外見も怖いので誤解されやすいが、あの人は意外と弟思いなのである。


「でも言われてみればリオン様、ロイドのことをかなり意識していた気がするよ」

「ロイド様は素晴らしいお方ですから。リオン様が意識するのも当然のことです」


 うんうんと頷くシルファ。普通に一個下だからなだけだと思うけどなぁ。


「つか、ロイドと比べたらどんな人間でも役不足でしょうぜ。あの第一王子だって目じゃねぇよ」

「然り、年齢も近いところがリオン兄君の不幸ですね。弟がこれではさぞ無力感を感じたでしょう」


 グリモとジリエルも憐れむように頷いている。

 相変わらず俺を何だと思ってるんだ。


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