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196 使役


 魔獣の飼育といえば、私も少し前に願い、そして断念したことだった。

 

 以前、クラルスの街で大型サーベルタイガー「カロ」と出会った後のことだ。

 エインズシュットへ向かう越境馬車の中で「飼ってみたい」とお父様に人生初のおねだりをしてみたものの、やんわり却下されたのだ。

 魔獣は、動物と違って決して人に懐かないからである。

 それでも美しさに魅せられ、檻に入れて飼う人はいるが……、その場合は一生檻から出すことは無く、心の触れ合いもない、酷く一方通行な関係に限定される。

 お父様は、私が望むのがそういう飼い方ではないことを見越し、駄目だと言ったようだった。

 

 ……ちなみに、お父様が娘の「初ワガママ」を叶えられない悔しさに無表情で唇を噛みちぎりそうになっていたので、お母様と慌てて慰めたり甘え直したりした記憶がある。物凄い無念そうな顔してたな。

 

 ともかく、思いがけない発言にきょとんとしていると、ガルシア先生は顎に手を当てて嬉しそうに語り始めた。

 

「ええ。 魔獣の飼育……というより、〝心を通わせて使役する〟ことは現状不可能とされていますが、可能性は無い訳でもないと思うのです」

「……えっ! 本当ですか!?」

 

 うそ、どんな方法が!?

 まさかの希望の光にガルシア先生を見つめると、先生も私の熱意に勘づいたようだった。メガネがキラリと光る。

 

「もしや……アリスさんは魔獣好きなのかな」

「はいっ! 以前カロを見かけてから、魔獣の中には素敵な種族もいるんだなって思って」

「おお、それは素晴らしいですね! カロは確かに美しく気高い獣だ、アリスさんは幼いのにお目が高い」

 

 うんうんと深く頷かれる。知的さは失わないものの、興奮の熱量がすごい。あれだ、英国のトレジャーハンター博士って感じがする。

 

 ガルシア先生も魔獣がお好きなのですかと問いかけると、いよいよ先生の瞳の光度がマックスになった。

 

「それはもう! 好きすぎて領地の城を魔獣の檻だらけにしてしまい、息子から“もう早く隠居して趣味の屋敷でも作れ!”と追い出された程でね。せっかくだから魔獣の流通が多い皇都付近で仕事をして、いずれ研究所でも開こうかと思っていたんですよ」

「おお、研究所……! 素敵ですね!」

 

 これは本物の魔獣好きである。

 オタク気質なところと瞳の輝き方が、なんとなくスーライトお姉様や魔術学のフェリエン先生に似ているな。

 

「先程、使役する方法がないこともないと仰っていましたが、一体どんな方法なのですか?」

 

 話に興味が出てきたのか、ヴィル兄様がずいっと出てきてガルシア先生に話しかけた。……でもなんか、警戒してる? どうしたヴィル兄様。

 ちなみにデュカー兄弟とダブルリーダーも話に興味があるのか、片付けの手を止めて近寄ってきた。

 

 そんな聴衆を前に、ガルシア先生は夢見るように拳を握って言い放った。

 

「確立された方法はまだないのですが、獣人、そして魔術と精霊にヒントがあるのではないかと睨んでいるのですよ」

修正点です。

ガルシア先生のファミリーネームを「カルロ」と書き間違えていたのですが、正しくは「カルロウ」なので修正、

それと新章の出だしで「朝礼で話がある」と書いたのに描写しなかったので、「朝礼では次の進級試験と来年度分の五大教科免除試験は同時に行われる」というシーンを入れました。うっかり…。

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