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間違いだらけのタンテイさん  作者: 河崎 奏
3/4

犯人?

ここからちょっとペース落ちます

毎週日曜日に投稿できればと思っています。

回答用紙盗難疑惑が勃発した後の最初の週末。

伊瀬谷家は昼も近くなるまで活動を始めない。もっとも、僕と妹の2人しかいないのだが。

一般家庭では普通、子供のみで家を運営することはないが、僕の家は母親は職場に泊まり込み、父親は単身赴任で海外に滞在している。母が帰ってくるのは週に二回程度だ。


「蒼ちゃん、起きて」

あくび混じりの目覚ましが自室の扉を叩く。僕は毎回、毛布にくるまって

「まだ起きたくない」

とひたすら駄々をこねる。

「ん。じゃあ、買い物よろしく。リストにしてあるから感謝しんさい」

短く命令を下し、足音は遠ざかっていった。ふん、恩着せがましい奴。

異を唱える僕は虚しく取り残され、しばらくして、やおら毛布から這い出た。

欠伸を一つ。

寝癖が一切立たない髪を適当に整えたあと、ウィンドブレーカーを着用。

さっさと用を済ませようと財布を持ち

「茜!僕のケータイ知らねー?」

リビングで家中に響く声をあげ、妹にそれを捜索を依頼するとソファーの隙間で、なんとも冷たい着信音がなった。それとリストをポケットにねじ込み僕はスニーカーを履いて家を出た。


リストにはこの間、柳介といったハンバーガー屋の品目があり、僕の足は駅前まで伸びた。スクランブルで赤信号を待ちながら、灰色が覆う景色を背景にビル群を、無心に見ていた。

「こんにちは、伊瀬谷くん」

後ろから突如かけられた挨拶に僕は驚いて危うく声を漏らしそうになった。

振り返ればセミロングの黒髪。

「なんで小田切がここにいんだよ」

「買い物。そんなに素っ気なくすることもないのに」

そう言われても、知ったことか。

心中で吐き捨てちょうど青になった信号を渡る。すると

「あ!」

小田切が横断歩道の半ばで何かを思い出したように呟いた。

「伊瀬谷くんに言いたいことが」

しばらく彼女は僕に並んで歩き、やがて僕が目的地で止まると、同じく止まった。

「なんだよ」

鬱陶しくてたまらない。休日に女に会うとろくなことがない。

「答案の盗難……別に笑わせるつもりはないからね。あの事件は本当に伊瀬谷くんではないのよね?」

僕は肩をすくめ、精一杯うんざりを体現した。

「当たり前だろ」

「そう、それならいいんだけど」

にこりと笑う小田切の行動が読めない。神経を逆なでされるようなイラつきを覚えながら、以前のトラブルも確かこんなふうに始まったようなと思った。

「何か?まさか確認だけ?」

早めに話を切り上げるために促す。

「言いたいことっていうのはね、私が見たものの話なんだけどーー」

注文の順番が来た。持ち帰りを選択し、ハンバーガーをもらったら僕は来た道を引き返す。その間、小田切は傍でなぜか待機。

スクランブルで信号待ちをしている間に小田切は話を再開した。

「テストが終わった日の夕方に白鳥先生に書類を出しに行こうとしたら、生物準備室に入っていく人影が見えたの。その時は答案がなくなるなんて思ってもなかったからそれで終わりなんだけど、ちゃんと見ておかなくて今は後悔してる」

小田切の表情が多少曇り、信号機を見た。

「僕は、犯人を探して答案を返してもらうつもりだよ」

信号が青になった。

早足で渡り、小田切も付いてくる。

「クラスの人たちも犯人が僕だと思ってる。それに答案が返って来なければ順位も出ない。どっちにしてもこのままの状態はまずい」

ため息をついて

「正直、犯人を見つけられる自信もないし、人から話を聞けるほど人付き合いもなっていない。だけどどこかの盗人のせいで僕の高校生活が暗黒時代になることは避けたいと思っている」

