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俺の『特別』の考え方

短い……。




 俺は、何も言えなかった。俺の頭の中に渦巻くのは、最悪な予想だけ。


「エド?」

「……なにか……ミスった……」

「え?」

「ゴドーを神化させる時に手順、なにかミスったのかも……。だって、あり得ない。それってつまり、人格が別れ始めてるって事だろ? 感情の整理が追いつかないんじゃ無くて。俺はただ、ゴドーになった時には、負の感情が強くなって、それが嫌だからって……、そう思ってたんだ。だって、いくら破壊神だからって、ゴドーのそれは俺と同じなんだ。世界の破壊、そして再生なんだ。全てを壊し尽くのみじゃない。創世神()を殺す者だからゴドーは破壊神って名前になってるだけで、本来ならシエノラ・ノ・ゴドーは、ヒノワやツキヨ達と同じように創造神なんだ……。ゴドーはあくまでそちらに特化してるだけで…………」

「まぁ、そうだな」

「……俺が……、ゴドーにその力を特化させたせい? だから……」


 人格が別れ始めてる? 俺が……シエノラ・ノ・ゴドーの人格を壊した……?


「エド!? おい! 大丈夫か?」


 慌てたようにゴドーは言うが俺は頷く。


「大丈夫……。大丈夫だ」

「全然大丈夫には見えない」


 そう告げてゴドーは俺を抱き寄せて強く抱きしめる。

 さっきまでの興奮状態はなくて、もし、自分に心臓があったら不安で押しつぶされそうだっただろう。

 そんな俺に、ゴドーは触れるだけのキスをしてくる。


「酷い顔している。血なんてないのに、真っ青だ」

「ああ……不思議、だよね、それ……」


 そうか、俺は今、そういう顔をしてるんだな。分からなくもないが。

 ゴドーは俺の頭と背を撫でる。


「喩え、別れたとしても、君は私達の事を愛してくれるか?」

「当たり前だろ、そんなの」


 即座にそう答えて、ゴドーに体を預ける。


「俺はただ……、もとの性格が男だったから……、だから……、ゴドーに、引導を渡して貰いたかっただけなんだ。シエノラは女だし、だから、もし、君に滅ぼされる事があるのなら、ゴドーが良いって……」

「私は特別か?」


 その言葉に俺は首を横に振りかけて、半端な所で止まった。

 性別でそんな区別はしていない、と否定するのは簡単だけど、否定していいのかが分からなかった。

 実際に俺はシエノラには殺生権を渡していない。俺を滅ぼす事が出来るのはゴドーのみ。

 特別と言えば、特別だ。でも逆にシエノラには血なまぐさいことはさせたくないという風にも受け取れると思えた。

 俺は、間違いなく性別によって、シエノラ・ノ・ゴドーの扱いを変えている。

 それは、される側によってどう感じる事なのだろう。

 どちらも自分なのに。そう思ってしまうのかも知れないと、ようやく、そんな事に思い至った。


「…………特別と言えば特別だけど……、でも、たぶん、それで言えば、シエノラの事もゴドーとは違う特別の扱い方をしてる」

「……」


 ゴドーはなにかを言いかけて、口を閉ざした。

 

「でも、それは、ゴドーが何を司ってるとかじゃなくて、男か、女かの差だ」


 どんな顔をするだろうか、と思うと少し不安になりながらゴドーを見る。


「俺にとって女の子は守るべき存在で、男は一緒にバカやるような存在っていうか……」

「バカ……」

「う、いや、その違うよ!? なんていうか、一緒に遊ぶっていうか、ほら、元々俺、男は恋愛対象に無かったって言うか」


 焦って自分で口走った言葉に、尚更慌てた。ゴドーはそれを知っているけど、今改めて言うのはマイナスじゃね? っと。


「だからゴドーはそれだけ特別って事で!」


 慌てて『特別』という言葉を強く伝える。でも、それってシエノラは? ってなるんじゃね? と、また焦る。


「もちろんシエノラも特別だよ!?」

「ああ、うん。分かってるから落ち着け」


 ……ゴドーに今そんな風に言われると、どんだけ焦って見えるんだろうって思うな。

 ……まぁ、否定出来ないか。


「……本音……っていうかさ、バカみたいな考え方だけどさ、俺、シエノラは凄く独占したいんだ。誰にも見せたくなくて、誰にも触らせたくない、そんな気持ちになる。俺だけを見て、って。シエノラの世界には俺だけが居れば良い、みたいな気持ち。まぁ、実際の所、そう感じるのは男共に見られたくないだけ、なんだけどさ。ライバルを増やしたくないっていうのと、シエノラを邪な目で見るんじゃねぇ! っていう気持ちになる。シエノラに恋愛感情持つ奴らはムカつくし、オカズにしてるような奴らはぶち殺したくなるし」

