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「もう、逃がさない__」
私の耳元で聞こえる貴方の声が震える体を止めてくれる。
やっぱり、どんなに会いたくなくても貴方だから__
* * *
狼たちが去った後、しがみついて泣く私を優しく抱きしめて背中をポンポンと叩いてくれる。何も言わずただ私が落ち着くのを待ってくれている。
あんなに会いたくなくて、あんなに拒絶したのに。
「…な、…んで」
「ん?」
涙声でうまく伝えれなかったけれどハルトは分かってくれたらしくてあぁ、と頷いて。
「誤解、してると思ってな。ちょっと追いかけてきたら精霊がこっちで狼に襲われそうって教えてくれて急いで来たんだ。」
背中に置いていた手を頭に添えて今度は頭をなでてくれる。昔からそれが嬉しくて少しだけ昔に戻った気がした。
「誤解?」
「そう、誤解。」
胸にくっつけてた頭を離してハルトの顔を見上げると丁度目があって悪戯に笑われる。むぅ、と口をとがらすとコツンと頭を合わせてくる。
「俺、姫様とは婚約してないよ。寧ろタイプじゃないって言われたしな。」
「……え?」
「ほんと。婚約したのは魔導師と。俺はただのカモフラージュ。」
「う、うそっ!」
余裕の笑みが落ちてきて、なおさらパニックになる。だってだって!新聞には……
「だーかーらー!カモフラージュだって。他国に勇者はこの国に留まるってゆー牽制!」
尚も言い訳もとい逃げ道を探す私にハルトは少し離れて大袈裟に溜息をつく。その行動に少しだけムッとすると彼はニヤッと笑って。
「待っててくれって言ったのにな。薄情な婚約者だなー。」
「だって!……それはっ!」
言い返そうとしてぐっとハルトに無意識に近づいた瞬間、言葉ごと呑み込まれる。いきなりのことに驚いて閉じられるどころか逆に大きく開かれる目。後頭部を逃げられないように手で押さえられて深く口づけられる。体の力が抜けていつの間にか腰に添えられていた手が私を支えてる。
「もう、逃がさない__」
決意を声に出し、形にすることは誓いと同じ。
すでに私は貴方から逃れられない。
「__ミリア、これからも傍にいてくれ。」
緊張を含んだ、ハルトの固い声が私の体を駆けめぐる。今まで逃げていたのが馬鹿みたいに思えた。だけどそれが本当かどうかもわからない。ハルトの言葉を確かめる術もないけれど、でも信じたい。
「ねぇ、一つだけ約束して。」
貴方の手をぎゅっと握って不安を和らげる。
大きく深呼吸をして真っ直ぐ彼の瞳を見つめ返す。
ほら、大丈夫。
「私に嘘はつかないで__。」
これからも、いまからも。
彼は一瞬、きょとんとして破顔した。そしてムッと眉を寄せる私を強く強く抱きしめて。
「あぁ、約束する__」
耳元で囁いた。
* * *
それから、姫様と魔導師の盛大な結婚式が行われた同じ日に勇者と薬師の慎ましやかな婚姻式が執り行われた。
* fin *
こんなのりで終わってしまったのですがどーなんでしょうか笑
フリード様はミアを見つけることが出来ず勇者にかっさらわれてしまうとゆう。
見切り発進だったので拙すぎでボロボロだとは思いますが最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました!




