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入学式




 それはよく晴れた日。

 ……春の国はおおむね晴ればっかりなので、今日もよく晴れた日なのかも知れないが。


「この晴れやかな日に~」


 そんな言葉から始まった挨拶は、ひたすら長いものだった。


 今は学園の入学式で、学園長の挨拶の時間である。

 正直座っての参加じゃなかったら、切れそうなレベルで入学式が長い。


「日本でも偉い人の話は長かったけど、この世界も長いなぁ」


 俺はぽつりと呟く。


「式典と名が付くくらいだからな。見栄えを気にして、一言二言よりも足した方が良いだろうとなり、よりそれらしくと長くなるのだろうな。しかし、今回のこれは余りにも長い。無理に引き延ばしている気がする」


 俺の愚痴に答えたのはルベルトだ。

 そう、俺とルベルトは今、新入生として、入学式に参加している。貴族が通う学校の。


 ……本当は、普通の一般市民が行く学校に行くつもりだったんだけど、けど!!

 流石に俺には、見た目小学校低学年の子らに混じって勉強するってのは、辛かったです!!


 ムーリー!


 と、喚いた結果、見た目年齢に合わせるのなら、貴族の学校しかないぞ、となりこの度、貴族の学校に特待生として、入学する事となった。

 あ、金は自費で払ってます。

 税金使わせると、将来は国に仕えろってなりそうで嫌だったので。


 そんなわけで、貴族達が行く学校の初等部にニアと娘達の三人が。俺と普段から時折あちこちの学校に学生として混じってるらしいルベルトは高等部に。


 ついでにバロンも行くか? と、尋ねたのだが。

 あ、いやね、やっぱり、あの後、夏の国は大騒ぎになったらしいよ。

 俺達としてはこれで、責任感無し! 王には向かない! ってなってくれれば良かったのだけどそんな事にはならなかった。

 じゃあ春の国に留学してるって事にしたらどうだろう。と提案したのだが。


「こんな馬鹿のために学費として税金を使うのは勿体ないです」


 と、答える始末。そして何故か、兄の方、バロンが王に推薦してるバースト族の兄が、通うことになった。


 俺とルベルトは特待生扱いだから、大貴族の列と離れているためここにはいないが、なんというか、バロンの兄はちょっと困った存在だった。

 というか、凄いブラコンだった。

 バロンが女だったら正妻にしてた! って真面目に言うくらいにはブラコンだった。


 それでも血の繋がってる兄妹なら無理だろ。って返したんだけど、この世界、三世代あいてたら兄妹でも結婚オッケーなんだって!


 知らなかったよ。そして、知らないままで良かったよ。


 で、そんな兄貴は、アロンと言う。

 で、真ん中はカネル。カロンじゃねぇのか、っと思ったが、母親が違うから、もしかしてそこの違いなのかもしれない。かなりどうでもいい事だが。


 で、こいつ、本当なら夏の国の王子なんだし、王城に居候すべきなんだろうけど……。


「貴様等が俺の可愛いバロンに何をするかわからん!」


 とか言ってうちの独身寮なる城に居ます。

 「俺のなんて」言ってるが、かなりの一方通行。

 バロンに「兄貴の嫁になりたいのか?」と聞いてみたが、「昔はそう思ったこともありますが、今はこれっぽっちもありません!」と、笑顔で言い切った。


 兄、かわいそうに。


 もう一度振り向いて貰えるようガンバとだけ、一応、応援しておく。

 まぁ、アロンからしたら間違いなく、俺が恋敵なんだけどな! でも、俺、もうハーレム作る気全然無いし。

 その旨は、バロンにもネーアにもきちんと伝えてある。

 ただ、まぁ。バロンからしたら、俺は未だに主らしいんだけどね。

 一応神になった時に、エドは死んだ扱いになるから、バロンの隷属も切れてるはずなんだけど……。


「そんなの関係有りません!」


 って言われた。この場合の主は、騎士が剣を捧げる意味での主なんだって!

 俺の意志は!? って言ったら、要りませんって言い切られた!

