新しい『力』
火曜日分。
なんだか最近きつきつだなぁ。更新……。
というわけで今日のも短いです。ごめんなさい。
「で、お兄? お店の方は手伝ってくれるんだよね?」
シエノラからケーキを受け取りつつセリアは確認を取ってくる。
「うーん……」
「ちょっとぉー!? お兄が始めた事でしょ!?」
「それについてはお前には悪いなっとは思うけど。正直、どこまで関わって良いかはちょっとわかんねーんだよなぁ。今の所、お前以外夏の国メンバーばっかりだろ? 出来ればあと三、四人くらいはヒューモ族を巻き込みたい」
「ルベ君とミカとニアでいいんじゃないの?」
「吾も巻き込まれるのか……」
当然のように名前を挙げられてルベルトは苦笑を一つする。
「ミカについてはどうだろうな。前の時ゴドーが手伝ったのは一応、短命種を治すための治療費を捻出するためという理由付けがあったけど」
シエノラを見てみる。シエノラは腕を組んでしばし考えていたが首を振った。
「この辺は正直神がどう受け取るかだな。トキミ様……トキミがどう判断するか分からない」
「じゃあ本人に確認が必要って事で、俺もルベルトもニアも学校があるから週末ぐらいしか出来ないぞ?」
「その週末も場合によってはチームを組んだ人間と実戦練習をするかもしれん。あまりあてにはしない方が良いだろう」
「えー!? もー! それならアタシも学校に行ってれば良かった~!!」
ルベルトの追い打ちにセリアが喚いた。
うん、まぁそんな気分になるよな。
「とりあえず、サプルに連絡取るかなぁ……」
「そういやサプルさん、お兄達が居ない間に一度顔見せに来てたよ。結局ブラシュガでお店を持つみたい」
「ブラシュガで!? なんでまた」
どうせならクパンで持ってくれよぉ。そしたら俺だって色々……。優遇したって言うか援助したのに。
「今まで買いためた物を冬の国の物を売るんじゃない? セルキーだったら余り珍しくないだろうし」
「あのな、セリア。お前俺が上げたマジックバック使ってるからその考えに違和感ないかもしれないけど、普通の店で売ってるマジックバックって色々入るだけで、時間経過するからな?」
「そうなの?」
「そうだよ」
「ちょっと待て! むしろ待て。君たちが使っているマジックバックは時間が経過しないのか!?」
ルベルトが慌てて口を挟んでくる。
「うん。経過しない」
「それは神の御技か?」
「いや、普通にスキルの組み合わせ」
「……前にも思ったのだが、規格外な物を君は作るな……」
「そう? 時間経過のしないマジックバックなんて普通だよな?」
「そうだねぇ。容量だけでかくてもって思うよね」
俺の言葉にセリアはうんうん頷く。
「…………」
「ルベルト。私は君の気持ちはよく分かる」
シエノラの言葉にルベルトは疲れたように、ため息を零した。
「……そう言って頂けるとありがたいよ」
「日本人にとって魔法は身近にないものだったからこそ、夢が詰まってしまったというかなんというか……。それこそ、それは神の奇跡じゃないか? って思うのまで魔法で出来ると思ってるからな」
「……なるほど。たまったものではないな……」
「本当に……」
「でも実際出来るし」
思わずそう返すとシエノラは苦笑した。
「そうだな。だからたぶん、ルベルト達は苦労してると思うよ……」
「まぁそうだね。でも、そこら辺はそのウチ、神が調整してくんじゃね?」
それこそレベル10がマックスなのを倍くらいにして、威力をもっと細かく分けるとか、熟練度をもっと必要とさせるとか。
「調整……か」
「そ。威力の高いスキルを程よいスキルにする。そういう調整も含めての教材だと思うよ、コレ」
「え? スキルって教材なの?」
「教材なんだよぉ。実は」
驚くセリアに俺は頷く。
「……じゃあお兄もそのうちスキル作りを練習するの?」
セリアの言葉に俺は首を横に振った。
俺が答える前にシエノラが答える。
「エドはすでにスキルを自由自在に作れるし、新しいスキルを作る事も可能なんだ……」
「実際、学校に入るっていって作ったスキルは自分で作ったスキルだしな」
「規格外め、と愚痴ってたな」
シエノラがぽそりと呟いた。
って、それ、山に居る神達のセリフか?