「……私に対しては?」

「ゴドーは顔がかっこいいから、女の人が熱を上げるのも分かるんだよな」

「そう……なのか?」

「うん、まぁ……。…………でもさ、それって、別にゴドーに対して独占欲が無いっていうわけじゃないんだよな」

「そうか?」


 どこがだ? っていう感じでゴドーが否定的な音で聞き返すのに対し俺は頷く。


「前に、シムに体を持たせるかっていう話を、シムにした事があったんだ」

「へぇ……。まぁ、有ってもおかしくはないか」

「うん。で、そん時に言われた。シエノラと肉体関係持つのは許せても、ゴドーと肉体関係を持つのは許さないでしょう、と」

「……そうなのか?」


 困惑したような声。さっき言ってる事と違わないか、と。


「俺にとってシムは女のイメージなんだ。だからシエノラとシムがイチャイチャしてても、恋愛というよりも、友情の延長戦に思えるんだよね。それこそ最後までやったとしても」

「……はぁ?」


 戸惑ってる声。


「でも、ゴドーがシムを抱いたら俺はきっとまごうことなく、嫉妬する」

「何故?」

「男女だから」

「は?」

「女同士だったら許せても、男女だったら許せないんだ。日本人だった頃の恋愛感を今も引きずっていると思ってくれて良い」

「……シムは君の分身みたいなものだろ?」

「違うよ。それこそシムと俺は別人格だ。シムは俺の記憶を読めても、俺はシムの記憶を読めない。だから、シムは俺に近いけど、俺じゃないになるんだ。だから、ゴドーが俺の分身のつもりでシムに手を出したら、俺は嫉妬する。焼き餅を焼く、荒れる」

「……シエノラだったら構わないのにか?」

「うん」

「えーっと……」

「シムが男として体を持ったら逆になるけどね」

「……エド、すまない。よく分からない」

「うん。だと思う。ただ、俺にとって、人格もそうだけど、性別によって、そういう違いがあるって事を理解してくれればそれでいい。さっきの話に戻るけど、ヒューモ族にとって恋愛に性別は関係ないけど、俺にはある。ついでにいうと、俺は『男は狼』もしくは『ケダモノ』だと思ってる」

「はぁ?」

「シエノラを守りたいって思うのはそういう所。アホな男が無理矢理シエノラに迫らないかっていう不安がある」

「……私は?」

「俺にとって、女子は、イケメンにキャーキャー言ってるだけで、実力行使には出ないっていう認識」


 ゴドーは無言で、口を閉ざし続けている。どちらかというと、困惑から呆れになった気がする。


「もちろん、これは、俺の偏見なんだと思うよ」


 そう一言告げてそれからゴドーを抱きしめる。


「ゴドーも特別。シエノラも特別。特別同士だから、ゴドーだけが特別じゃない」


 ゴドーの手が俺の頭を撫でる。気持ちいい。


「愛しているよ。だから、お互いに嫉妬しないでくれ。君が君を傷つけるのは嫌だ」


 懇願するとゴドーは弱ったような笑みを見せて、俺にキスをしてくる。額、目尻、唇。


「すまない。約束は出来ない」

「……どうしても?」

「ああ、あの世界に戻るとどうしても、私の感情は荒れてしまう……」

「そっか……分かった」


 こまめにこっちの世界に戻ってシエノラ・ノ・ゴドーの精神を安定させた方がいいかな。


 なんて考えていると、頭を撫でていたゴドーの手が下に降りてきて、肌を撫で始める。そして、唇が塞がれて、俺の舌を吸い始める。

 ちろっとゴドーの目を見ると、その気になってるのが分かった。

 そんな目をされると、こちらとしても落ち着かない。冷めた興奮が戻ってくる。

 考えるのは後回しにし、まずは愛しの奥様の要望に応えるとしよう。








エドの考え方の表現をどうすればいいのか、としばし悩みました。


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