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嫁が駄目なら子供達といちゃついてみた。

き、金曜日は過ぎてますが、金曜日分の更新です……。



 本日のおやつは、シエノラ手作りシフォンケーキ~。

 ふわっふわですよ! 幸せの味ですよ!

 子供達にはフルーツソースも渡している。俺は無くても十分に上手いと思うけど、子供達にはもうちょっと甘い方がいいかもな。

 他のみんなもソースを付けたり、付けなかったりと自分の好みで美味しく食べてる。


「こうやって見てると特に思うが、春の国は豊かだな……」


 アロンがぽつりと零した。


「誤解無きよう言っておくが、ここが特殊なだけだぞ。王都は確かに豊かだが、貧しい村もある。……夏の国に比べれば豊かである事は認めるが」

「確かにおやつってもっと素朴なものだったな。果物そのものとか、あとは生地にジャムを塗ったようなやつとか」


 分厚いクレープに手作りジャムを巻いたようなのが実家のおやつとして出た気がする。


「それでも、夏の国からしたら十分にごちそうだ」


 手を止めてケーキを見ながら言うアロンに、周りの動きもなんとなく止まる。


「……だから、バロン達はその生活水準を向上させようとしてるんだろうが」

「……そう……だな……。しかし何から何までお前達の手を借りることになるのは……」

「無利息無期限の借金でも俺はいいんだぞ? 別に。っていうか、俺的にはおやつを堪能させて貰いたいんですけど? このどこか暗い話、まだ続く?」

「……ああ……悪かったな。好きなだけ食べろ……」


 なんだか残念な物でも見るような目つきでアロンはそう言ってくる。

 結局アロンはルベルトに向けて政治的な小難しい話をしている。俺は口にしたようにシエノラの作ってくれたおやつに舌鼓を打つ。

 ふわふわしっとりウマウマ~。

 ご機嫌で、そんな事を思いつつ前を見ると食べ終わったらしい双子達がしょぼんとしていた。

 未だにおやつはお代わりなしだからな。でも、大人はお代わり出来るのですよ。


「シエノラ、もう一切れいい?」

「どうぞ」


 立ち上がりいそいそとケーキを切り分けて今度はフルーツソースをじぐざぐにかけていく。

 そんな俺を愛娘達は、頬をぷくっと膨らませて見ていた。

 なんて可愛いんだろう。その膨らんだほっぺたを指で突きたい。

 そんな誘惑に駆られながら一口サイズにケーキを切りながら歩く。

 先ほど座ってた場所じゃなくて、娘達の所に向かって。


「はい、ローズお口あーん」

「っ!! あーん!!」


 先ほどまでのふくれっ面はどこに行ったのか、満面の笑顔で口を開ける。そこに一口サイズに切り分けたケーキを入れる。

 ここで、「あーげない」とか意地悪はしませんよ!? やったら最後、マジで嫌われるからな!


 ローズの次はサクラだ。

 サクラの目はとてもキラキラ輝いていて、期待しながら俺を見上げてる。


「サクラ、お口あーん」

「あ~ん!」


 笑顔でシフォンケーキを口の中に受け入れたサクラは、ふにゃーんというような顔になった。


「パパ、もう一口~」


 ローズが俺の服をひっぱりおねだりしてくる。

 双子達がお代わりが駄目な理由は、夕飯が入らなくなるからだ。

 俺とシエノラと違い娘達は半分人間なので、成長するために、人と同じように飲食を必要とする。

 だから一口くらいならシエノラも特に言わないが、これ以上は駄目だろう。


「それは駄目。夕ご飯入んなくなるだろ? お父さんが美味しいご飯作ってやるから我慢しろ。な」

「はーい」


 ローズは約束だよ。っと掴んでいた俺の洋服を離した。

 俺は、もう一人の子供、ニアの横に立つ。


「ほら、ニアも」

「いいの!? あーん」


 ニアも笑顔で口を開けた。

 そこにシフォンケーキを入れる。

 双子と同じようにとても嬉しそうに笑ってふわふわのシフォンケーキを食べている。

 うん。女の子はかわいいね。

 娘は確かに特別だけど、ニアもそれなりにかわいがっていると思う。

 ニアが俺の事をお兄ちゃんと呼ぶからだと思うが、妹の小さい頃を思い出すんだよなぁ。

 あいつにだって昔はもうちょっとかわいげって言う物があってですね……。

 なんて言っても仕方がないか。

 とりあえず、娘ッ子達は先ほどのしょんぼりとは違い、満面の笑顔なので、俺としては大満足だ。シエノラの隣に座って残りを食べていく。

 家なら、シエノラにも同じような事するんだけど、ここだとシエノラ、嫌がるしねぇ。

 いいじゃん。共に「リア充爆発しろ」って言われるような関係を見せつけようよ~。なんて思ったりもするが、シエノラが嫌がる事をしたいわけじゃないので、ぐっと堪える。

 

