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夫婦の気持ち

短いです。

糖度があるようであんまりないような気も。いや、やっぱりあるのだろうか……。



 ついにやってきました!

 待ちに待った夫婦の時間!

 みんなで飯食って、子供風呂に入れて、家に帰ってから、子供達を寝かしつけ、一緒にお風呂入らない~? なんて奥さんに声をかけてきたら、あっさり首を横に振られた。

 あげく、私はこれでいいと魔法であっさりと済ましてしまう。

 まあ確かにそれは綺麗だけどね。


「夫婦でイチャイチャしませんか? っていうお誘いなんですけど」

「お風呂でゆっくりするのなら、一人で入った方がいいだろ? 行ってきたらどうだ?」

「俺は最初からイチャイチャしませんかって言ってるじゃん」


 俺が求めてるのはリラックスではなく、スキンシップです。

 答えて頬杖をつきながら目の前に座るシエノラを見た。


「機嫌悪い?」

「私が? 何故?」

「そういう風に見えたから」


 そう答えるとシエノラは俺を見て、それから一つ尋ねる。


「慈愛の女神と言われる私の機嫌を損ねるだけのなにかを君はしたのか?」


 その言い方はずるくないか?


「したつもりはないけど、でも、機嫌悪いだろ?」

「気のせいじゃないか?」


 気のせい……ねぇ。

 俺は心の中で反復し、そして、シエノラの横に転移する。


「気が向けば、ゴドーになるっていう話だったけど?」

「気が向けば今頃なってるんじゃないか?」


 やっぱ、機嫌悪いじゃん!!


 心の中では大声でそう返したが、口には一音も出さずシエノラの髪に触れる。

 シエノラはなにも言わない。

 触れるだけじゃなくて、一房取って編み始めても何も言わない。

 

「……前より、悪化してない?」


 顔はシエノラの髪に向けつつ言葉にする。シエノラは目を軽くこちらへと向けたようだがそれ以上の反応を見せなかった。

 俺の顔がこちらを向いていないても見られている可能性は重々承知しているからだろう。


「それこそ気のせいじゃないか?」

「いや、それはないでしょ」


 きっぱりと否定する。そして唇を弧の形にする。


「もしかして、シエノラは俺の事バカにしてる?」

「は?」

「俺のシエノラ・ノ・ゴドーに対する愛情を軽く見てない?」


 戸惑いの顔をこちらを向けるシエノラに、俺は笑って、編み込んだ髪を唇に持ってくる。

 髪へのキスなんて、どんだけ気障なんだって感じだけどだ。頭のてっぺんから足の爪先まで、キスしても俺は全然苦にならないし。愛しいとしか思わない。


「なにかあった?」

「……何も」

「じゃあ、ゴドーに変わってくれ」


 何も無いのなら出来るでしょ? とばかりに俺は言葉を重ねるが、シエノラはまた顔を前に戻した。


「なりたくない。男になると気持ち悪い」

「……気持ち悪いって……。そこまで嫌う必要ないだろ?」

「気持ち悪いのは気持ち悪いんだ。エドは私じゃないのだからそれが分からないだけだ」

「……まぁ、そう言われると分からないですけどね?」


 それは卑怯じゃない? と言いたいが押し黙る。

 文言変えてきたなぁ……。

 嫌いならともかく気持ち悪いと言われると、それを押してまでなれ、とは言いにくい……。

 

「シエノラ・ノ・ゴドーがどれだけ、ゴドーの事を嫌ってても、俺は好きだよ。大好きだよ? 愛してるよ? 俺を傷つけるかもしれないって事に臆病にならないで欲しいな」

「……エドは何も分かってない」


 慈愛の神から零れるには低い、怒気すら混じった声。

 俺は軽く肩を竦めるしかない。


「そうだね、それは確かに、君にしか分からない。でも、それで言ったら、君も俺の気持ちを分かってないと思うよ?」

「……分かってる」

「それはどっちの意味で分かってるって事?」

「…………」


 シエノラは答えない。無言で俯いていた。俺はシエノラの言葉を待つ。

 そして彼女は結論を出した。


「子供達と寝る」


 逃げの一手に。

 転移して、俺の前から逃げる。

 俺はため息を零して前髪をかきあげた。


 シム、なんか知ってる?

