PISA2003 読解力向上プログラム
同じことは、16年前のPISA2003でも言われていた。
読解力向上プログラム 平成17年12月 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201/014/005.htm
”わが国の子どもたちの学力は、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」、「問題解決能力」の得点については、いずれも一位の国とは統計上の差がなかったが、その一方で、「読解力」の得点については、OECD平均程度まで低下している状況にあるなど、大きな課題が示された。”
”このように、わが国の子どもは、「テキストの解釈」「熟考・評価」とりわけ「自由記述(論述)」の問題を苦手としていることが明らかとなった。この結果は、PISA型「読解力」の課題が「読む力」にとどまらず、「書く力」や、特に「考える力」と関連していることを示唆している。”
16年前にスマホはない。twitterもLINEもない。
iPhone発売は2007年、Androidは2008年。日本ではそれぞれ2008年、2009年。
それまで、ネットには長文中心のホームページやブログはあったが、短文中心のtwitterは2006年、LINEは2011年。
それらがない時代から「低下している」なら、それらのせいという根拠のない論は破綻している。前提がおかしいのに、いくら論理っぽいものを語って無意味だ。
その2年後の2005年、文部科学省は「読解力向上プログラム」と題して、対策をはじめた。
”PISA調査は、読解の知識や技能を実生活の様々な面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としており、これは現行学習指導要領がねらいとしている「生きる力」「確かな学力」と同じ方向性にある。また、学習指導要領国語では、言語の教育としての立場を重視し、特に文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されており、これらはPISA型「読解力」と相通ずるものがある。”
ここでは「PISA型読解力」と「読解力」と呼んでいるが、ただの「読解力」もしくは「国際読解力」、と「日本型読解力」「昭和読解力」「ガラパゴス読解力」と呼びたい。「マンション」は本来「豪邸」を意味するのに、日本では兎小屋ですらないワンルーム等を意味し、「リストラクチャリング」が選択と集中による企業再生を意味するのに、なぜか日本では「クビ」を意味するみたいな話だ。
「文学的な文章」ではなく「実生活の課題で活用」「論理的に意見を述べる」「適切に表現する」「的確に読み取る」のが国際定義の読解力であり、文部科学省の(2003年時点の)現行学習指導要領である。(「読書」は長くなるので別話にする)
そして、「実生活」が既にコンピュータやネットなしでは成り立たないほど変化している以上、PISA2019では、実生活でblogを読むことを想定した「課題」が出たのではないか。
にもかかわらず、それを認識していない新聞などの大手メディア、エライ教授先生、そして、学習指導要領でなく、そういった教授の書いた教員用の参考書を頼りにする教師、それを真に受ける、または自分が学んだ時代の意識のままの親などが「文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め」ずにいるのが、国際読解力が低下した原因ではないかと思う。
前話で”ところで、おっさんが学んだ昭和時代の国語は、小説・情緒的表現を偏重するきらいがあった。”と書いた。主観なので断言しなかったが、薄々感じていたことは、今回、文部科学省の資料で裏付けられた。既に学習指導要領も変わっているらしい。
読解力向上プログラム 平成17年12月 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201/014/005.htm
” 平成15年(2003年)7月にOECD(経済協力開発機構)が実施したPISA調査(生徒の学習到達度調査)の結果が、昨年12月に公表された。それによれば、わが国の子どもたちの学力は、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」、「問題解決能力」の得点については、いずれも一位の国とは統計上の差がなかったが、その一方で、「読解力」の得点については、OECD平均程度まで低下している状況にあるなど、大きな課題が示された。
PISA調査は、読解の知識や技能を実生活の様々な面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としており、これは現行学習指導要領がねらいとしている「生きる力」「確かな学力」と同じ方向性にある。また、学習指導要領国語では、言語の教育としての立場を重視し、特に文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されており、これらはPISA型「読解力」と相通ずるものがある。
調査の結果を踏まえ、国際的に質の高い学力を目指すため、学習指導要領の見直し、全国学力調査の実施の検討、授業改善の徹底などの「学力向上の具体的戦略」を進めてきた。
1.PISA型「読解力」の定義・特徴等
PISA型「読解力」は、次のように定義されている。
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力
PISA型「読解力」では、義務教育終了段階にある生徒が、文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み、これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて、組み立て、展開し、意味を理解することをどの程度行えるかについて、可能な限り客観的にみることをねらいとしている。
このため、PISA型「読解力」の問題では、行為のプロセスとして、テキストの中の事実を切り取り、言語化・図式化する「情報の取り出し」だけではなく、書かれた情報から推論・比較して意味を理解する「テキストの解釈」、書かれた情報を自らの知識や経験に位置づけて理解・評価(批判・仮定)する「熟考・評価」の3つの観点を設定している。また、出題形式では、自由記述が約4割を占めている。
すなわち、「読解力」とは、文章や資料から「情報を取り出す」ことに加えて、「解釈」「熟考・評価」「論述」することを含むものであり、以下のような特徴を有していると言える。
1 テキストに書かれた「情報の取り出し」だけはなく、「理解・評価」(解釈・熟考)も含んでいること。
2 テキストを単に「読む」だけではなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。
3 テキストの「内容」だけではなく、構造・形式や表現法も、評価すべき対象となること。
4 テキストには、文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく、図、グラフ、表などの「非連続型テキスト」を含んでいること。
なお、PISA調査の「読解力」とは、「Reading Literacy」の訳であるが、わが国の国語教育等で従来用いられてきた「読解」ないしは「読解力」という語の意味するところとは大きく異なるので、本プログラムでは単に「読解力」とはせずに、あえてPISA型「読解力」と表記することとした。
その結果、今回のPISA調査(2003年)及び前回調査(2000年)の結果について正答率や無答率を基にして分析すると、得点の経年比較で中位層の生徒が下位層にシフトするなど全般的に課題はあるが、特に、読解のプロセスにおいては「テキストの解釈」「熟考・評価」に、出題形式においては「自由記述(論述)」に課題があることがわかった。
具体的に言えば、正答率がOECD平均より5パーセント以上低い問題数の割合を読解のプロセス別に見た場合、以下のグラフのように、「解釈」「熟考・評価」で課題が多いことがわかる。
熟考・評価:テキストに書かれていることと知識・考え方・経験等との結び付けが必要な問題
解釈:書かれた情報がどのような意味を持つかの理解・推論が必要な問題
情報の取り出し:テキストに書かれている情報を正確に取り出すことが必要な問題
また、無答率がOECD平均より5パーセント以上高い問題数の割合を出題形式別に見た場合、以下のグラフのように、選択式に比べて、自由記述(論述)の問題で課題が多いことがわかる。
自由記述:答えを導いた考え方や求め方、理由説明など、長めの語句で答える問題
求答:答えが問題のある部分に含まれており、短い語句で又は数値で答える問題
短答:短い語句又は数値で答える問題
このように、わが国の子どもは、「テキストの解釈」「熟考・評価」とりわけ「自由記述(論述)」の問題を苦手としていることが明らかとなった。この結果は、PISA型「読解力」の課題が「読む力」にとどまらず、「書く力」や、特に「考える力」と関連していることを示唆している。
したがって、(略)「考える力」を中核として、「読む力」「書く力」を総合的に高めていくことが重要である。また、前回のPISA調査(2000年)において、読書習慣がある子どもほどPISA型「読解力」の得点が高い傾向にあることが明らかになっており、読書活動等を通じて言語についての知識や経験を深めることにより、子どもたちのPISA型「読解力」を支える基礎力を育成することも重要である。”
次は「読書」か「読解力が高い国の研究」か