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198 神秘


 西洋神秘主義。


 あるいは神秘思想。オカルトをかじったことがある人ならば一度は見かけるであろうその言葉。


 私はそれについて深く勉強はしなかった。というか、正直できなかった。


 数々の本にはその考え方の存在が示されるものの、非常に壮大だったり、または難解な言い回しで解説されることが多いそれ。

なによりその思想により起こった行動や儀式のあまりの多さ。勉強はしたつもりだが、到底全容を理解しきったなどとは自惚れられない分野だった。


 とにかく、過労死するような社畜が本腰を入れて勉強するにはいささか荷が重いような、歴史のある分野だったのである。


 しかしそれでも、かじった知識や雑学はいくつかある。例えば西洋中世の実際の話だ。


 「金持ちは高所の植物を食べ、貧民は地に植わった植物を食べる」


 「金持ちは空を飛ぶ獣を食べ、貧民は地を這う獣を食べる」


 こんな風習の地方が実際にあったらしい。これはただのかっこつけや意味のない区別だけが原因ではない。


 何故そうしたかと言えば、その時代の神秘主義者に「高所・空は神に近い場所。だからそこに住む生き物を食べれば神との合一に近づく」という考え方があったからなのである。

 逆に地面に近いものは卑しいもの、神から最も遠く離れたものであるから、それを食せば魂が卑しくなってしまうという訳だ。

この場合の肝は、質のいい肉か悪い肉か、美味しいか不味いかで区別している訳じゃないという点だ。大切なのはその材料の魂が神から近いか遠いかなのである。

 

 オカルトの世界ではこういった「神に近づく・合一する」という儀式がよく見られる。


 現代から見たらばかばかしいことばかりだと思う。しかし死と隣り合わせの生活を送る当時の人は、あらゆることを自分の命と結び付けて考えていた。それゆえ発生した風習なのだろう。

 

 さて、そんな神秘主義をかじった人間のにわか知識は置いておいてだ。先生がこうも自信満々に「獣人にしかできない、あるいは獣人だからできる」と宣言する考え方は、恐らく神秘主義寄りの考え方をしているからじゃなかろうか。


 つまり。

 

「獣人も魔獣も、人間より高位の存在であると考えているのですね?」

「獣人も魔獣も、人間より高位の存在である可能性があるからです」

 


 ……先生とハモる。すると、先生が信じられないものを見る目で私を見た。


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