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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
114/143

生誕




「ヒノワ様、スキル開発者の神に会わせてください」


 なんの説明も無しに、エドはそう口にした。


「エド……それは、無理だわ……。あなたはまだ人なの。人が神を呼び出すには、それなりの儀式が必要なの。神になってからなら紹介してあげるわ」


 それでは意味がない。

 ならせめて伝言という形ででも知らせて貰えないだろうか。

 そう思った時、別の声がかかった。


「俺への客だろ? 借りてくよ」


 そんな言葉と共にどこかへ一方的に転移にて連れてかれた。


 どこか、会社の応接室みたいな場所。そこにエド達は居た。


「座りなよ」


 声をかけるのは、見知った顔。

 気負う事も臆する事もなくエドはすすめられたソファーに座る。


「さて、初めましてと、挨拶すべき?」

「……時間があるならするけど?」


 エドはどうでもよさそうに答えた。


「じゃあ止めとこう」


 かの神はあっさりと流し、それから改めてエドを見た。


「よく、決心したな」

「……じゃあ逆に聞くけど、そっちだったらどうしてたんだよ」

「……さぁ、俺は気づけば、ほぼほぼ神の状態だったし、君のようにハーレムを作れー。ではなく、純愛をせー! の方だったからな環境的に」

「そうなんだ」

「そうだよ。しかし、よく、この道に辿り着いたな」

「?」

「君が今の奥さんと最初にくっついてなきゃ、たぶんハーレムルートまっしぐらだったと思うけど」

「……かもね」

「いや、君は実感ないだろうけど、ホント、君がここに辿り着く道は沢山有る中の道の一本のみだと思うよ?」

「……そうなんだ。じゃあ、俺の運が良かったんだろうね」

「かもね」

「……そろそろ、本題に入って良い?」

「ああ、そうだね。どうぞ」

「……俺が今神になったら、嫁さんはどうなる?」

「君たちが予想したとおり、お腹の子を吸収して、神に至るだろうね」

「……」

「ちなみに繁殖期は明日だよ」

「明日!?」

「そう。君が決心するのがもう一日遅かったら、ハーレムルートだったかもね」

「……………………」

「言っただろ? よくこの道に辿り着いたなって」

「……実感した」

「さて、君は奥さんをどの地位にまでしたいんだ?」

「俺と対等。それ以外は無しで」

「じゃあ、まず、君は君の世界で、生命の樹木を沢山育てて、それを奥さんにあげなきゃな。あとは新しい生き物の創造かな? ただし、こちらに関しては魂があると困るから、人格の核は君が持ってるスキルを使ってくれ。あと、ここの世界で神に至る時、奥さんのレベルもあげなきゃいけないだろうなぁ」


