137 来襲する影
なぜかオニキスお兄様へのお兄様呼びを却下され、ほんのり寂しくなりつつも、和やか(?)に朝食は終わり。
部屋に戻ってまったりと身なりを整えていると、廊下が騒がしくなった。
なんだろうとぼんやり思っていると、突如としてドバン!!と音を立てて扉が開かれた。
振り返る間もなく長身の男の影が私を襲う。
「ふぎゃ!?」
「お、お嬢様ぁ!」
何者かに猛烈な勢いで後ろから抱きしめられ、持ち上げられてうりうりされる。同時にコニーの焦った声が響いた。
……ん!?
こ、このほのかな香水のいい匂いは……!!
「アリスぅうううう!! 怪我はなかったかいアリスぅぅ……!!」
「お、お父様!?」
なんと、来襲したのは我らがお父様だった。
◇
「……という訳で、朝一で馬を飛ばして迎えにきたんだよ」
「朝一って、まさか朝食も」
「うん? うん。日の出とともにすぐに出たから、食べていないね」
「ちょ、食べましょう!?」
突っ込みつつ、抱っこされながらお父様と共に階下へ降りる。
どうやら昨日の魔獣遭遇の知らせが心配で、いてもたってもいられずに明るくなってすぐ馬を走らせてきたらしい。
階段を降り切ると、他の皆は既に出発の準備を終えて揃っていた。
「あれ、ジークムント様!?」
「うん。おはよう、皆」
揃って驚きの声を上げるハイメ兄妹。バージル兄弟は先程の物音と声から察していたのか、微笑みと言うよりなんとなく半笑いである。
お父様は先程までのふにゃふにゃな心配顔とデレ顔を一秒で仕舞い、しれっとクールビューティな微笑みをたたえて挨拶を返した。
お父様の顔を見ると、よそ行き美麗スマイルを20パーセントほど発動させていた。親戚メンツだとそんな感じらしい。
全員出発できる状態なのを確認したお父様はひとつ頷くと、何故か私を馬車に乗せずによっこらしょと抱え直した。
「……お父様? 馬車に乗りましょう?」
「アリスはクラルス初めてだし、私も軽食食べたいし、せっかくだから露店のある大通りを歩いていかないかい?」
「……さては安心したらお腹が空いてきたのですね、お父様?」
にっこりと上品に頷くお父様に内心でずっこけつつ、一般の人達の生活は覗いてみたかったので同意する。
他の皆にどうするか聞くと、せっかくだから馬車は街の外れまで先に行かせておき、全員で露店を見ながら歩こうということになった。
ちなみに、終始抱っこ移動は恥ずかしすぎるので断固としてじたじた抵抗し、手繋ぎに変更してもらった。
……お父様のよそ行きスマイルが10パーセントほどに低下したが、これは譲れぬ……!
久しぶりにお父様登場です。薄水色の髪のクールビューティー(?)侯爵。
幼女と大人の体格差が好きでつい書いてしまう……。




