表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり魔女と硬柔騎士様の幸福論  作者: 段数マーカー
12/33

===夏の日===  5

 料理名もさることながら、見た目も味も同じである。

 ばあやのレシピとアランの家に代々伝わるレシピ。これが同一であることは事実となった。

 秘伝のレシピを知っていたばあやの謎は深まるばかりだ。

 そしてアランは続けた。

『俺の家は代々騎士を輩出している家系だが、古の王の旅に同行した際にこのレシピを考案したと伝わっている。王の気に入りの食事だったと言われているんだ』

『料理もできる騎士なのね。素敵ね』

 言ったきり、心と同じようにほろほろになった干し肉の繊維を眺めていた。いつの間にか手が止まっていたところに、優しい声が掛けられた。

『まだ痛むか』

 耳心地のいい声は、すべてを包んでくれようだ。

 ばあやも優しい声で、柔らかい話し方であった。温かい日々が胸に蘇る。

『ううん、大丈夫』

 顔を上げると、アランは小さく、微笑んだ。

 本で覚えた言葉で言うと、知的で、寡黙。落ち着きがある反面、時に冷静沈着な横顔を見せる。

 そのアランが、微笑んだのだ。胸に風穴を開けるくらいの威力であった。


 笑みに促されるように、魔女は心を決めた。尋ねるなら今だと。

『アラン、突然なのだけど、苗字を聞いても?』

 一大決心を持って投げかけた問いも、アランにとっては頓狂な質問だった。

 アランは目を丸くしたが、それも一瞬。優しい声で言った。

『アルクスだ。アラン・アルクス』

 ばあやの姓もアルクスであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