それはある世界のある日
ここから第3章となります。
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可愛らしく、愛くるしい幼い少女達が駆ける。
二人は双子なのだろう。とてもよく似ていた。
「もうすぐだね!」
「もうすぐね!」
「ローズは挨拶考えた? サクラは考えた!」
「サクラは凄い。ローズはまだ」
二人は楽しげだ。
「姫様方。走ると危ないですよ」
二人の子守なのか、全身真っ黒な衣装を身に纏い両方の腰に二本ずつ刀をさしている、一言で言うと、『ゲームキャラ』のような、女性が声をかける。
女性の少し後ろを同じ衣装を身に纏った男性が周りを軽く警戒しながら歩いていた。
「大丈夫だよ、楓。転けるくらい平気よ!」
「大丈夫よ。かすり傷なんてすぐ治るよ」
「……いえ、私共としては、けがをして欲しくないのですが……」
女性、楓の言葉は二人の耳には届かないのか、子供達の足は止まらない。
目の前に大きな川が有っても二人は手を繋ぎ川へと走る。川へと入っていくと思われた二人の足は水に沈むことなく、川の上を走る。
対岸には男の護衛がいつの間にか移動していた。
少女達が渡りきると、女性の護衛の姿が消え、川の上を黒い影がはしり、彼女も対岸に現れる。
「「早く明後日にならないかしら!」」
少女達は期待に胸を膨らませて、家へと駆けていく。
三人掛けのソファーに、その二人は居た。
女性が、ソファーの端に座り、その膝に男性の頭を乗せていて、額から頭を撫でている。
膝枕を堪能している男性は、実に幸せそうに、女性と指を絡めて、話をしている。
一言で言うとイチャイチャしていた。
そこに先ほどの幼い少女達が帰ってくる。
「「ただいま~」」
「おーお帰り~」
「お帰り」
大人達は声をかけるだけでその体勢を止めるつもりはないようだ。
少女達もそんな二人を気にする事無く、駆け寄ってくる。
「子亀サクラサンジョーだよ!」
「孫亀ローズけんざんよ」
男性の上に寝っ転がるようにサクラが抱きついてきて、その背中にローズがひっつく。
男性は二人が落ちないように片腕で支え、女性がもたれていない方の背もたれをぐっと押す。背もたれはなんの抵抗もなく倒れていき、座る部分が広がる。
「ほら、孫亀ローズも子亀ローズになんな」
手招きするとローズはサクラの背中から降りてくる。
サクラを少し右に寄せ、二人に半分ずつスペースを取らせる。
「今日は随分と遠くまで行ったな」
「楽しかったよ!」
「楽しいよ」
「「綺麗なお花見つけたの」」
嬉しそうに報告する二人。
「雪もね、触ったよ!」
「冷たいのよ」
「雪合戦もね、したよ!」
「柳が鬼だったの」
「「楓と三人で雪を当てたの」」
それは、俺の知ってる雪合戦と違う気がするなあ。
男性はそう言いたかったがとりあえず黙ることにした。
「楽しかった?」
女性が二人の頭を撫でながら尋ねる。
「「楽しかった!!」」
二人は元気いっぱい答えてクスクス笑う。
「でも明後日はもっと楽しみだよ!」
「早く明後日になってほしいよ」
「そっか。きっと楽しいも悲しいもいっぱいあるけど、お前達なら大丈夫だろ」
「大丈夫だよ! 悲しいもなれてるもん!」
「そうだよ! なれてるよ!」
「……慣れる程悲しい思いさせてる?」
そんな言葉が返ってくるとは微塵も思ってなかった男性は、少し緊張しながら尋ねる。女性も戸惑っていた。
「「おやつもおかわり希望です!!」」
「駄目」
「「うわぁぁぁぁん!!」」
双子がそう懇願すると女性があっさりとそう答えた。
「……食い意地張ってるなぁ。流石俺の娘」
「君が作るの物が美味しすぎるんだよ……」
「パパが作るご飯は何でもおいしいんだよ!」
「パパのご飯大好きよ」
「そっか。なら頑張ってたかいがあるなぁ~」
男性は嬉しそうに双子に頬ずりする。双子も嬉しそうだ。
男性は顔を上げ、体を少し浮かせる。それを見て、女性は背を丸め、男性にキスをする。
唇からおでこへと女性はキスを移し、男性はそれにへらりと笑う。
何年経っても好きだなという想いが浮かぶ。
お互いに微笑みあう両親の姿を双子達は気にする様子もなく見ていた。
双子にとってはいつもの光景。
だから双子にとっては今日のおやつは何かなという方がずっと大事で、この時間に帰ってきた理由を思い出す。
「パパ。おやつの時間だよ!」
「そうだよ、パパ。おやつ食べよ」
「はいはい。じゃあ、おやつにしますか」
「「やったぁぁ」」
双子は歓声を上げて男性の上から降り、男性も上体を起こしてソファーから降りると自分にずっと膝を貸してくれていた女性に手を差し出す。
「あの子達、あれで大丈夫かな?」
手を取りながら女性は尋ねる。
「さぁ? こっちでは色々経験できないし、だからこそ、向こうに戻るんだしね。でも、ホント、スムーズに許可が下りて良かったよ」
男性の言葉に女性は小さく笑う。
「みんな元気だろうか」
「元気でしょ。怒りはするだろうけど」
「ああ、そうか。それはそうだな。……怒ってくれるといいな」
女性の願いがこもった言葉に男性は気づかないふりをして、繋いだ手を離す事なく、双子の後を追う。
彼らが戻ってくるまで、あと少し。
前回書き忘れてましたが、
二人の子供が双子の女の子なのもランダムアプリ様のお導きです。