その9
「……個人的な感想だけど、リオンもだけど、ヴァン・クーロンだったら誰だって親友に声を掛けに来たのなら凄い勢いで追い払うと思うわ。リオンとは違う方向で危険じゃない」
厳しい表情を浮かべ、イシュタルは断言した。
「クーロン君はねえ。仕方ないですよ、愛を司る神の流れですし。息を吸う様にナンパをして、息を吐く様にお持ち帰りをしないと死んじゃいますから」
リオンは乾いた笑いをしながら、後輩の不名誉な評価を何とか取り成そうと努力する。
「学園の敷地内でやったらちょん切るけど、あの子、そこまでは莫迦じゃないからそこは安心よねえ」
「学内不純異性活動禁止ですからねえ。流石にリサ姉は怖いと見える」
クスクスと笑いながら、リオンはリサを見た。
「別に私だけがあの校則成立に積極的だったわけじゃ無いわよ?」
不本意そうにリサは反論した。
「まあ、リサは戦女神、それも処女性を重要視されている家系だから仕方ないわよねえ」
イシュタルは肩を竦めながら、それとなくフォローする。「まあ、リオンが思い切った行動を取れない理由は分かったわ。でも、こちらからアプローチを掛けるのは危険じゃないの?」
「危険と云いますと?」
姉の発言が理解出来ないとばかり、リオンは不思議そうな表情で尋ね返した。
「普通の子はね、私たちから切り出したら身構えるのよ。そんな事も学んでいないの?」
呆れた口調でイシュタルは弟を見た。
「それぐらい知っていますけど、リサ姉なら関係ないでしょう。僕たちと違って、天界の名門当主ですよ?」
姉の発言に対し、リオンは首を傾げてみせる。「リサ姉が表に出ているのに、僕らの関係が疑われますかね?」