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素材集めも一苦労

 フェイリアは例の廃墟群を通過して、さらに奥へ向かった。すると、リナの言った通り、ガラクタが山のように積まれ、海のように広がっている。



「戦争で使われていた兵器の残骸なのかな……?」



 気になるが、今はそれらしいものを拾い上げるだけだ。リナは「人工筋肉の素材」と言っていたので、人間の腕や足と同じ形のものを探すのだが、フェイリアは震えあがるような気持ちだった。



「これ、本物じゃないよね??」



 中には人間の肌と変わらない質感の腕や足も落ちている。だが、腐っていないということは、人工的なものなのだろう。フェイリアはそう言い聞かせて、ひとつひとつ拾い上げて荷台に積み込んだ。



「よし、かなり集めたぞ」



 荷台には、山のように積まれた手足が。これ以上、増やしてしまったら、持ち帰ることができないだろう。きっと、リナも喜んでくれるはずだ。思わず笑みを浮かべながら、瓦礫の海に背を向けるフェイリアだったが、背後から金属片が落下するような音が聞こえた。



「なんだろう?」



 自分の他にも、素材を集めている人間がいるのだろうか。確認するが、人の気配がなかった。だとしたら、気のせいだったのだろう。そう思って再び荷台を引いて撤収するつもりだったが……。



「オオオッ……」


 声が聞こえた。もう一度、振り返って瓦礫の海を見渡すフェイリアだが、視界の中で何かが動いた。


「だ、誰!?」



 きっと、誰かがいるのだ。そう信じるフェイリアだが、瓦礫の一部が盛り上がったかと思うと、それが姿を現した。



「ヒト?? いや、違う……!!」



 最初は人間に見えた。確かに、二本の腕、二本の足がある。しかし、その人物は頭の端に小さな瘤(こぶ)がくっついていた。



「もしかして……先生が言っていた、モンスター!!」



 その奇妙な造形の生き物は、手にしていた杖を持ち上げる。身の丈ほどの大きな杖。その先端には嵌め込まれた宝玉が光を放つ。そして、その光が飛び出すようして、フェイリアに勢いよく向かってきた。球状のそれはボール球のようだが、激しい光を放つ限り、凄まじい熱が込められているように見える。



「ひやぁっ!!」



 悲鳴を上げながら、身を屈めたフェイリアの頭上に、その球体が通過したが、やはり背中に強い熱を感じた。もし、当たっていたら……と思うと、体が震え出しそうだ。



「でも、先生のために素材を持って帰らないと!!」



 それが仕事なのだから。そう決意して、荷台の持ち手を握ろうとするが、再び光の球体がフェイリアのすぐ脇を通過した。突っ立っていては、的になるだけだ。荷台の後ろに隠れるが、回り込まれるかもしれない。この状況を解決するには、あの得体のしれない敵に接近して、倒すしかないだろう。



「かと言って、近付くこともできないぞ。せめて、あの攻撃を防ぐ盾があれば!!」



 あの光の球体を受けても耐えられるような頑丈な盾。それがあれば、あの奇妙な生き物に近付いて、杖を取り上げることだってきるのに。フェイリアが強く盾の存在を頭の中でイメージした、そのときだった。



「ん?」



 すぐ傍で重たい音が聞こえた。振り返ると、荷台の下に盾が落ちているではないか。もしかしたら、荷台に積んだものが落ちたのかもしれない。すぐさまフェイリアは盾を拾い荷台から飛び出す。



「行くぞーーー!!」



 突っ込むフェイリアだが、敵は意思を持たないような動きで球体の光を放つ。



「うわあっ!!」



 凄まじい衝撃があったが、盾は確かに光を防いだ。行ける。フェイリアはこのまま突進するつもりだったが……。



「ああ、盾が!!」



 二発目の球体を防いだときの衝撃で、盾が手から離れてしまった。再び無防備になるフェイリア。荷台の後ろに隠れるには、距離がある。棒立ちになったフェイリアに、敵の杖が向けられた。



「先生が作る復元個体を見る前に死ぬなんて……」



 諦めかけたフェイリアだったが、救いの声を耳にした。



「伏せろ!」



 反射的に体を低くすると、すぐ傍らに何かが駆け抜けた。そして、小さな悲鳴。顔を上げると、例の敵が音を立てて崩れていた。誰かが駆け付けて、モンスターを倒してくれたのだ。



「大丈夫か?」



 落ち着いた足取りで近付き、声をかけてきた命の恩人の顔を確認するフェイリアだったが、彼は驚くことになる。いや、相手の方も驚いたようだった。恩人は呟く。



「また君か……」


「レオン、さん??」



 どういう偶然なのだろう。記憶を失って途方に暮れるフェイリアを助けてくれたレオンが、再び命を救ってくれたのだった。

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