 言いつつかの神は何かを見ながら、手元の用紙に具体的な数字を書いていく。


「あと、向こうの世界からこちらへと世界に戻ってくる時間も今回は指定しておく」

「……なんで?」

「ちょっと、ね、欺きたい神が一柱居てね。邪魔されたくないだろ?」

「それは、もちろん」

「うん、だよね。君にはほんと、色々悪いな、っとは思ってるけどね」

「……ゴドーと子供を助けてくれるなら全てチャラでいい」

「そう言って貰えると助かるよ」

「……妹も、神に至るか?」

「や、あいつは無理だろうな。俺が見た中であいつが神になった未来は無いし、性格的にも無理だと思う」

「そか……、安心した」

「そう思う気持ちは分かるけど、一応目の前に神になったやつが居るんだ、気を使おうぜ?」

「俺も今からなるんだから、気を使う必要なくね?」


 そんはやりとりをする二人。エドはかの神を見ず、かの神は、用紙と未来を見るだけでエドを見ない。


 パラレルの自分故に顔を、目をあわせにくい。


「これでいい」


 事細かく書かれた神化への手順。

 それを見てエドは知らずに息が零れた。



「助けてくれて、ありがとう」


 立ち上がり、頭を下げる。


「こちらこそ、贖罪の機会を与えてくれてありがとう」


 かの神も立ち上がり、頭を下げる。

 エドは困ったような顔をして、それでも何も言わずに己の世界へと転移する。






 世界を広げる。妻のための大地を用意し、新しい生き物を、と、考えて、ひな鳥を作ることにした。

 気に入ってたし。

 今朝の様子を思い出し苦笑する。

 朝も黄色いヒヨコを見て、ドレスごと保管すべきか、この部分だけ切って保管すべきか、真剣に悩んでた。

 気に入ってくれて嬉しいような、よほど自分がひな鳥に見えるのかと嘆けば良いのか分からなかった。


 生命の樹木を植えていき、その一つに、分身のスキルと、魔法系のスキルを渡しエドが描いたひな鳥を創って貰う。

 本来は種子を飛ばす生命の樹木だが、たった一種に限定すれば、種子ではなく、卵の様な果実を実らせ、それそのものを生み出す事が出来るらしい。

 流石スキル開発者、色々知ってる。と、エドは渡された用紙をじっと見る。

 ヒヨコと同様に、忍や侍を使い、新しい存在を作る。神使や天使といった立ち位置の存在を。


 世界を広げる。ただその作業を繰り返す。


 一日、二日、一週間。一月。

 時間が流れて行く。


 逢いたい。


 細い糸の様に感じる気配。

 その先にいる人物に逢いに行きたい。

 でも今はそれも出来ない。

 

 神として力を持った生命の樹木を錠剤に変えていく。

 十本で一錠。

 

 それが六十錠分出来たところで、ひな鳥が生まれた。

 一本の生命の樹木にたった一つの実。

 そこから生まれたひな鳥はぽてんと地面に落ち、ぶるぶると体を震わせ、そして、ピィ。と鳴いた。

 その鳴き声に呼応するかの様に生命の樹木は発光し、ひな鳥の中に吸い込まれていく。


「……気に入って貰えるといいな」

「ピィ」


 ひな鳥をアイテム扱いし収納すると、エドはシエノラの元に飛んだ。

 シムから聞いていたのだろう、シエノラはエドと二人っきりになれる時間を作っていてくれていた。


「お帰り」


 逢いたかった人にそう言って貰った時、エドは不覚にも泣きそうな気分を味わった。


 逢いたかった。ずっと逢いたかった。

 この半年辛かった。寂しかった。触れたかった。


 そんな想いが渦巻く。


「……ただいま、ゴドー」


 抱きしめるのだけは我慢出来なくて、エドはシエノラを抱きしめた。




 短い逢瀬。でも、逢えただけで嬉しかった。話せただけで嬉しかった。触れられる事が、触れて貰えた事が嬉しかった。


 自分の世界に戻り、最後の仕上げをしていく。


 妻のために作った大陸に血を媒介に神の力を注ぎ、さらに、生命の樹木を世界中に植えていく。

 忍達や侍達が新しい種族となり世界を行き来する。


 さらに半年、神になるための活動を初めて一年が経った頃、エドは自分の中にある力を感じた。

 魂の生成。

 創世神に与えられた力。


 偶然生まれるものではなく、自ら創り出すもの。

 

