113 ご褒美、そして第二ラウンドへ
連続投稿中につき、未読話にご注意くださいー!
「嘘だろ……獣人が魔術で決闘に勝ったぞ?!」
「ていうかなんだあれ、爪が伸びてなかったか?」
キルシェが盛大にすっ転んで場外へ出た時静まり返った観客達は、興奮したように一斉に騒ぎ出した。
「ファニールー!! よくやった!!!!」
フレッジ様を先頭に金狼族が駆け出し、獣人の上級生も入り交じってファニール君は揉みくちゃになった。
「へへ……。ふぁ、頑張ったら眠くなってきたよぉ」
先輩方に頭を撫でくりまわされてぐわんぐわん揺れているファニール君は、今にも寝そうである。だいぶ体力を消耗したらしい。
そんな様子を見つつ、私はガサゴソと揺れている植え込みに向かって手招きした。
「コニー、コニー。こっちおいで」
そう口パクすると、ひょこっと頭を出したコニーがぱあっと笑顔になって走ってきた。
「ファニール君凄かったですねお嬢様! こう、がおーってなってずばっとなって」
身振り手振りを加え、キラキラした目で興奮したように語るコニー。わかるわかるぞ、いつもはふわふわ眠そうにしているファニール君が獣っぽさを出したギャップはかなりカッコよかった。
「コニーも褒めてあげてください。きっとファニール君は一番喜びますよ」
そう言ってによによしながら背中を押すと、コニーは「えっ!私ですか?」と頬を染めて戸惑いの声を上げた。
その声を聞きつけてか、もみくちゃになって半分寝ていたファニール君の耳がピンと立つ。
その変化を察してか、ファニール君を囲んでいたケモっ子達も手を止めた。
そこにおずおずと近寄っていきながら、コニーはファニール君の頭を控えめによしよし、と撫でた。
「え、……えと。とっても強くてカッコよかったですよ、ファニール君!」
「……!!」
瞬間、ぶわりと興奮したように毛を膨らませたファニール君は、真っ赤になって眠たげだった目をカッと見開き…………ぱたむと倒れた。
「えっ……ええ?!」
「おい、ファニール?!しっかりし…… ちょ、ぶはっ、目え回してるぞ!!」
狼狽えるコニー、そして爆笑する獣人の先輩達。
「あちゃ……。刺激が強すぎましたかね。私も声かけに行こうと思ってたのに……ふふふっ」
「ふっふふ。よっぽど嬉しかったんだね」
「ヴィル兄様!」
いつの間にか横に来ていたヴィル兄様。どうやら貴学院の用事が終わって合流していたようだ。
「三回戦の決闘になったって話だけど、後は誰と誰が出るの?」
「俺だ」
ヴィル兄様の問いかけに答えたのはヨハンだ。
「そうか……。稽古の成果を見せてね、ヨハン」
「あぁ、任せてくれ」
側近になることが決まってから、ヨハンはヴィル兄様によく稽古をつけてもらっていた。師弟関係とまではいかないが、信頼しあっているのが分かる。
「ニコラスは人前でアリス様や俺達を馬鹿にした上、アリス様の過去のことまで口にした。……絶対に許さない」
そう口にしたヨハンの目は、異様にメラメラと燃えていた。
闘志を燃やすのはとてもいい事だし嬉しいのだけど、少しクールダウンさせないとまずいかな。
私はヨハンを引き寄せて、挨拶する時のように軽く抱きしめて背中をポンポンした。
「ヨハン……。怒ってくれて、ありがとうございます。でも、絶対に怪我しないで、無茶をしないと約束してください」
「あ、アリス様……! ……っはい、約束します。あいつになんか手も足も出させません、心配なさらないでください」
そう言って微笑んだヨハンは少し顔が赤くなっていたが、ギラつきは減っていた。そして意を決したように颯爽と決闘の白線へ向かっていく。
……強烈な視線を感じて振り向くと、ガブリエラ陣営の方からニコラスがこちらを睨みつけていた。
びっくりして目をぱちぱちすると、ふいっと目を逸らされる。……なんかアイツそういうの多いな。私何かしたっけか?
単純にガブリエラの敵として嫌われてるのだろうか。別にいいけど。
そんなことを考えていると、第二ラウンドの準備が整っていた。
「両者位置についたな。――それでは、始めっ!」
オルテンシア様の声と共に、二人が走り出した。
ファニール君書くのが楽しい……笑
次はヨハン対ニコラスです!