おててえほん
ばあやは おててを絵本にして 聞かせてくれます
タイトルは 花売りと王子様
ドロドロした感じが 結構好きです
昔々 あるところに 星の国がありました
星の国の王子は 花売りの娘に恋をしました
しかし王子には 決められたお相手がおりました
二人の恋は 密やかでした
やがて王子は 決められた相手と結婚することになりました
花売りの娘は 身籠っていることを打ち明けることができませんでした
それはそれは苦しい難産の末 赤子が誕生しました
赤子を腕に抱きますが 霞んでよく見えません
腕の力が だんだん抜けていきます
花売りの娘は己の命が尽きようとしていることを 知りました
その時です
黒い星が現れて 赤ん坊に 黒星の祝福を授けたのです
黒星は生まれながらの凶星
神をも恐れぬ力を有し
この世に災いと混沌をもたらすのです
粗末な小屋の中を 祝福の影が舞い踊ります
祝福が終れば 星が赤子を連れて行ってしまうのです
赤子の魂は 永遠の闇の中で 生涯を終えることになります
花売りの娘は 母親に願いました
「王子様の子です 必ずや世の役に立つことでしょう 祝福が終わってしまう前に この子を連れて 逃げてください 誰にも見つからぬ場所まで」
母親に赤子を託すと 細い腕はだらりと落ちました
母親は大粒の涙を憚ることなく流し 叫びました
「なんという運命のいたずらでしょう!」
花売りの娘は王家から託された庶子であり 母は育ての親だったのです。
我が子のように育てた娘の 最後の願いの通り 母は 赤子を抱いて 逃げました
何もかもを捨て 遠く遠く 地の果てへ
おしまい。
ばあやのおててが パタンと閉じます。
ばあやの創作は 何回聞いても 面白いです。