「んな事言ったって、俺、再生も司ってるんだし、一度消えた物を戻すのは有る意味本業みたいなもんよ? 新しいスキルだって世界を作るよりももっとずっと簡単だし」
「まあ、そうなんだろうけどな……」
苦笑するシエノラ。
「じゃあじゃあお兄! 業務魔法って作れるの!?」
「作れるけど?」
「頂戴!!」
「えー?」
「お兄の代わりに働いてるんだからそれぐらい良いでしょ!?」
それを言われると弱いのですが。
「でも、業務魔法って基本この世界の店の物だけだぜ?」
「え!? だってお兄、日本のヤツ出してたじゃん!」
「あれは別。『地球の調味料』と『こだわり気質な日本人へ』っていうギフトと結び付けた結果」
「えぇー!? じゃあそのギフトも頂戴!」
「そっちを俺から上げるのは変だから」
あれはあいつの謝罪の気持ちなワケだし。
「えー? そこをどうにかならない? 業務魔法はマジで欲しいんだけどぉ」
「まぁ……。気持ちはすごく分かるけどな。色々欲しいのも食べたいのもあるだろうし」
「化粧品とか下着とか向こうの方が断然良いの多いの!!」
「……力説すんなよ……」
下着って言葉を……。
俺はため息をついて、右手を一度ぎゅっと握りしめる。
その手の平の中に力を集めて固める。
「ほら」
右手をセリアの方に差し出す。開けた手の平から真っ白な光がゆらゆらと揺れながらセリアの中に入っていく。
「これ……」
「スキル『異世界の社倉から』って事で、業務魔法とは違って、逆に向こうの世界の物しか買えないスキル。あと、業務魔法と違ってMPじゃなくて現金払い。頑張って働け」
親指を立ててにこやかに言うと、セリアも左手は腰に当て、右手は親指をたててきた。
「色々ツッコミたいけど、とりあえずありがとう!」
早速シフォンケーキを食べながらセリアはスキルを使ってみる事にしたようだ。お金を取り出し、まとめて硬貨の投入口に入れ、手当たり次第に欲しかった物を選択していってる。そしてどさりとテーブルの上に広がる。
「お兄、これ、鞄の中に出るようにとか出来ないの?」
「自分でやれ」
「どうやって?」
「結ぶで繋げられる。一応、この世界のスキルと相互出来る様にはしてあるから」
「そうなんだ。ありがとう」
テーブルの上に広がった物を鞄に入れ、また色々注文していってるようだ。
「金使いすぎるなよ~?」
「んー。一応分かってる。でもスキルを買う以外でそんなに高い物買う予定ないからいっかなぁって。必需品だし」
「あ、そう」
なんてやりとりをしていると、ルベルトが何とももの申したそうな目で見ていた。
「なんだ?」
「いや、やはり神なんだなと思っただけだ」
「はあ?」
何なの? 一応神ですよ? こんなんでも。
「……創造と、再生の神なのか?」
「いや、創世と殲滅と再生の神だよ」
「「……殲滅?」」
俺の言葉にルベルトとセリアは同時に硬直し、そしてこれまた同時に尋ねてきた。
「そう。殲滅。俺、神になる時、モンスター達皆殺しにしていったじゃん? たぶんその影響」
再生は、スキルを利用し、新しい種族を作った事による影響だろう。
「……」
ルベルトは深く、それはもうもの凄く深いため息をついた。
「吾は絶対に二度とお前と敵対したくない……」
そんなしみじみと言わなくてもいいのにねぇ?
俺、そんなに物騒か?
むしろ神になって精神的には割と安定した方なんですけどねぇ。シエノラ・ノ・ゴドー以外に関しては。
修正。
ゴドーのセリフ……じゃなかった。シエノラのセリフでトキミ様って普通に使ってた。あかん。様付けしちゃ駄目なのに。と慌てて付け足し。