103 後の祭り
慰められると、自分の感情と関係なく……というか感情以上に涙がだばだば出ることってない?こう、冷静になってきてるんだけど優しさに触れてダーーみたいな。
私はそういうのある。……なう。
「大丈夫です、大丈夫ですよぅお嬢様」
「アリス様、アリス様ぁ」
コニーとケモっ子の優しさ攻撃!アリスに99のダメージ!
「ふ、ひっく」
えぐえぐしつつなんで泣いてたんだっけ、と冷静になったところで、あそうだ、人に危害を加えそうになってテンパったんだった、と思い出した。
あほのニコラスとキルシェはどーなった?と思ってそっとそちらに顔を向けると、青い顔をしたままのキルシェと、何故か呆然として魂が抜けた様子のニコラスが突っ立っていた。
「……」
キルシェはともかく、なんだニコラスのあの間抜け面。と思ってくすんと鼻をすすりつつ目を合わせた瞬間、ニコラスはまるで弾かれるように顔を背けた。
「……っ」
ん?と思う間もなく、私の頭部をスコーンと凄まじい衝撃が襲った。
「ふぎゃっ?!」
「おおおおお嬢様?!」
な、何事。と頭にぶつかって地面に落ちた物体を見やると、それはいつぞやに見たユーダ石で。
私にぶつかった時に魔力をがっつり持っていったのか、強く発光していた。
「アリスー!!やっぱりお前かァ!!!!」
「無事か皆の衆!」
「へ?!」
石に続いて聞こえてきたレイ先生の叫び声とロリバ……学園長の声に驚いて振り返ると、2人が揃って猛スピードでこちらに走ってくるところだった。
その鬼気迫る勢いにびっくりしてコニーごと飛び上がると、駆け寄ってきたレイ先生にがっしりと両肩を掴まれた。
「大丈夫か?! てか何やらかした……!!なんだこれは!!」
「えっあっえっ」
心配と怒り半々の凄い勢いに押されてしどろもどろになっていると、ケモっ子達が「あいつらです先生!あいつらのせいでこんなことに!」とニコラス達の方をばっと指さす。
しかし……そこはもぬけの殻になっていた。
「ぬ?どいつじゃ?」
キョロキョロする学園長。レイ先生も見渡すが、やつらは影も形もなくなっていた。
「あちゃー……。えーと、レイ先生。その、ガブリエラの側近二人がうちの子達に酷いいじめをしていたんです。ていうかリンチと窃盗。それで駆けつけたら、言い合いになって、相手が逆上して……刃物が出たので、うっかりキレて暴走しちゃって……」
「な……」
私の発言に一瞬言葉を失ったレイ先生は、次の瞬間「馬鹿野郎!!」と叫んだ。
「なんですぐに大人を呼ばなかった!?こんな場所でリンチしてるような奴ら相手に危ないだろうが、なんで逃げなかった!!」
「う……でも、うちの子達が……」
「だからこそ、だ! 自分の立場と能力を考えろ馬鹿野郎! ……ちっ。とにかく全員医務室だな」
そう言って私から手を離し、全員の傷を確認し始めたレイ先生。
……その勢いに圧倒されながらも、納得して苦い気持ちが溢れ出す。
言われてみれば確かにそうだ。ファニールは怪我していたし、無駄に言い合いして異性を逆上させてる暇があったら、さっさと大人を呼ぶなりみんなを連れて逃げるのが先だった。
……私、最初は冷静に対応したつもりだったけど……その実、最初から冷静じゃ、なかった。
何がうちの子達だ。なんにも出来なかった、むしろ危険に晒したじゃないか。
酷い自己嫌悪に陥りそうになったが、いきなり視界が急浮上して慌てる。
なんと、レイ先生によっこらしょと俵かつぎされていた。
「ひええ?!」
「行くぞ」
ええええ、てかレイ先生キレすぎて男言葉になってるし担ぎ方が豪快だし色々大丈夫か?
そしてなんだこの状況……?!
……混乱するままに、私はみんな諸共、医務室に連行された。
あの時は冷静に対処したと思ってたけど、今思えば全くそうじゃない……なんてことありますよね。