 うそ付けよ。って思ったけど、もう好きにしてくれとも思った。

 て、言うか。

 バロンの場合、心酔が信仰になりつつあって、ヤバイ。

 シエノラが冗談で(と、信じたい)、「バロンはまるでエドの信者一号って感じだな」って言ったせいで、バロンのやつその気になっちゃって、「神殿作りましょうか!」なんて言うし! それはマジでこの世界の神に迷惑がかかるから止めろ! って慌てて止めた。

 言ったシエノラも苦笑してた。

 とりあえず、バロンは……きっとまだ、俺の信者ではないはずだ。たぶん。


 信者が出来ると神の力が上がっちゃうから、今はまじめに困る。


 ああ、でも…………。信者っぽくってやだなぁ……。



「大丈夫か?」


 思わず暗い気持ちになったのが顔に出たのかルベルトが聞いてくる。


「あー、うん。大丈夫。ちょっと違う事に落ち込んでいた」

「そうか。気分が悪くなったのならいつでも言え」

「…………それを理由に抜け出すと?」

「ああ」

「…………いっそ、誰かが倒れたら式中断でいいかもね」

「そうだな」


 そんな物騒な話をしているがこの場合の誰かは、俺かルベルトだ。流石に全くもって無関係な人間に倒れろなんて魔法は使ったりはしないぞ!?


「でも、ここで倒れたら、一気に病弱っていう設定が着くのかなぁ……」

「吾はそれでも構わんぞ」

「うーん。そうねぇ……。まぁ、俺もそれで構わないっちゃー。構わな……ああ、なるほど、王様が来るための時間稼ぎだったのか……」

「ん? ……ああ、本当だな。面倒な」


 俺やルベルトはスキルなどの影響で目で見える範囲外も視る事が出来る。ので、王様が馬車から降りて、ここに入ってくるのが見えた。


 ちなみに、俺の可愛い双子達はとっくの昔に夢の世界に飛び立っている。

 初等部の子はほとんどそうである。

 王様がやってきたことが先生方に知らされたのだろう、初等部の先生達が端っこから起こして、隣の子を起こすようにと指示して、落ちた頭が上がるのがウェーブの様でちょっと面白い。


 みんなが起こされた所で壇上に国王が立った。生徒達がにわかに騒がしくなる。しかし、国王が右手を挙げるとぴたりと声が止んだ。

 この辺は凄いなって感動した。


「入学おめでとう。君たちはこれからの未来を、国を担う者達だ。ここでは多くの経験をするだろう。苦楽を共にする友人も得られるだろう。それら全てを宝とし、学んでいって貰いたい。今日は本当に入学おめでとう」


 国王の言葉はそこで途切れた。そして、一斉に拍手がわき起こる。

 俺とルベルトは周りに合わせながら拍手というか、まぁ、とりあえず手を叩いている。


「つまり、ルベルトのせいだよな?」

「勝手に決めつけないでくれ。アレが勝手にやった事だ。そもそも、来るのならきちんと時間内にこればいいものを」


 最後の最後まで愚痴る俺とルベルト。

 国王の挨拶が終わればあっという間に式典は終わった。つまりあんな長ったらしい意味の無い話は全部国王が来るまでの時間稼ぎで、その国王がやってきたのは、ルベルトが入学すると知っていたからだろう。思いっきりルベルトを見てたし。

 

 初等部の子達から順に会場から出て行くがみんな眠そうに目をこすっている。

 それはもう仕方が無いと思う。むしろよく騒ぎ出さなかったなと俺は褒めてやりたい。

 ……まぁ、見た目と違って何十年って生きてるからこんな場面には大人しく出来るのかもしれないが。

 中等部が出て、高等部の俺達が出る。ちなみに俺とルベルトは最後尾。

 俺達が会場から出られるようになるまでも、やっぱり数分を要した。





 俺達は1-2で、教室は階段状の教室らしい。

 机には名前が書かれててネームプレートっていうか、国会で議員の席に書かれてるアレに近いのがあって、俺は最前列のドア側の様だ。

 身分が高いほど上の席になるようで。

 つまり、見下ろされるってことなんだろうね。

 やな所で拘ってるなこの学校。


 クラスメートは男女ほぼ半々で十二人。

 まぁ、貴族しかいない中で十二人、かける二。というのは、多いと思う。

 だって、簡単に言えばあれだろ。広い定義の親戚の中で同級生が二十四人いるって事だろ? 十分に多いって。俺を含むうち三名は年齢が違うとは言え。



 さて、なんだかんだと楽しみにしていた、学校。

 勉強するためっていうより、友達を作りに来たってのが正しいかな?

