新キャラ登場?
げ、月曜日分って事で…。
翌日の学校。これからの俺の立場が決まるであろう実力テストの時間。
あ、この世界の学校って授業は午前中に二時間。午後に二時間の週三日らしい。
少な! って思ったけど、子供の時間が長いから初等部はゆっくりのんびり教えていく感じらしい。あと、家族との時間も大事だろうと。
で、高等部はというと、『実戦』を経験してもらうためのようだ。領地経営なんてもんは学校では基本的なものしか教えないってことなのだろし、戦う事にしても、実際に所属する軍での連係プレーなどもあるしと。
でもそこまでくるとなんで高等部作ったし。と呟きたくなる。
「暇だからだろうな」
俺の呟きにルベルトはそう答えた。
「はぁ?」と聞き返した俺は悪くないと思う。
「平民であれば成人すれば独り立ちする事になる。でも貴族の跡継ぎはそういうわけには行かない。それにスキルを授かったばかりの時期だ。得たばかりの力を使いたくて仕方がない者だって多いだろう。だから仕事を教えつつ、友人と遊ぶ場を作るわけだ」
「ふーん。夜会とかダンスパーティーを連日やるとかそういう選択はないんだ?」
前世の貴族のイメージでそんな事を尋ねる。
「やりたければやってもいいんじゃないか? その金は主催者が自力で集めなくてはならないだろうがな」
そんな事に税金を使う事は許さない。というのがヒシヒシと伝わってくる。
まあ、そんな事に金を湯水のごとく使われたらたまったもんじゃないっていう人達が決起するに決まってるか。民衆は金さえ有れば誰だって騎士団並の実力を得るわけだし。
……そう思えばこの世界の貴族は、貴族だからって頭ごなしで全てを命令出来るというわけではないのか。口答えした。縛り首。……なんてやった日には、遺族からの復讐に怯えなくてはならないかもしれない。
一族郎党皆殺しなんて、ルベルトのスキルとステータスがあれば出来る事だよな……。
ぼんやりとそんな事を思いながら俺は実力テストを眺める。1、2組合同で行われ、二体の人形を物理と魔法でそれぞれ倒すというような感じの内容。ちなみにテストの順番は、身分の低い順。つまり 初代国王と神でした。
思わず、ちょっと笑ったけどね。
隠してあるわけだから仕方が無いけど、内心笑っちゃうのは仕方が無いと思うんだ。教室の席順にしたってさ、なんだってさ。それを口にしなきゃ分からないのに「最初は特待生から順に、最後は王族の方々に挑戦して貰います」なんて言っちゃうとねぇ?
先陣はルベルトがしてくれた。
俺のために、平均的なスキルの使い方を見せてくれたのだろう。
俺はそれをまねてスキルを使った。呪文?
うん。唱えたよ。それらしいく、小声で、まるで集中してるように、こんな内容のやつを。
「中級水魔法ねぇ、よくよく考えたら俺、水系ってだいたい生活魔法ばっかりだったなぁ……」
なんて事をずっとぶつぶつ言ってました。何故って?
水の精霊よ。なんて呼びかけたらウチの世界の子達が来ちゃうからっす!
初めは『雨雨降れ降れ』って歌詞を口ずさもうかと思ったけど、あ、これ、マジで雨降らすかもって思って急遽変えたんだよ。
神なんで。こう見えても神なんで!
で、ルベルトがやってくれたようにまず手を突き出して、エセ呪文と共に、魔力をそれらしく高めていって。って、すっげー手間でした!
おかげで二体目の物理アタックはすがすがしいほど、八つ当たりさせてもらったけど。
たぶんそのおかげで、変な風に目立ってはいない。
貴族の子息令嬢は俺達よりも見た目が派手なの使ってたりするし。
え? ここは加減を間違って、「まじか!? こいつ!?」ってされるのがテンプレだって?
出来るかぁ!
規格外だなんだと昨日散々言われたのに!!
でも、テストが終わって思った事は一つ。
あれ? ちょっとは規格外だって事を見せるべきだったんじゃないかなって? って、ちょっと心配になったのは、実力テストを終えてランチの時間になった時。
なんかすでに、近しい身分のメンバーで固まっている?