 やっとここまで来たか。

 エドはそう思って息を吐いた。

 これで、大丈夫。


 そう結論が出てエドは元の世界へと戻っていった。


 最後の人としての時間を過ごすために。






 神は目を開ける。

 目を閉じて開ける。その間に何日という時間が流れて過ぎた。

 天を見上げて、そして、幹から離れ、向かい合う。


 巨木は光り、モヤとなり、神の前で、小さな光りの塊が巻き上がって形を作っていく。

光りが弾けた時、そこには一人の女神が立っていた。両腕に子供を抱いて。


 ふわりと白い肌に長い髪がおりる。

 白に近い桃色から赤紫という色が光りの変化でなのか、揺れる度に髪の色が変わる。

 瞳は、上が濃紺で下がオレンジ色のグラデーションという不思議な色合いをしていて、夜明けの色だと分かった。


 神は苦笑する。

 もともと美人だったのに、手が付けられなくなったな。と。

 その上、彼女が気にしていた胸も明らかに昔よりも膨らんでいる。

 これは、困ったなぁ。と神が思うのも仕方がない。


「私は、なんと呼べばいいのかな? 旦那様?」


 淡く色づいた可愛らしい唇から紡がれた言葉は、昔とあまり変わらない優しい響きがあった。


「エド。俺はそれでいい」


 神は変わる気はないのだと言うかのように、その名を口にし、女神に近づく。

 頬に手を添えて、撫でる。


「俺はなんと呼べば良い? 奥様?」

「シエノラ・ノ・ゴドー。と」

「…………ずるい」

「ずるくない」


 どこか神々しさがあった二人は途端にその神々しさが無くなり、彼らが見知った空気となる。


「いや、ずるいよね? それなら俺だってゴドー・ノ・エドって付けるよ!」

「それは駄目だろ?」

「なんで!?」

「何かしら捻らないとな」

「ひねろって! 自分だって自分で考えてないくせにぃ。っていうか、ゴドーって捻りにくいじゃん!」


 言いつつ、彼女の腕の中で眠る赤子達を見た。


「まさか、双子だったとは」

「ふふ、そうだな。ちなみに女の子だぞ」

「なんと!! お母さんに似たら大変だ。男共が群がってしまう……」

「……父親に似ても、それなりにモテそうだが?」

「……今の俺じゃないから」


 ちらりと顔を見られて言われた言葉にエドは悲しげに口にする。


「はぁ……顔、エドの頃の方が良かったなぁ……」

「これは、前世、いや、日本人だった頃の顔か?」

「んー……混ざってる感じかな? だいぶ日本人だった頃の顔だけど」

「ふーん」


 じっと夜明け色の瞳が見上げてくる。

 何? と首を傾げればシエノラは微笑む。


「エドの顔も好きだけど、今の顔も好きだよ」

「……ありがとう。シエノラもさらに美人になって……、俺、男共に口説かれないか心配です……」

「心配しなくても、太陽神ヒノワに誓った誓約は生きてる。私は、君以外に発情しないよ」

「そういう問題じゃないんです」


 少し怒ったように言って、赤ん坊ごと、優しく抱きしめる。


「……シエノラ・ノ・ゴドー。俺は君を愛してるよ」

「私も、変わらず、エド、君の事を愛しているよ」


 お互いへの想いを口にし、誓い合うかのように口付けを交わす。

 唇が離れて、お互いの目から涙がこぼれ落ちた。


「良かった……」

「それは、私のセリフだな」


 失う可能性の有った愛。

 それをお互いに失わずにすんだ事が一つの奇跡のようで、お互いに泣き笑いながらそう囁きあって、もう一度キスをする。



「さって、家に帰ってこの子達の名前をつけなきゃな」

「そうだな」

「神の宮と言うにはしょぼーい、農園の家ですがよろしいですかな? 奥様?」

「思い出の多い場所だから私は、宮殿などよりもそっちの方がいい」

「俺も同じ気分だよ」


 エドは楽しそうに笑って、それから、はっと顔を上げた。


「そうだ、名前!」

「ん?」

「エドはゴドーのものって意味で、エド・ハゴドーノじゃどうだろう!?」

「……娘のかと思ったらそっちか」

「娘達のも重要だけど、俺のも重要なんですぅ!」


 一人だけずるいじゃないか。なんて話をしながら神々はその場から忽然と消えた。


 神々が居なくなった大陸に、ひらりひらりと、巨木だった頃に咲いていた花びらが落ちてくる。

 花びらは地面に触れると双葉となり、本葉と成長し、大地を緑へと彩っていき、白い花を咲き誇る。

 新しい神々とその家族を祝うかのように、世界が艶やかに、新しい命を咲かせていく。


 新しい世界が誕生し、新しい神が誕生した。

 それは一つの物語の終わり。




 そして、新しい物語の始まりでもあった。










第二章 終了 後書き?



これにて第二章終了って事で。


えー。見ての通り、ハーレムになりませんでした!


結婚式のネタを書いてる時はこんな事になるとは思わなかったなぁ。

新婚初夜~。きっと今頃エドはムフフ~としてるんだろうなぁ。

さて、続きをどう書こうか、繁殖期をいつにしようかどうしようか。って考えてたらふと。


あれ? ここまできたらもう人間で居る必要なくね?