「なぁ、エド、エメルドって、シフォンケーキは大丈夫だろうか?」

「……本物のヒヨコっていうわけじゃないし、大丈夫じゃねぇ?」


 そいつそんなナリしてるけど、聖獣とか神獣とかその系統よ? 絶対平気だと思う。

 俺が同意を示してやるとシエノラはソースを付けていないケーキを手の平に置いてピヨ吉の口元に持っていく。


 イイナー。イイナー。ピヨ吉のクセにイイナー。


 みんなの前でもシエノラに構って貰えるピヨ吉を指で突く。

 シエノラは俺とピヨ吉がじゃれてると思っているのか始終笑顔だ。

 どちらかというと男の嫉妬ですけどね!





 フワフワで絶品なシフォンケーキをたっぷり堪能したところで、アロンが尋ねてくる。


「エド、そろそろ話を戻して良いか?」

「話って?」


 なんかしてたっけ?


「……夏の住人を買い戻すための資金について、だ」

「ああ……」


 してたね、そういえば。


「そもそもお前達の目的はなんなんだ?」

「目的? 夏の国の住人の生活向上だろ?」


 今更そんな事聞いてくるか?


「そうじゃない。それをしてお前達になんの得があるのか? と聞いている」

「あー、そういうこと。特にないんじゃない?」

「……それなのにお前は身銭を切って夏の国の住人を救うのか?」

「そうだね。まぁなんとなく、出来そうだから始めただけだよ」


 肩を竦めて俺は答える。


「なんとなくでお前はいったいいくら金を払った? 利息が付くとでもいうのならともかく……、バロンを王にして甘い汁を吸うというのなら分かるのに、それすらもしないという。私にはお前の考えが分からなくてかえって怖い」


 アロンの言葉に俺はもう苦笑するしかない。

 俺はただ、出来そうだったから始めただけなんだけど、そう言っても納得はしないだろうなぁ。


「……直接、俺がどうにかするワケにはいかないけど、それでも夏の国の現状を少しでも改善する事が出来たら、武神が直接加護が与えてくれる。そういう約束してたんだよ」

「「な!?」」


 俺の言葉に驚いたのはアロンだけじゃなく、ルベルトもだった。

 そういや、ルベルトにもその辺の話はしてなかったっけか?

 

「神からの加護が直接貰えるっていうなら、身銭を切るには十分な理由だろ?」


 もちろん、本来の話の流れはそうじゃないが、アロンが納得させられればそれでいい。


「それは……確かに……。……ところで何故、直接介入してはいけないんだ?」

「自国の事は自国の民がする。それが大前提だろ? 俺が下手に何かしたら、ヒューモ族が夏の国を侵略したっていう扱いになるし」

「そうだな」

「え!? そうなのか!?」


 俺に同意を返すルベルトと違いアロンは本気で驚いていた。


「「…………」」


 それに無言となる俺とルベルト。


「王族のお前が知らないのは問題あると思うんだけど、俺……」

「吾も同意だ。……まさか、国王も知らないという事はないだろうな? 吾が忠告する義理はないが。確実に神の怒りを買う行為だぞ?」

「…………確認してくる」


 アロンは青ざめたまま部屋を出て行った。たぶん、転移アイテムを持つメンバーを探しに行ったのだろう。

 指定(夏の国の城とここのみ)転移出来るアイテムをアロンにも渡しておくべきかねぇ。


「……ところで、エド、さっきの武神様の話は本当なのか?」

「本当だよ。もっとももう今はなくなった話だけどね」

「なるほど、だから、お前は夏の国のために努力をしていたわけか」

「あ、それは違う。怒る武神を納得させるために言い出したわけで、その話自体は彼に会う前から俺とゴドーとの間ではすでに出てた」

「……そうか」

「あの頃の俺はただたんに、人生を楽しく生きるために何が出来るだろうかって課題を探してたって感じかな?」

「ああ……、前に言ってたあれか」

「そ、それ。もっとも今の俺は別の意味で直接夏の国のために何かするわけにはいかなくなったけどね~」

「……だろうな」


 この世界の神が、基本的には人間の自主性に任せているのだ。客神(きゃくじん)扱いとは言え、俺が好き勝手にするわけにはいかない。ましてや一国だけを贔屓するやり方は特に。


 頬杖をつき、なんとなく窓を眺める。


「まぁ……国に属さない人間に関しては、もうちょっと突っ込んだアドバイスをしてもいいかなって、勝手に思ってるけどさ」

「ああ……彼女達か」


 ルベルトの言葉に俺は頷く。

 俺達がこの世界に戻ってきて約二ヶ月半。

 今、この城には、騎士達とは別に、五人のアルフ族の少女達が居る。

 ネーアと同じく、娼館に売られていた子達だ。







木曜日更新出来なかった分、土日のどっちかに更新出来るといいなぁ……。

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