第13話 この世界の技術ってSUGEEE
今回は遅れなかった、私です。
最近あまり話が進みませんが、もう少しお付き合いください。
あれから数日経ち、ようやく俺も独り立ちすることができるようになった。自宅……屋敷なのだが、を持った俺は完全無欠の社会人だ。
正確に言えば、職のない社会人だ。つまり、社会に出てない人だ。要するに、ただの人、無職だな。
いや、ホントマジやばいっすわ。俺無職とか心が痛すぎて死にそうですよ。心臓が破裂しそうなんですけど。
将来への不安と現状への不満が爆発しそうになるのを堪え、今俺はそのマイホームへと向かって歩いている。隣にはツカサとジュハと、その母――名をルンと言うらしい――が並んでいる。なんとも可愛らしい名前だこと。
「ルンさん、お体大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「いえ、病み上がりだというのに歩かせてしまって申し訳ありません」
「構いませんよ。私のような者を雇ってくれるのですから、ケイ様が気に病むことはございません。それと、敬語は不必要ですよ。気軽にルハとお呼び下さい」
ルハは病で倒れていた時は痩せこけていて死に掛けだったが、今は肌にハリが戻っている。五体満足とはいかないが、今では笑っていられる程に回復した。薬が効いたのだろう。
俺を様付けして呼ぶルハは、現在俺の使用人として雇っている。月給制にしようと思っているが、給料の基準が分からないので後で話し合う予定だ。
「それは分かったが、流石に『様』はやめないか? ちょっと恥ずかしいんだが」
「いいじゃないか、ケイ。その方が主従関係もハッキリするし、ボクは賛成だよ」
「そういう問題じゃないんだけど」
「ケイ様、私は貴方様にお救いいただきました。なので、恩返しがしたいのです。どうか、よろしくお願い致します」
うーん、堅苦しいな。もう少しラフな感じで話せないものか。
ルハの脱色されたような茶髪が日光を反射し光って見える。それが美しいと思えるのは、ルハ自身が美しいからなのかもしれない。
なんて、思考があらぬ方向へと逃走してしまった。しかし、ルハの意思が固すぎてどうすることもできなさそうだ。紅色の瞳がそう訴えている。
「分かったよ。様は許す。けど、謙るにしても限度があるからな。俺はそういうのに慣れてないから、自重してくれよ。いいな、ルハ」
「畏まりました。以後、気を付けます」
ルハは俺が買ってやった明るいレッドのドレスの裾をたくし上げ、見事なお辞儀を見せた。慣れを感じる程美しいお辞儀に見とれていると、ジュハがこっそりと教えてくれた。
「お母さんはね、昔ナントカって言う人のメイドさんだったんだって」
「メイドをしていたのか」
「うん。だから、お母さんの入れたお茶ってとっても美味しいんだよ」
「そうか。それじゃあ、楽しみにしておこう」
元メイドか。これは頼りになりそうだ。ツカサもルハのお辞儀には驚いているようだし、相当キレイなものだったのだろう。誰のメイドをしていたか、気にならないでもないが……自分から話してくれるのを待とう。聞き出すのは本意ではない。
ちなみにだが、ルハは26歳でジュハは10歳らしい。単純計算でルハが16歳の時にジュハを産んだことになる。
この世界の法律ってどうなっているのだろう。調べる必要がありそうだな。
なんて考えながら、ツカサやルハ達と雑談しつつ、屋敷へと向かった。ジュハを肩に乗せたりして遊べた時は、「本当に強くなっているんだ」と実感したよ。
「こ、ここか?」
「そうみたいだね」
「うわぁ、おっきい~」
「これは……」
各々が屋敷を見上げながら感想を口にした。もちろん買ったのは屋敷か、塔ではない。
古い屋敷だから改築が必要って言われたからどんなものかと思いきや、これは完全に魔改造ですわぁ。
屋敷の外観は何というか、城だった。それも、かなり大きな。昔に住んでいた貴族ってどんだけ金持ちだったんだよ。こんなもの建てやがって、心臓飛び出るわ!
「取り敢えず入るか」
「そ、そうだね」
中へ入ると、まず目に入ってきたのは大きな大きなシャンデリア。何だろう。成金感が否めない。
この屋敷は二階建てなのだが……うん、凄く大きいのに二階建てなんだよ。その二階に繋がる階段も大きいし、何もかもがデカイんだよな。イメージしやすいのは、初代バ〇オ〇ザードの屋敷だと思う。あんな感じの内装になっている。
俺が言葉を発せずにいると、女性の声で話しかけられた。それはツカサでもルンでもない、別の誰かだ。
屋敷内を見渡すと、二階から誰かが下りてきているのが見えた。メイド服を着た女性は階段を下り、俺の前まで来ると小さくお辞儀をした。
「おかえりなさいませ。ご主人様」
その女性は開口一番これだった。ご主人様って誰で、そして貴女は誰なんですか。と、俺が聞く前にツカサが聞いていた。
「君、誰? ケイの知り合い?」
「俺は知らん」
「私はご主人様専用のメイド、ミーナです」
「ケイ、いつの間にこんな……」
「し、知らない知らない! 俺はこんな人知らないぞ!」
ツカサの白い目が地味に心に刺さるが、俺は必死に否定した。本当に知らないのだから、やましい事も何もない。
それを伝えているとミーナとかいうメイドさんが割って入ってきた。
「ご主人様が知らないのも無理はありません。私は別の方に買われ、主をケイ様に設定されていますので」
「買われた? 設定? 君は何言ってるの??」
「あぁ、なるほど。君は魔法人形なんだね」
「え、何それ」
知らない単語が出て来たな。名前から察するに人間ではなさそう……
「え、それって人間じゃないってことか!?」
「そうだよ。魔法人形は人間に似ている物もあるけど、魔法で動くただの人形。詳しい仕組みは難しいから説明しないけど、決して人間ではないね」
「へ、へー」
ツカサの話を聞いた後、ミーナの顔をもう一度見た。銀髪に銀の瞳、無表情ではあるが人間だと思ってしまうくらい、生きていると感じる。それ程精巧に作られている。
本当にこれが作り物なのか……この世界って、魔法による独自の発展を遂げているんだな。
「そういう訳ですご主人様。これからよろしくお願いします」
こ、この時代の技術ってスゲェ。ただ、そう思った瞬間であった。
次回、宣戦布告