特待生=平民って扱いだからか、こちらに声をかけようっていう感じの人がいない気がする。
このままだと俺の第一目標が達成されないのでは? と、一瞬考えたが、待てよ。と考え直した。
確かにエドの時はボッチだったが、日本人だった時は違うぞ。友達はきちんと居た。俺はやれる子なのです。
ってなわけで、クラスメートが座ってる席で、空いてる場所は~っと。
「なぁ、ルベっち、あっちのメンバーと一緒に飯食っても良い?」
「好きにしろ。吾はお前のお守りだ」
「……知ってたけど面と向かって言われると微妙な気分になるなぁ……」
そう口にしつつも、俺は目を付けたグループへと向かう。
「なぁ、こっち座って良い?」
俺は笑顔で、声をかけました。
しかし彼らは互いに顔を見合わせ、そして一人が立ち上がると、他のメンバーは顔をこちらに向けることすらしなくなった。
「見て分からないのか? ここはお前達とは違い、貴族が座っている。特待生がこの場所を使うなとは言わないが、我々に迷惑をかけないようにしてもらおうか」
俺は笑顔を崩さず、あっそ。と一声呟いて、そこから離れる。
「頼むから、呪いをかけるのなら個人宛てにしてくれ」
「お前の中で俺がどういうキャラなのか今一度問いただしたい所だな、おい」
席を離れながら俺達はそんな話をし、そしてざっと周りを見渡す。
そして、ほとんどの人間がさっきのやつらと同じであると気づいた。
俺達と仲良くする気は無いという空気というよりも思念を感じる。
これはため息をついてもたぶん許されるよな。
グループ全体で俺達を受け入れようとしている者は少ない。
グループの中に一人居れば良いくらいか。
流石、馬鹿を量産してるだけある。と俺が思ったところで、一人の生徒が手を上げた。
「特待生、こっちに来い」
言い方はアレだが、彼は俺達に対し、友好の思念を示していた。
周りは驚いているようだが、何も言わない。
それとも、周りの人間は俺達を嬲ろうという考えなのか。
まあどっちにしても、俺とルベルトなら問題はないか、と呼ばれるままそこに近づく。
「空いている。座れ」
「どうも」
そっけない言い方だが、俺は素直に礼を言って隣の席に座る。ルベルトも俺の向かいに座った。
彼はこちらを見て、告げる。
「あれらの事は気にするな。我らは神の前では等しく、平等。同等。貴族も平民も人間が作った愚かな身分。神の前ではあのような振る舞いは許されない」
「……ああ、うん」
戸惑いながらも俺は頷く。
なんで『神』を引き合いにした?
戸惑いながらちらりと周りを見ると周りはまたかという顔をしていた。
「私はリーム。神を崇拝する者だ」
「…………はあ……」
えっと、もしかして俺、バレてる? とルベルトを見るとルベルトも戸惑いながらその少年、リームを見ていた。
「特待生の二人に問いたい」
「は、はい?」
「君たちはあの第二神殿予定地に建てられた城に住む者達か?」
「「……」」
別に、隠してるわけではないけど。あえてそれを聞かれるとなんとなく警戒してしまう。
一瞬俺とルベルトは目を合わせ、そしてルベルトが頷いた。
「そうだ」
「そうか」
リームは頷いて、そして何故か俺の手を取った。両手で。
「特待生エド。君は、神の貴石の製作者か?」
「……え?」
どこかクールというかそっけないと思えたリームの表情というか、目が、なんだか妙な輝きを示し始めた。
確かに、本物を鑑定すれば製作者の名前は出るだろうが……。
「君はエドという名前なのだろう? 君はその功績を認められた。そしてあの城を神から賜ったのではないか?」
目をランランと輝かせリームが問い詰めてくる。
顔が近い。まじに近い。
俺はあいている左手でリームの肩を押さえる。
むしろその顔を捕まえて押しのけたいくらい近い!
「もしそうなら売ってくれないか? 取り扱っている店を探し出した時にはすでに遅く。予約で埋まってしまっていた。買えなかった。神が認めしあの素晴らしき宝石を!!」
「近い近い近い近い!」
グググっと寄ってくるリームを手で押さえる。
「金は払う。私に出来ることならなんでもする。一夜を共にしろというのなら喜んで身を差し出す」
「いらねーーーーーーーーーよ!!」
そんなん差し出されるのなら無料で渡す方が遙かにマシだ!