って、思ったりして。

別にエドは浮気をしたいわけでもないし、ゴドーとイチャラブできたら幸せなわけで。

ゴドーのためにと色々抑え込んだら、反動でさらにゴドーは酷いことになるわけで。

ハーレムをするぜ! と詰め込んだ設定によりエドが「じゃ! さよなら!」って一抜けする想像しか出来なかった。

今にして思うと、繁殖期もそうだけど、性欲を抑えられたらゴドーへの愛情を凍結されるのが一番エドには応えた気がする。


っていうか、ゴドーのために真面目に命賭けますぜって人が、ゴドーへの愛を誓うために神になる! って決心してもおかしくないような。いや、でも……。

って、しばし悩んで、一応かるーく、両方のパターンを書いてみました。


繁殖期が来てしまったエドと、神になるって決めたエドと。


個人的には繁殖期は結婚して四日目くらいかな? って考えてその数日分を箇条書きくらいに書いてるとやっぱり違和感。

もともとゴドーに永遠の愛を誓いたい人間が、繁殖期の事を知って、そのまま放置しておくかなぁ。

やっぱり、「あとはよろしく! じゃ!」って去ってく姿の方がチラチラ浮かぶんですけど。

いや、でも、ここで去って行くと学園とか夏の国とか色々中途半端だし。

そもそもハーレム目指すって書いてたわけだし。確かに好みとしては神に至る方だけど……。


よし、ここは。ランダムアプリ様()に任せよう!!


1.ハーレムルート

2.神になる


 →2.神になる



でした。マジか。

エド喜べ! 神のお告げだ! この結果は覆らないぞ~!

と一人拍手して喜んでたり……。

ついでに繁殖期が何日ぐらいにくるかもチェックしとこ。その間に終わらせられる物は終わらせよう。

とか思ってたら、翌日には来るよ。っていう結果で、書く側としては色々楽が出来るぜ! っていう感じでしたが、これってエドの決断が遅れてたらやばかんたんじゃね? って思いました。


ちなみに、ゴドーさんのハーレムについての発言は、こちらも実はちょっと、「ハーレムか~。ハーレムってやっぱ、なんか自分で書いてると違和感あるなぁ。いっそ、ゴドーさんがハーレムは嫌だ~。とかいってくれないかなぁ」っていう気持ちで、ランダムアプリ様にお伺いをしました。(時期的にはルベさんとエドが対峙してる所ぐらいの頃かな)



1.ハーレムは嫌だ。独占させてくれ。

2.ハーレム、いいんじゃないか?

3.……少し考えさせてくれ。


の三つ。ちなみに、3の少し考えさせてくれは、やっぱりハーレムは嫌だ!エドを独り占めさせてくれ!

の前振りでした。

結果。


→2 ハーレム、いいんじゃないか?


です。

はい、知ってました。ゴドーさんは確かにハーレムについて全然気にしてません。 

そもそもエドほどの人物なら作るのが普通だよなぁって思ってるタイプです。


ぐ、ぐおぉおぉ。三分の一なのにぃ!! 分かってる! 彼はそう答えるって分かってるけどぉ!


とか思ってたのですが……。

この結果はネーアとの会話に活用させて貰いました。


っていうか、結果内容が凄いんですけど。なにこれ。マジで神か?

って、気分になります。

ちらほらと今まで後書きに書いてますが、色々と仕掛けてあったんです。

エド、それをことごとくスルー……。エドのリアルラックがすげぇ……。

そして、ランダムアプリ様がマジで凄い……。


そして、ランダムアプリ様に、すぐ第3章いくか、それとも幕間(イチャラブ含む)を書くか決めて貰おう~って、やったらあっさりと第3章いけ。と言われた……。イチャラブ……。(涙)

今せっせと書いてます。



あと、女性ゴドーの名前の「シエノラ」についてはみなさん分かったかな?

二文字、二文字にわけて手書きで書くと分かりやすいかも?

ノラは若干無理矢理だけど。「ラ」をちょい右上に書くのがコツですかね。


正直、この名前に決めたエドにドン引けはいいのか、それを許したゴドーが凄いと思えばいいのか……。




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