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用意するモノは、天然の塩。


これだけ。


私、これでもポルターガイスト(幽霊のイタズラ)に悩まされたことがある。マニアックな映画だと騙されて、露店売りのじいさんからスナッフビデオ(人が殺される映像)の本物をつかまされたときに。


……人生いろいろあります。運の問題だけどね。


でも、私だけじゃ対処できないので助っ人を呼ぶしかない。


「……で、友達をアッチに連れていくことは出来ない?」

「無理」


でも、私じゃなにも出来ない。イコール、見捨てるか、巻き込まれて酷い目に合いそうな展開……しかなさそう……。


今も必死で、私の両腕を掴んでコチラを見上げてくる少女を見捨てることは難しい。


「……一人じゃ無理」


サラの訴えを尊重して、友人と相談。仕方なく、折衷案が出された。


「じゃあ、連れてこよう」


サラに提案すると、彼女は嫌な予感がしたのか後ずさる。


「何を!?」


すでに、察しがついているようなだ。


「幽霊」


サラの顔が蒼白に染まる。


「無理ぃーー!!!!!!」


本気で嫌がっているけど仕方ない。この役目は、サラしか出来ないのだから。


「やーだー!! やだやだやだ!」


お前はだだっ子か!






――――――――――


作戦はスムーズに行かなかった。


サラが向こうの世界から、どうにかして一人でアレを連れてくる予定だった。


「一人じゃ絶対無理!」

その『絶対』に、ものすごく力を入れて彼女は、粘りに粘った。


私の家に来た友人は「仕方ないよ。怖いものは、怖いだろうし、(たえ)が着いていけばいいだけの話」と、勝手に承諾してしまったのだ。ああ、逃げられない。私だって、怖いものは怖い。


しかし、サラは喜び勇んで、さっさと向こうの世界へと私を引きずり込んだ。


視界の暗転と、三回目の転移で気付く。


私の世界に幽霊を引きずり込むには、本人にそっくりな人形をあちらに置いていなければ転移出来ない。


屋敷に着いて、早速それを確認すれば「そうだよ。だから、私が幽霊に関わるものを見つけて、一回あっちに行かなきゃダメだけど、容量の問題でたーちゃんは置いていくと思う」などと、のたまわった。


ふざけないで頂きたい。


私は、重い足取りでサラの後を追う。


段取りは、実に早かった。


サラは、屋敷を購入した人物から、前の屋敷の持ち主を探しだし、 原因と思われる人物に突き当たった。


幽霊は、驚くことに神官の家の娘……らしい。噂だけが独り歩きしている可能性があり、また、神官の関係者ということが情報に制限をかけているように思える。


決定には欠けるけど、貴重な情報をゲットし、すぐさま見つけたのはペンダント。


なんでも『婚約者に裏切られ、殺されて持参金だけ奪われ逃げられた。犯人は、いま行方不明の捜索中』らしい。保険金殺人ならぬ持参金殺人だ。


「……で、このペンダントを借りてきた訳ね」

「うん、そう」

「よく貸してくれたね。見も知らぬ他人に」

「知らないわけじゃないよ。この屋敷を購入したのは、殺された娘さんの父親の弟の息子の友達からだし」


いや、それ知人じゃないからね。


借りてきたのいいとして……「今から、あっちに戻るから」って、嬉しそうに言っている。


まあ、ペンダントなら小さいし、私も一緒に帰れると、胸を撫で下ろしていたけど、そう簡単にはいかなかった。


「悪いけど、こっちの世界でゆったりしててね。あっちに色々持ち込むから、ちょっと容量がない。それじゃ、そーゆーことで」


サラは、勢いよく手を上げると、笑顔で空間を開いて白い粒になって消えた。


私を見も知らぬ、街中に置き去りにして。






――――――――――


辺りは、異国の街並み。


ここまでは、乗り合い馬車で来たのだ。荷物のように、荷台に人がぎゅうぎゅうにつまっている状況で。


サラは、私を家に置いていくのが悪いと思ったのだろう。幽霊と二人きりにしない優しさは嬉しいけど、何か間違ってる。


街中に一人残された私は、どうすればいいのかわからないのだ。


周りは市場で、人の通りは激しい。結構、都会なのかもしれない。


私は、人の流れに逆らわず、店を見ながら歩き出した。


魔法が流行るだけあるのか、何やら不思議な店が多い。


男も女も、ローブのような上下が繋がったロングワンピースにも見える服を着ている。色は様々だけど、丈は男性の方が短く、みんな腰でヒモを縛っている。男はベルトのように、ぐるりと巻いているだけなのに対し、女性はリボンのようにしたり、ヒモにアクセサリーを付け華やかな印象になっている。


露店のような店が多く、食べ物を売る店をよく見かける。人が歩きながら、手に持って食べているので目につくのかもしれない。


行く宛もなく、ぶらぶらとしていて、目についたのは棒だ。


たまに道の角に立っている。あれは、何か意味があるのだろうけど検討もつかない。


建物は、木製が主流で見るからに壁が薄い。少し台風が心配になる作りだ。田舎のおばあちゃん家にある納屋、と言ったら聞こえが悪いけど近いものがある。話し声は筒抜け。


よく考えると、サラは二階建ての屋敷に住んでいた。


安いと言っても、家を買うほどのお金がある……。それぼど、王宮の役人は儲かるのだろうか?


疑問は尽きない。


神官という家の関係者と知り合い……だと言い切った。


この世界は、宗教に支配されているようなものだ。神官が王を決めると言うならば、彼等は国を支配する立場になる。


王は、神官よって選ばれ、また王宮に勤める彼女と神官は間接的関わりを持つ。


神官とは、どのような行動を普段しているのだろう?


考え事をしながら、に歩いていたせいか、私は知らない町の人通りの少ない路地へと足を踏み入れていた。

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