127 宿場町
オルリス兄様の側近に名乗りを上げたり馬車に乗る手をエスコートで取ろうとしたりと、あらぬ方向へ暴走するレリックとアルフレドをなんとか止めたりしつつ。
再び馬車は走り出した。
「アテナお姉様、大丈夫でしょうか」
コニーの横に腰を落ち着けた私は、先程見たアテナお姉様の様子が気になっていた。
「真っ青な顔をしていたね……、可哀想なことを、してしまったかな」
思わぬ戦闘で騒ぎになってしまったことを気に病んでか、オルリス兄様がしゅんとした。それに慌ててフォローを入れる。
「いえ、いつかはアテナお姉様もプランタや魔獣の討伐をしなければいけませんし、それは仕方ないかなと思うのですが……その、少し様子が変だったので」
「そうだったの?」
「なんとなく、ですが」
こてんと首を傾げる兄弟。私はオニキスお兄様が馬車に乗るのを見送ったのでそちらを見ていたから気付いたのだが、二人は護衛ズに絡まれていたので見ていなかったのだろう。
アテナお姉様は確かに戦闘に怯えて顔を青くしていた様なのだが、それよりも気になったのは、何故か私の顔を見た時……一瞬硬い表情になったことだった。
あれはなんだったんだろうとモヤモヤしていると、コニーに背中を優しく撫でられた。
「もう日が暮れてしまいますから、念の為に、領都の手前の宿場町で一泊していくことになりました……一晩休めば、きっとアテナ様もお元気になられますよぉ」
確かに、私もアテナお姉様も慣れない遠出や魔獣との遭遇で気疲れしていたのかもしれない。表情を作れなかったり、見間違えたりしてもおかしくはない。
コニーの言葉に頷きつつ、ぼんやりと窓の外に目をやった。
◇
到着した宿場町クラルスは領都の手前というだけあり、石畳も整備され活気に溢れた街だった。
大きな街道に沿うようにして発展したらしく、特に大通り沿いの建物はひしめきあう様にしており背が高い。
その横の路地を入って奥へ行くほどに建物は低くなり、華やかな表とは一転して素朴な地元民の民家になっていく感じだ。まさしく絵に書いたような宿場町である。
そんな街並みを眺めているうちに貴族や商人向けの上級宿に宿泊が決まり、簡易な晩餐を済ませた。
そして、夜。
大変申し訳ないとは思いつつ……私は、本日二度目のわがままを申し出ていた。
中世ヨーロッパ~って感じの石畳の街並みって、なんであんなに心躍るんでしょうね。
ロープで渡された洗濯物とか、細い路地とか、教会とか、海に続く細い階段とかがあると、なお良し。
さてさて、直前なので再び宣伝失礼します。
明日、9月29日に当作品の書籍版が発売になります。
ウェブ版よりもかなり読みやすく、そしてほんのり甘くなっております。
挿絵やカラーイラストも美麗ですので、ぜひぜひお手に取ってくださいませ!(人´∀`*)




