129 解釈
「っ!!」
ごう、と音を感じるほどの早さと濃密さで、体から魔力が引き出されていく。
それは荒れ狂い、風のようになって何枚もの紙をばさばさと舞い上がらせ、私を取り囲むように渦巻いていた。
でも、直感で分かった。これは魔力暴走じゃない。
勝手に魔力が失われていくのを感じるし現象は似ているけども、それはひとしきり荒れ狂ったあとで目の前の発光する存在に吸収されているのだ。
「アリス!?」
異変を察知したバージル兄弟とコニーが荒々しくドアを開ける。
「待って、兄様こっちに来ないで!! コニー、ドアを閉めて!」
「へ!? は、はい!」
舞い上がる紙や異様な光量で照らし出された室内、その中心にいる私を見てとったオルリス兄様が咄嗟に動こうとしたが、私は制止した。他人に見られちゃまずいやつだと判断してドアも閉めさせる。
「な……そ、それは!?」
室内に入って壁際に寄ったヴィル兄様が見つめる先には、私の魔力を吸い取る存在。
タロットの“悪魔”を描いた羊皮紙がすっと空中に浮かび上がり、金色の光を発していた。
ついでに言うと、私のアサメイも勝手に鞘から飛び出して浮かび、そのタロットの絵柄に切っ先を向けて指し示している。
……ど。
………………どうしよう。
冷静に状況を把握しようと務めているが、実際のところめちゃくちゃテンパっている。なんか、確実にやばい。語彙力が消えるくらいやばいのを感じる。
「ええと、待って、待って待って待って。これはアレだ、さっきの単語がまずかったわけで……じゃあタロット関連のワードで鎮められるはずだよね!?」
ダラダラと冷や汗を流しつつブツブツ呟く私。オルリス兄様とヴィル兄様が手を出したそうにあわあわしているのを感じるが、ひとまず私は色々試してみることにした。
「えーとえーと。タロット、悪魔、魔法、カード、えーっと」
頭を抱えつつ叫ぶ。
「“解釈”?」
カッと光が増した。…………って駄目じゃん!!!!んあぁぁ!!
「アリスぅぅぅ!?」
「わー!待って待ってヴィル兄様、何とかするから!! えーとえーと、大アルカナ? 小アルカナ? ソード? ペンタクル? “正位置”!?」
テンパリながら叫んだその言葉に呼応するように、ぐんと魔力が引き寄せられる。
その瞬間、脳裏に過ったのは前世の映像だった。
え? これ走馬灯? と絶望しかけたのもつかの間、今度は金色の光が収束していき、その先にあるタロットの描かれた羊皮紙が燃え上がって灰になった。
一瞬の静寂の後、ランプも謎発光も消えて暗くなった室内に、ギシリと音が響く。
そんな不吉な音とともに、タロットが浮かんでいた場所に、まるで次元の裂け目のような亀裂が走り……そこから、黒々とした鋭い爪のついた大きな手と、曲がりくねった山羊の角を持つ異形がぬっと現れた。
「……っ!! アリス!!」
「っ、ま、待って、下さい」
目の前にて、瘴気をまとい次元の隙間から這いずる様に出てこようとするのはどう見ても成熟したバフォメットだ。
だが、私は、自分で叫んだ言葉のせいで起きたこの現象に……。
一周回って、冷静になっていた。
タロットの悪魔の正位置が意味する言葉のひとつは「幻影」だ。
ならば、次の言葉でそれは逆の意味になる。
「“逆位置”」
追加で魔力が奪われる。その言葉と共に、目の前のバフォメットの成獣がゆらりと揺らいで消えていく。
バタバタと音を立てて紙を舞い上がらせていた風も止み。
後に残ったのは、呆然とした私たちだけだった。
書くのが楽しすぎる。これこれ、これだよぉ~┗(^o^)┛ワッショォォオオイ
あ、書籍版1巻も、なにとぞよろしくお願い致します……!!
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