33話 2度目の約束の日
12月24日
雪が降っていた。去年と同じ雪が。
親父と舞子さんと俺で、小雪の誕生日パーティーをした
小雪は相変わらず眠っている。
誕生日パーティーが終わった後、俺は小雪の部屋で、指輪を握りしめて椅子に座っていた。
今日、なんとなくだけど、小雪が目覚めるような気がしている。
なんの確証もない、本当にただの希望的観測だけど、そんな気がしたんだ。
小雪の細い指に、指輪をはめる。ぴったりのサイズのはずだけれど、ぶかぶかになっていた。
「……目が覚めたら一緒に直しにいこうな」
小雪のイメージに合わせて白を基調とした指輪。
以前、小雪がファッション誌をめくりながらこの指輪を見ていたのを覚えていて、この指輪にした。
宝石部分には、雪の結晶のような装飾が施されている。
「……」
「……」
時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。
心臓の音も聞こえる、いまさら緊張してどうする。もう何万回と告白したはずだ。
それなのに緊張する。手に汗がにじむ。
大きく息をすって、はく。
予定していた告白の言葉はもう吹っ飛んでいた。ありのままの、飾らない言葉を伝えよう。
14年間の想いの丈をまっすぐ
伝えよう。
「14年間、ずっと……ずっと、大好きでした。俺と付き合ってください。」
「………」
小雪の目はかたく閉ざされたままだった。
「……14年間片思いだったんだ、いまさらあきらめられるかよ」
今日はダメでも明日がある。明日がダメでも明後日がある。
1年以上も昏睡状態、回復は絶望的だと医者には言われたけれど、俺はあきらめない。絶対にあきらめない。
「……っ」
泣いてなんかやらない。悲しくなんてない。だって小雪は目覚めるんだ。今じゃないだけだ。
「……」
「……ごめんな」
小雪の唇に、そっとキスをした。
勝手にしてごめん、でも、今日くらい小雪も許してくれるよな。
立ち上がり、カーテンを閉める。
今日はいつもより寒い、小雪が寒くないように、エアコンの温度を2度あげた。
「小雪、また明日な」
「………」
綺麗な黒髪が微かに揺れる。
目を疑った。
小雪のまぶたが、少しだけ開いていた。
「こ……ゆき……?」
目が合う、小雪は何も言わない。いや何も言えないんだ。なにせ一年も眠ってたんだ。
「………起きてるのか…意識がある……のか?」
思わずそう呟くと、小雪はふわりと笑った。喋ろうとしていたけれど、口が渇いていて喋れないようだった。
1年間塞き止めていた涙が溢れでる。
そして小雪を優しく抱きしめた。
「………」
「………おかえり、小雪…」
その後のことはよく覚えていない。