しかしリームは少しきょとんとしたようだ。
「断られるとは。想定外」
「はぁ?」
どんだけ自分に自信があるんだ?
「私はそれなりに顔が整っている。故に、それを求められることが多かったから先に口にした。本気で拒絶されると自意識過剰のようで恥ずかしい」
リームは本当に恥ずかしいのか顔を少し赤くしていた。そんなリームを見て俺は少し眉を寄せる。
顔が整っている?
戸惑いながらルベルトを見るとルベルトは頷いた。
「ヒューモ族としては、十分に顔は整っている」
改めてリームを見る。
どこか白に近い金髪に、青い瞳。鼻筋はすっとしてて、どこかはかないっていう感じの少年だ。
言われて見れば、それなりに顔は整っているのかも知れない。
普段見てる者が見てる者なので、ちっともそんな事は思い浮かばなかったが。
「まあ、それはよい。恥ずかしがるのは後で一人で存分にしよう」
「あのさ、お願いだからそろそろ手を離してくれないか?」
「君は神の貴石の製作者だろう?」
「あのさ、そんな事よりも手を」
「どうなのだ!?」
「だから! 近い!!」
意気込むと同時に顔を近づかせるな!!
手を握りしめるな!!
「エドって言ったか? 違うなら違うと早く答えた方がいいぞ。そいつは神狂いって有名なんだ」
「神のためなら何でもするからな。イエスかノーかはっきりと答えないといつまでもそのまんまだぞ」
周りの友達は助ける気はないようだ。
俺は一瞬どうしようかと思ったが、俺の顔を知ってる王子もいるので認める事にした。
「そうだよ」
「「「え!?」」」
俺が頷くと周りの友達の方が驚いていた。
「そ、それでいくらで譲って貰える!?」
リームは目を輝かせ、何故か俺の手を頬に付けようとする。
「だぁぁぁ! やめんか!! 渡さないぞ!?」
「それは困る!」
ぴたりと引き寄せようとする動きは止まった。しかし手は未だに離されない。
「あのさ、いい加減離してくれないか?」
「……うむ。君が嫌がってるのは分かるのだが。何故だろう。離したくない……」
うっとりとした顔をしてリームがそんな事を口にした。
ぞわりと俺は鳥肌がたった気がした。
「り、リームが! あのリームが!!」
「神以外に反応しただと!?」
「いや、待て! 彼が本当に例の物の製作者だというのなら、ありえるのかもしれないぞ!?」
友達三人がリームの様子にそんな事言っているが。
……神以外に反応…………。
え? もしかして、こいつ、俺の神としてのなにかに反応してるとかじゃないよな?
それならそれで、すっげー怖いんですけど!?
「あ、あのさ、片手だと取り出せないから手、離してくれるか?」
「……………………く。仕方が無いか……」
すっごく躊躇った後、本当に仕方がなさそうに手を離した。
俺は内ポケットから小さな小袋を取り出し、そこからヘイアンシリーズの小石を取り出し机に置く。
もちろん元々用意していたわけではないぞ? あくまで持ってましたって見せてるだけで。
……ヤヨイシリーズは保険のために残して置こう。
「おぉ!? これが! 神が与えし貴石!!」
や、それはちょっと違う。
別に神から与えられたわけじゃないから。
「「「え!? 本物なのか!?」」」
三人がやっぱり驚いた声を上げる。その声に周りが何事かと視線を向けてくる。
リームはそっと手の平に小石を置いて、頬をつけ、うっとりとした。
ちょっとやばいんじゃね? って顔だ。
「ウヘ……。ウヘヘ。ウヘヘヘヘヘ」
「「……」」
自他共に多少は顔が整っているらしい少年からそんな声が発せられ、俺とルベルトは思わず無言になり、イスを少し離した所に座り治した俺はきっと許されるはずだ。
とりあえずキリがいいかはわかりませんがこの辺りで。いったん。
すぐ見つかった誤字修正。