その26
「うーん、一撃じゃ無理なんじゃないかな? 元々、明神君とリオン君の地力の差があるからなあ」
クーロンの質問に対し、アールマティは少しばかり悩んだ。
「地力の差、ですか?」
「うん。何度も云っているように、リオン君は普段、本来の力を出せないように“枷”が掛けられているんだ」
「ですが、現在は理事長先生や学園長先生に封を解いて貰っていますよね?」
アールマティの今更の説明に対し、クーロンは律儀にも現状の確認を取った。
「そう。今、出せる力の限界までは使える状態だね。問題は、それが本来の力に比べたら足元にも届かないって事だよね」
「は?」
根本から全てを崩すような発言を聞き、思わずクーロンは声を出した。
「リオン君は産まれながらの魔王なんだよ? 受肉してこっちの世界に留学する際にかなりの制限を掛けられているわけ。その上で、“枷”を受けいれたの。理事長先生が学生だった頃、学生レベルではどうにもならなかった事を踏まえての措置らしいけど、魔界の政治事情はそこまで詳しくないから、ボクもそれがどこまで本当だかは知らないけどね。ちなみに、明神君もある種の“枷”を強いられているそうだけど、リオン君ほどじゃない上、彼の一門の特性である“弱者の守護”がある御陰で、生徒を守る“生徒会長”である限り、基本的に学園内では力が上乗せされているんだよね。その上、明神君を信じている生徒が数多く、それが信仰となって更なる力となる。“枷”を解いた状態のリオン君でも明神君の出せる力の総量には到底届かない。強いて云えば、日が暮れた後ならリオン君の力が特性の都合上増すから五分五分になるんじゃないかな、力の総量だけで云えば。……まあ、夜闇の中のリオン君相手に勝てるのって、生徒じゃいないだろうからそれはそれで話にならないだろうけど」
「それはそうですよねえ。すると、ヴァシュタール先輩は明神先輩の鉄壁を破る事はない、と?」
言われてみれば当然の話であり、クーロンは納得すると共に導き出される当然の帰結を尋ねてみた。
「普通に考えればそうなんだけど……ボクの知る限り、リオン君は勝算のない戦いを挑む事無いんだよね」
珍しく歯切れの悪い答えを返してきたアールマティに、
「俺達では考えつかない手段を有している?」
と、クーロンは真顔で尋ねた。
「……多分。ボクも自信ないんだよね、そこら辺。だから、凄く楽しみなんだ。リオン君がどんな手を打つのかが」




