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53/53

53.たたかいおわって

「やったわ、大・勝・利!!」


クルトからもたらされた知らせを聞いて、わたしは飛び上がって近くにいたエリィに抱きついた。


「ひ、姫さま!!?」


エリィはしばらくもぞもぞしていたが、そのうち優しく抱いてくれた。

ちらっと見た彼女の頬は、なぜだか真っ赤に染まっている。


疲れているのかな?

ムリもない。

エリィだけじゃなくて、元追放者のみなさんは、ずっと働きづめだったのだから。


ここにいる中で、疲れていないのは、きっとわたしくらいかも。


わたしは急に恥ずかしくなって、そっとエリィのふところから離れた。


無能で役立たず。

かつて、私がビーストテイマーに放った言葉。

そして、追放者さんたちの何人かが浴びせられた言葉が頭に浮かぶ。


「ほんとうに無能で役立たずなのは、きっとわたしね。みんながこんなに頑張ってくれたのに、なんにもかえしてあげられない」


脇にいたメイドのシエラがそっとわたしの肩を抱く。

彼女の優しさが身にしみて、涙があふれてきそうになる。


「無能な役立たず、か」


とつり、とツクモがいった。

普段は口数少なな彼である。

さっきまでリュミーエルの兵隊さんたち、その武具のメンテナンスにあちらこちらと走り回っていたはずだ。


帝国軍相手の大勝利。

間違いなく、陰の立て役者のひとりだろう。


彼から見れば、わたしなんてまさに無能で役立たずでお邪魔虫に違いない。


貴女(あなた)意外に、そう思っている奴がいたら、お目にかかりたいものだ」

「え?」

「しかし、そうだな。どうしても皆のはたらきに報いたいと思うなら」


はじめの言葉と違い、後の方ははっきり聞こえた。

わたしはがばと立ち上がる。

皆のはたらきに報いる。

そんな方法がもしあるっていうなら、どうしたって聞いておきたい。


ツクモは、珍しくわずかに唇の端をあげて微笑んだ。


「そこな彼女にやったように、帰ってきた皆、その一人ひとりに、ハグでもしてやったらいい。きっと皆、喜ぶはずだ」


むむむ、とわたしは首をかしげた。

せっかくのアドバイスではあるのだけれど、


「そんなことで、みんなが喜んでくれるのかなあ……」

「なります!!」


なぜか、エリィが喰い気味に、叫ぶようにそういった。

彼女の頬は、どうしてかまだ赤いままだ。


「なので、すぐにやりましょう。そうしましょうそうしましょう!! いいっておっしゃってくれるなら、こっちからだっていっちゃいます!!」

「え? エリィがそれでいいなら、わたしはいいけ……わぷっ」


わたしが最後までいうのを待たずに、エリィはがばっと抱きついてくる。


「なんとうらやまし……いえ、アンネローゼさま。あたしもおひとつ、よろしいですね??」

「ええ?? シエラも??? いいけどちょっとま……むぎゅう」


エリィとシエラにもみくちゃにされるわたし。

こんなに喜んでくれるのは、とってもうれしいのだけれど、


みんなが帰ってきたら、いったいどうなっちゃうんだろう?

わたしはいつになくドキドキしながら、勝利の歓声と、あたたかなふかふかに身を任せた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れさまでした。 個人的に、後日談が読みたいです。 戦争が終わり、主人公や追放者さん達の暮らしにどんな変化があったのか、ちょっと気になったので。 (特に主人公の姫様。甘いお菓子は解禁…
[一言] 「完結済」になってますけれど、後書きにも「続きをおいかけやすくなります」とあるしまだ続きますよね?
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