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どうせなら、新生の方が良かったですと密かに嘆くもの。

スッゴク短いです。ごめんなさい。木曜日分。

そしてタイトル。

浮かばなかったんだ……。

 




「娘が居るのか、あいつ」

「実子? 養子?」

「実子ですね」


 ルベルトはエドと違い、貴族に答える平民という様を崩すことなく答える。

 答えた後、ルベルトはふと、エドの年齢が幾つの設定なのか聞いていない事を思い出した。

 エドがそのまま生きているという扱いなら最近やっと七歳になったばかりだ。

 そして、娘達は六歳と言う。

 この辺はどうなっているのだ? と、ルベルトは密かに考える。

 学園に入るにあたり、その辺の辻褄合わせは大丈夫だろうと思っていたのだが、先ほどの事を思い出すと頭からすっぽり抜け落ちている可能性もある。

 ルベルトにはこういう時、エドという人物像が分からなくなる。


 もちろん、ルベルトが調べた時のエドであったのならばその当たりはきちんと調整していただろう。しかし、今回はその手のことが一切されていない。エドにそれを突っ込むべき人物、いや、人格のシムがいなかったからだ。

 復活させるタイミングが遅かったとしか言いようがなかった。

 シムが申し込みする時点で復活していれば、エドの方のデータをいじって名前と顔すら変えさせていただろう。

 かなり後手に回っているとシムとしては無い頭が痛いところだ。


 学校の情報は、妻の連れ子という扱いになっている。なぜなら申し込みの書類には『短命種』と記されて実年齢が書かれていたからだ。

 まさか、実の娘だとは思っておらず、間違いだろうと学校側が気を効かせた。

 日本ならデータ改ざんなどと言われるかもしれないが、この世界にはまだその概念がない。

 学校側の書類を改ざんをしようにも、国王やら王子やらがエド自身の事を知っているので、改ざんした所で「おかしい」とバレてしまう。


 それに、シエノラの事に関しても困ったことはある。

 シエノラは、神の御技の結果、出来た性別で、数ヶ月前まで、ゴドーという男性であった事が、神殿での情報としてきちんと登録されている。こちらの改ざんはそれこそ、こちらの世界の神の許可が必要だ。

 つまり、学園が、神殿に母親について問い合わせをしたら、娘達が妻側の実子として、生まれるはずがない。という結論が出されるのである。


 辻褄合わせをしようとすれば、間違いなくこの世界の神の協力が必要だ。

 しかも、借りになるくらいの。

 それを勝手にシムがするわけにも行かず、ならばと、もともと勉強もかねて手伝いをするつもりだったシエノラの手伝いをし、もし向こうの神がシエノラに手伝いのお礼に何かないかと言ってきたら、この辻褄合わせに協力してもらおうと思っていた。

 なのに、そんな事を知らないエドがさらに仕事を振ってきた。

 世界の調整である。

 スキルの農園とは違う、本物の世界の調整など、スキルでしかないシムからすれば、かなりの労力だ。

 これでパラレルワールドを作ろうとか言い出したら、ストライキを起こしてもおかしくない程だ。


 再生ではなく、新生として創ってくれたら良かったのにとシムとしては思ってしまう。それだと、シムの性格が変わってしまう可能性がある事をエドは危惧したのだろう。

 だがおかげで創世神の代わりをするには、処理能力が足りない。システムだけではなく、処理速度向上も復活してもらおう。そうでなければ再度作り直してもらうしかない。

 そう考えながらも、昨日突如渡された仕事を片付けているところなのだ。

 信頼の証とはいえ、辛い。キツイ。と、シムが言わないのはスキル故だろう。

 最悪は記憶の改ざんか。

 シムはそんな事を思いながら世界の運営とシエノラの手伝いをしているのである。


 そんな状態なので、シムとしてはルベルトの実子発言ですら厳しいものだったが、ルベルトが空気を読んでそれ以上の情報を出さなかったのは、僥倖とすら思えた。


「羨ましい……。やはり神の貴石を使って求婚を……」


 恋する男ラーヴはそう呟いて、頬を染めた。

 彼の頭の中では、意中の女性に大粒の神の貴石を差し出して、求婚し、女性が頬を染めて、神の貴石を受け取り頷いている、そして結婚式を。等というラブストーリーが展開されていた。

 もちろん周りはそんな事を知らないから話は進む。


「神の貴石を使った求婚かは分かりませんが、相当ベタ惚れなので持っている可能性は高いと思いますよ」


 求婚に使うというのなら、むしろ彼はその上位とも言えるプラネタリウムを使ったのではないだろうか、と内心思うが口にはしない。

 あれもそのうち神は、『神のお気に入り』として認めるのだろうか。と考えるが、それで言えばそもそも、エドが作るのはわりとなんでも破格な性能をしている。という事に思い当たり、今までの基準でやれば、「あれもこれも」とお気に入りが増える一方だ。そうなればエド周りはかなり煩いことになるだろう。それを踏まえれば、しないかもしれないな。と思い直す。


「なるほど。彼のハーレムに入れば神の貴石が貰い放題という事か。素晴らしい。すぐ彼の物になろう」

「あのな! お前が平民のハーレムに入ってどうする! やるのであれば、お前がハーレム主だろ!?」

三星(さんせい)貴族の三男なんぞ、神に認められた男に比べたら、奴隷のようなものだろ」

「っんなわけないだろ! なんでお前はそう『神』が関わると途端に駄目なやつになるかな!」


 バラッドは苛立ち、リームは我関せずで手の平の上の神の貴石を指で撫でて愛でている。


「駄目になるとは失礼な。神への愛に心を振るわせているだけだというのに。ああ、やはり素敵だ。素晴らしい。うへへ」


 キリっとした顔でバラッドに返し、そして、デレっとした顔を神の貴石に見せる。

 中々に面白いとルベルトはリームを見つめていると視線に気づいたのか、リームが顔を向けて、同じように見つめてくる。

 しばし無言で見つめ合った二人だが、先にリームが動いた。

 結界を回り込みルベルトの隣に立つとその手を両手で捕まえた。

 そのまま見つめ合う。

 しかし先にルベルトが苦笑を交えて首を傾げると、リームは頷いた。


「何も感じない。やはりエドが特別という事」

「そうですか?」

「神に認められたとなれば、ルベルト上皇も同じであると思ったのだが……不思議である」


 リームはぽつりと呟いて握っていた手を離す。

 出てきた言葉にルベルトはなにかの反応を見せるようなへまはしなかった。


「エドの手はそんなに特別だったんですか?」


 聞こえなかったふりをし、話を別のものにする。


「ああ。彼の手は、神官の手よりも、神を感じられた。ああ、もう一度握りしめられないだろうか」


 手を組み、熱に浮かされたように言うリームにルベルトは気づいた。

 まさか、と思いつつ確認する。


「リーム様。もし、神に貴方の愛が一片の狂いも無く伝わる手段としてその命を捧げよと言われたら、貴方はどうします?」

「それはなんとも素晴らしい! 喜んで捧げよう!!」


 キラキラと喜びに目を輝かせてリームはそう告げた。

 その表情を見てルベルトは確信する。


 第一欲求か。……面倒な事にならなければ良いが……。


 



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