『マスターが欲しがるような答えはなにも。私はシエノラ様から許可があった部分の記憶しか読み取れません』

 なんであそこまで頑なになってるのかちょっとくらい分からない?

『残念ながら。マスターは私の方へ気持ちをだだもれにしてますが、シエノラ様は……』

 ああ、完全にブロックしてるってわけか。

『完全にではありませんが、出しても良いものしか出していない気がします。私では神が望まぬ心までは読み取れません』

 まぁ……そうだよな……。

 はぁ……。なんであそこまで頑なになるかなぁ。俺が良いって言ってるのに。

『ゴドー様はとてもマスターを大切にしていました。喩えマスターが許可していたとしても、貴方を傷つける事も、殺す事も嫌がるでしょう』


 シムの言葉に俺は口元に笑みを浮かべる。

 ゴドーは俺が神に押し上げた。だからその影響でいくつか、俺が決めた事がある。

 喩え俺の方が神の力が上でも、シエノラ・ノ・ゴドーは俺を殺す事が、滅ぼす事が出来る。

 その力の多くがゴドーの方に偏っている。だから、嫌がる。


 俺は机に頬杖をつき、やっぱり口元に笑みを浮かべた。

 ちょっとばっかり黒い笑みかもしれない。

 だって、嫌がるって分かってても、止められないのだ。


 奥さんが望むのなら、俺は喜んでマゾにでもなるのになぁ。

『…………そうですね』

 その辺絶対分かってないよなぁ。

『なんと申しますか、ゴドー様は神になった事により、ヒューモ族の特性から引き離されつつありますが、マスターはよりどっぷりその特性に浸かってる感じですよね』

 そうだなぁ。そうかもなぁ。でもなぁ、シム、たぶんそれ、違うぞ。

『と、申しますと?』

 シエノラは慈愛の神だ。だから、そう見える。でもゴドーは違う。

『ヒューモ族としての特性を全てゴドー様が引き受けてしまった、と?』

 たぶんな。そして、それが、嫌なんだろうな。

 

「ああ、もうホント可愛いよなぁ」


 その言葉はきちんと口にする。

 だって、それだけ俺の事が好きだって事だ。それだけ俺の事が愛しいって事だ。

 自分の感情が制御不能になるって分かってるから、変われない。


 口元にどうしても笑みが浮かんでしまう。いや、むしろにやけるが近いか。

 だから俺はその気持ちのまま言葉を送る。シエノラに。

 愛してる。好きだ。可愛い。

 思いつくまま、伝言スキルのようにシエノラに言葉を送り続ける。

 何度言葉が重複しようとも愛しているのだから、愛していると口にするしかない。

 そう思って何度目か分からない愛の告白をしていると俺の後ろにシエノラが立った。

 俺は頭を傾げて後ろに立つシエノラを見た。

 シエノラは少し、物言いたげにしてたが、俺の額に唇を落とす。


「……シエノラ()で、我慢しろ」

「なにそれ、その言葉おかしくない? 俺はゴドーでもシエノラでも、同じように愛してますよ? ただゴドーには中々逢えないから希少価値が上がってるだけで。前にも言ったけど、逆だったら逆で俺はシエノラに逢わせろって言ってるからね?」

「……ああ、分かってるよ」


 ちょっと困った様に笑って、今度は唇にキスを落としてくる。

 分かってないような気もするけど、これ以上言っても無意味に追い詰めるだけな気がして、それ以上は言わず、シエノラを抱きしめる事にした。


 

 




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