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第1話 追放されました

「――この聖剣さえありゃお前なんかいらねえ! メンテしかできない無能がよお!」


 最強の種族である竜。

 その骸の上に片足を乗せながら勇者スウェンは叫んだ。


 真っ赤な血で汚れた『聖剣』と思っているそれを掲げながら。



「いや、それは――」

「そうね! 聖剣があれば何日も街に留まったり、野営したりして武器を『研ぐ』必要もないものね!!」



 俺がスウェンの誤解を解こうとすると、魔法使いのエリが満面の笑みで同調した。


 そして二人の視線は俺に集まり、その眉間には皺が寄っていく。



「武器職人に毎回新しい武器を頼むのも時間がもったいないって、それだけでこのパーティーに残してやっていたが……」



 スウェンはゆっくりと俺の元に歩み寄ってくる。


 たっぷりと次の言葉を溜めながら。



「――レンヤ。お前邪魔なんだよ」



 レンヤ、それは確かに俺の名前。


 これが夢ならばさっさと覚めてほしいと思わずにはいられない宣告がついにされてしまったのだ。



「なぁ、お前が倒したモンスターって今までどれくらいいた? ほぼゼロだよな? タンク役つってもすぐにやられちまうし……ポーションが無駄になったなっていつも思ってたんだよ」

「そうそう。出費もばかにならないし、治癒魔法ばかりの戦闘にはうんざりだったのよ」



 恐れていた事態になり、なかなか言葉が出ないでいるとスウェンは語気を強めた。


 しかもエリによる追撃で険悪な空気は加速。


 早く、早く弁解をしないと――



「ねえ、あなたはどう思う」



 口を開こうとした時、エリは槍使いのルミアを見た。


 俺がこのパーティーに入ることになったきっかけの女性で、恋心を抱いてさえいる女性。


 いつも研師である俺を褒めてくれて、励まして……ルミアが横に立っているから、それを守りたい一心で俺は頑張れた。



「う、うーん……。スウェンの剣にそれが必要ないのなら……」



 そんなルミアが初めて俺を見てうつむいた。


 冷や汗が止まらない。


 あのルミアが、そんな……。



「でも――」

「そうよね! あなたってもともと弓使いで、今まではこいつが頼りないから槍使いだっただけだものね!」

「え?」



 ルミアの声を遮ってエリの口から出た言葉に俺は空いた口が塞がらなくなってしまった。


 守りたいと思っていたのに……本当は守られて、いた?



「で、でも、槍を使いたいって思っていたのは前からで! レンヤ君が研いでくれた槍だとなんだか――」



「――やめろ!! もうこいつを甘やかすな!!」



スウェンはその言葉を怒号でかき消すとルミアのもとへ駆け、その腕を掴んだ。



「な、なにするのスウェン!」

「こんな傷を負ってまで擁護するような奴じゃないだろ!」



 スウェンはルミアが装備していたガントレットを無理矢理外した。


 するとそこには大きな傷跡があった。



「これ、こいつを守ってできた傷跡だろ?」

「こ、これは――」

「庇うな! ルミア、これ以上お前のお人好しに付き合ってはやれん。俺もエリもお前自身の身体もな」

「……」



 黙り込むルミア。


 それを見て再び俺の元に近づくスウェン。


 そして耳元でスウェンの声が響く。



「ずっと気に食わなかった。お前がルミアと話しているのが。だが、これでもうそれを見なくても済む。ルミアにわかってもらいたいと、傷を負ってもらう必要も……もうなくなったわけだ」

「!? スウェン、お前――」



「――ゲート」



 信じられない事実にとめどない怒りが湧いた。


 だがそれをぶつけてやろうとするよりも先に、俺は肩をどつかれて態勢を崩していた。



 倒れていくその先はおそらく、転移門がある。



 スウェンの口から出た魔法は敵をどこかに飛ばす『闇魔法』。



 通常勇者が扱えるわけがない属性の魔法だった。



「ルミア! ルミアあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」



 俺は最愛の人の名前を叫んだ。


 だけど、吸い込まれるように俺の身体は『ゲート』に落ちていく。



「ふふ。じゃあな、レンヤ。研ぐしか能のない雑魚……」



 ゲートに飲まれ、景色が暗くなった。


 それでも俺の耳にはスウェンの笑い声と罵声がはっきりと届き……。




研師【覚醒】LV1

□対象物:アーマーリザードの骨による剣(F級)

□効果時間:一週間(距離が離れたことにより短縮状態)

□効果:切れ味強化(S級)、刃こぼれ防止




 離れていく聖剣……ではなく、ただの骨でできた剣のステータスと、俺の持つスキル状況が視界に映った。



 そう。俺のスキルは昨晩から覚醒していた。

 


 ……そっか、そういえばあの聖剣は俺がいないとただの骨になるんだったな。


 

お読みいただきありがとうございます。

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