143 エイルダート辺境城
本日一回目の更新です。
そんなこんなで新たなる可能性に気づいて青くなったりしつつも、無事に馬車はエインズシュット辺境領に入った。
領都は領地の真ん中付近にあるらしいが、年越しで「良いもの」を見られるのが国境付近のエイルダートという町の城塞ということで、私達はそちらに招待されている。
「アリス様!」
城塞に着くやいなや、デレを全開にしたローリエ様がたたっと駆け寄ってきてむぎゅうと抱き着いてきた。あまりの愛らしさにクラッとしつつ抱きしめ返す。
到着の先触れを飛ばしていたので、それを聞いてから護衛とともに城の前でずっと待っていたらしい。
再会を祝すが、ローリエ様の体は冷えていた。
それを心配したりむぎゅむぎゅし直したりとわちゃわちゃしているうちに、城から大柄な人影が姿を現した。
マントを羽織った厳つい人物と、護衛らしき甲冑が数人だ。馬車から降りた大人組と形式的な挨拶を交わし合う。
「皆様。遠路遥々、このような辺境までお越しいただきありがとうございます」
そう言って髭面を喜色に緩めたのは、ローリエ様の父親・ユークリッド辺境伯だ。思った以上に大柄で厳つい。
それに一行を代表してオイディプスおじ様が応える。
「いえ。こちらこそ一族でお招きいただき、感謝します。きっかけはアリスとローリエ嬢の友情とは言え、これも良き縁。是非とも年越しの間、多くを語らえたらと思います」
きりっとキメて片手を差し出したおじ様とユークリッド辺境伯が握手をすると、頃合を見た辺境伯の執事が「寒いですからひとまず中へ」と城塞内へ案内してくれた。
エインズシュットは皇都よりも東側、やや北に位置するために確かに寒いので、気遣いがありがたい。
エイルダート辺境城と呼ばれているここは、まさに中世の防衛用城塞といった雰囲気だ。
装飾よりも質実剛健、実用性を重視した感じで、パッと見は街の一角にそびえる巨大な壁のようである。
大きな居間に通され、暖炉のそばで体を温めつつ、今度はそれぞれで細々とした挨拶が繰り返される。
ちらっとオルリス兄様は大丈夫かなーと見てみると、カチコチになりつつもヴィル兄様のサポート付きでなんとか挨拶をしていた。
……ふーむ。
しっかし、ローリエ様からうっすら話は聞いていたが……。
私はちらりと視線を走らせる。
「ねぇねぇお父様ぁ、もーメリル飽きちゃった。向こう行っててもいーい?」
「もうちょっとだけ挨拶できるかな、メリル? 」
「え~! やだやだ、もぉ足疲れたもん! 」
「仕方ないな……じゃあ、向こうでメイドに遊んでもらいなさい」
「はぁい、お父様♡」
ローリエ様の妹、メリルちゃん……というよりも、それをメロメロに甘やかすエインズシュット辺境伯には、随分と大きな問題がありそうだった。
ついに登場、ローリエ様の家族。
書籍一巻でやむなく描写を削った要素が、このあたりで描写されていきます。
しかし、大体この話と次の話でその部分が入ると思いますので、書籍からいらした方のウェブ版の読み直しは不要です。
でも、ローリエ様が健気なので……気になる方は、「47 エインズシュット家にて」を是非。(笑)