目線を下げた。

小田切の硬い靴の音。

僕のスニーカーの音。曇天へ交互に響く。

「B組の笹木さん」

おもむろに小田切が人名を言った。

続け

「生物準備室に入っていった人は多分その人じゃないかなって思って」

だが、僕はその人物を知らない。

苦笑いをした。聞いたところおそらく女子生徒。

「小田切が聞いて来てくれないか?」

少し声量が下がってしまっているのが非常に悔しい。


ブルーマンデーとは大したもので、僕は中学のいつかからこれを毎週思うようになった。

それは高校に入っても変わらない。

電車通学ゆえの早起きと、不毛に過ぎる時間がなんともいえず心地悪かった。

そのことについて語り合ってた僕と柳介は、お昼時ということで購買部に来た。

「ところで、小田切さんとはどうなんだ?」

不意に、柳介にコーヒーを買いながら聞かれた。

「どうって、僕は別に小田切とは仲良くしていないし、するつもりもないよ」

「……お前は女嫌いだっていう割に行動が伴ってない。俺には女嫌いだなんて見えないんだよな」

ストローを伸ばしす音とパックに刺す腑抜けた音が聞こえた。

「女嫌いっていうよりも苦手なんだ。それに今は茜のおかげでだいぶマシになってる」

柳介には妹の茜のことを少しだけ話したことがある。その感想は

「ああ…あの勇ましい姫ね…」

苦笑いを誘うのに相応しい特徴が並んでいた。

柔道着を着、ポニーテールを揺らして黒帯を締める姿はまさに勇ましいの一言に尽きる。ついでに言うと女らしいの「お」の字もない。

「お前の苦手の度合いが緩んで来ているのはわかったけど、それでも小田切さんが流石に可哀想に見える。もう少し柔らかく当たってあげてもーー」

「僕は仲良くする気はないっていってるだろう?」

声こそ荒げなかったが、柳介の話を遮ってしまって少し気まずい。

僕も今のはいけないと思ってすぐに誤った。

「ごめん」

許してくれる、良い友に感謝。


小田切は僕が頼んでおいた笹木への聞き取りの結果を、昼休みに持って来た。

「入ったのは一瞬ですぐ先生に廊下に連れ出されたっていってた。この状況じゃ盗むのは無理よね」

夕方の生物準備室前、笹木と白鳥が話すーー

ん?

「小田切が笹木を見たっていうの、見間違いっていうことはないか?見た時間は?」

「見間違いなんてないわ。笹木さんは背が低いもの。時間はええと……5時半くらい」

確かに白鳥は背がでかいな。

5時半。5時半。意識の中で反芻する。その時間は自習室に生徒が割と残っている時間帯だ。

腕を組んで少しの間考える。

直に、予鈴がなり生徒たちが束になって返って来た。

僕は小田切に一応礼を言って、自分の中で疑問をあぶり出す作業を始めた。


もし、笹木とやらが犯人であるならば答案が置いてあるところを知っているということが絶対条件だ。

よって笹木は生物係で答案を提出しに来たことがある。

そして犯人であるための条件は他にもある。

白鳥は一回、おそらく放課後、僕のクラスの答案があることを確認している。

なぜ放課後なのかというのは、白鳥は他教科の試験監督に回っていて、準備室に入ったのは早くても放課後だから。

ということは、生物のテストが行われた直後の休み時間に盗んだというのはありえない。

そして柳介が白鳥から盗難にあったと聞いたのは、推定午後四時半。これは逆算して求めた。

小田切は5時半に笹木を見ている。

ここから得られる予想は。

答案が盗まれたのは放課後が始まる四時から、四時半まで。

答案を盗んだ動機は、粗方、点数が芳しくなかったのだろう。

盗んでから学校にとどまった理由は、罪悪感と疑いをかけられないためという二択がある。どちらでもさほど変わらないが。

なぜ白鳥に質問を五時半にしに行ったのか。これも、バレてる場合には素直に返そうとでも思ったんだろうなと思う。


そこまで詰めた時5限終了のチャイムが鳴った。

最近、学校の帰り道のある通りで自販機が大量にあることが判明しました。

友達と見てみると全てメーカーが違うのです。

駅前だと言うのに電子マネーが使えません。

だからと言って安いわけではないのです。

不思議…

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