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宵に捧ぐ螺旋  作者:
4/4

事件は

流れるような身のこなしで青年は片手にランタンを持ち、あるモノを探していた

ここは王宮の中にある書庫

それも特定の人物しか入室を許されていなければ閲覧することさえ禁じられた名称「瞑想の間」


その書庫に音もなく忍びこんでる青年になんの後悔も躊躇いもない

一つ一つ棚にランタンの光を翳して次の棚へと進み

そしてついに書庫の右奥にある棚にたどり着き、目を眇る

「防護魔法、小癪な」

忌々しげに舌打ちし青年は軽く左手を翳す

浮かび上がるのは灰色に輝く陣

「時の彼方にありしは堕ちた言葉廻る印に導かれん【ファスト・クライシス】」

瞬間灰色の光が瞬き、硝子が割れるように陣は消えさった。

「もって数分か」

一瞬宙を見やり、すぐにその視線は露になった棚に走らせる。

そして下段に差し掛かったところで視線は止まった。

「これだ」

蕩けた笑みを浮かべ、素早く懐に抱きしめる

「さあ、行きましょう?《聖典‐ヴォイス‐》」

慌てた複数の足音、近付いてくる怒号

強い魔力を有する者の気配に一瞬で笑みは消え、青年は目を閉じる。

「来たれ、【モーリシャス】」

瞬間青年の姿はその場にすでになく駆け込んできた者達が悔しげに呻いた






こちらにあるのが『リバイ』か。結構年季が入ってるな

うん?でこっちには・・・


「マジやってられない、こんな雑用は使用人の仕事で大貴族の嫡男たる我々がすることではない」

「まったくだな。そこにいるような下民がする仕事だ

誇りある軍人たる我々に対する侮辱」


手を動かして欲しい。口が動くなら先に


しかしそんな気配は全くない。


「ゼーレ大将軍閣下の指示でなければ帰れたのだが」

「今日中に終わらせなければ失望されてしまう

かもしれない」


黙々と手を動かし二人を一瞥することもなく片付けていく


今日は人手不足な部署の手伝いで備品倉庫の片つけをしているのだが

お貴族の子息である二人は不満を口にするばかりで箱を椅子代わりに座ってしまっている

基から期待はしてなかったが


これは酷すぎる


ゼーレ大将軍閣下に良いとこ見せたいようで倉庫から出ていく気配はない


いつもならさっさと消えてしまうのに

やっぱりこの二人はゼーレ大将軍閣下を尊敬していると明言しているのは嘘ではなさそうだ。


今日は遅くなっちゃうかな


「イシュトリ嬢よりカナン嬢の方が一夜の遊びに適している」

「年増な女は好かない。初な方が落としがいがあるではないか?」


今度はどうやら女性との明け透けな会話を交わしている・・・

一応自分も女の子なんだからそんな会話は聞きたくない


彼らから少しでも離れるべく部屋の奥へと足を進める。

ふいに見た戸棚の片隅に埃を被った本に目が止まった

「あれ?これはもしかして『深遠を覗きし勇なる旅人』の初稿本?」

表紙を読んだ瞬間、エヴァの顔が緩む。


無類の本好きで軍に入った理由の一つに庶民では見れない本を見たいがためである。


読みたい・・・・今すぐに、でも今は仕事中でだけど

ちらっと見るだけなら、そう本の少しだけ見るだけなんだから


周りを見回してから緊張した面持ちで表紙を捲った


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