 学生時代に得る友人って、やっぱり、ちょっと違うじゃん?

 一人か二人、一緒にバカやってくれる友達が出来るといいな、と、実は期待している。

 セリアは妹だし、タンガ達は友達ってより、仲間っていうか、戦友って感じだし。

 一番の友達はお嫁さんになっちゃったし。


 ……どの道貴族学校の高等部って実戦があるらしいから戦友になる可能性は大なんだけど。でも、俺の事を知らないってだけでやっぱりみんなとは違う関係になると思うんだよね。

 そんなわけで、普通の友達が欲しいな、と、ドキドキワクワクしてたんです。実は!


「なぁなぁ、ルベっち。学校で上手くやるコツってなに?」


 俺はここではルベルトの事をルベっちと呼ぶ事にした。

 一応神に属すので「ルベさん」と呼ぶわけにはいかんのですよ。

 で、俺がルベさんルベさんと呼んでた影響なのか、ルベルトの偽名、「ルベ」なので、ルベっちにしました。


「コツ? そもそもキミの望むのはなんだ?」

「友達を作りたい!」

「友達?」

「そう!」

「……そのために学校に来たのか?」

「最初は色々勉強しようって思ったんだけどね、でも、まぁ、もう必要ないっていえば必要ないし」

「……そうであろうな……しかし、友達か。……友人が欲しいというのは構わないが、貴族に気に入られたいわけではないのだろう? ここは貴族の子息令嬢が通う場所だ。君が思うような友達は中々難しいのではないか?」

「かなぁ?」


 でも、だからといって平民が通う学校(小学生に混じるの)は無理だ。



 そんな話をしていると、担任と思われる大人が入って来た。

 ただし男女で。

 どっちかが担任でどっちかが副担かな? って思ったのだが、両方とも担任らしい。


 たぶん、どちらも顔はそこそこ整っていると思われる。

 ……普段見慣れている顔が顔なので、普通と思っちゃうけど。

 しかし……優男の方はなんだか妙にキラキラとしてて、さわやかってよりもむしろ俺には「面倒そうなイケメン(笑)」って感じに見えるし、女性の方は、長いスカートをはいてるわりには、四方にスリット入ってるから足が見えるし。胸を強調した服だし、なんていうか、学校の先生としてはそのかっこうどうなの? って思うけど、「ヒューモ族」って考えたら、ああきっとこういうものなのかもな。なんて思ってしまう。

 ……やっぱり考えてみるとどっかおかしいよ。ヒューモ族。

 これで性犯罪は低いってんだからびっくりだよ。

 ……いや、わざわざ犯す必要が無い環境なせいかも知れないけどさ。


 男性の担当の方はルージー。

 女性の担当の方はビジーというそうで。


 何か相談したいことがあればどんどん相談しに来てねって言ってたけど、なんだか凄く、相談したくない……。むしろかかわりたくない。って思った。


 今日は軽く自己紹介をしただけで学校は終わった。

 本番は明日以降という事なのだろう。

 ……入学式が一番長かったな。


 さて、愛娘達と帰ることにしようかねぇ。

 気楽な気持ちというか、疲れた精神を娘達に癒やして貰おうと初等部に向かう。

 すると----。


「おい、ボクが先に声をかけたんだぞ!?」

「黙りなさい。男子なんかと一緒に遊んでいては美しいお肌に傷がつくかもしれませんわ!」

「そうよそうよ!」

「なんだと!?」


 なんかうちの娘っこ達を巡ってケンカが勃発してた。



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