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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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シエノラ

前半エド視点。後半第三者視点。

 



 仄かな明かりが窓から入ってくる。

 たったそれだけを光源に俺は愛しの奥さんの寝顔を見つめる。


 彼女が気持ちよさそうに眠ることが出来たのはほんの五分前。

 それまで散々俺に可愛がられていた。

 可愛くて、止まらなかった。


 そして、試しにシムに繁殖期の予想状態を作って貰った。最悪だった。

 二度とやりたくないと思った。

 本当に女なら誰でもいいのだろう。

 俺の子供さえ産んでくれればいいのだろう。


 ルベルトから聞いていたのと少し様子が違う気がするのは、混じっているせいか、それとも、ステータスが高すぎるのか。


 どちらにしても、ゴドーへの負担は大きいだろう。

 抑制すればもっとだ。



 だから、もう良い。

 これ以上、負担をかけたくない。どちらがよりワガママなのかは悩ましいところだけど、俺は、ゴドーの愛を信じる。



 でも、それにも問題があった。



『すみません、マスター』

 謝らなくていい。俺のワガママが原因なんだし。


 再度、眠る奥さんを見る。


「必ず守るから」


 そう眠る君に誓い、こめかみにキスをする。








 そこで終われば格好良かったのかも知れないけど、寝ぼけた奥さんがすり寄って来ちゃって俺はもはや生殺し!

 我慢したよ!? だって数分前まで、いっぱい可愛がっちゃったんだもん、これ以上は、ヤバイじゃん!? って。


 でも、こういう我慢って、この体、あまり良くないんだよね……。

 目を覚ました奥さんに我慢しきれなくて、また鳴かせてしまいました。可愛い声で鳴いてくれました。

 幸せいっぱいですが、回復をかけてるとはいえ……、そろそろ、本当に奥さんの体が心配になってきた……。

 いや、だから、もう覚悟を決めたんだけどね……。






「シエノラ?」

「そう、シエノラ。どうかな? この名前」

「エドが決めてくれた名前だ。なんでも嬉しい」


 うん。そう言うのは予想済み。


「シム。この名前の由来、説明してあげて」

『はい、マスター』


 シムはゴドーにその名前の由来を未記入の白板で教えていく。

 俺はそれをドキドキと見ていた。

 引かれる可能性だって考えてた。むしろ、普通は引く。

 説明を聞き終えたゴドーに確認を取る。


「もちろん、ゴドーが嫌なら変える」

「何故だ。変える必要などない。私はこれが良い」


 笑ってそういうと、気に入った証としてなのか、キスの嵐がお礼にとやってきた。

 それを嬉しく思うと同時に、罪悪感も生まれた。


「ゴドー」

「シエノラ」

「……はい、シエノラ、もう一つ、大事な話があるんだ」

「大事な話?」

「うん。結婚したばっかりでさ、悪いけど……、聞いてくれるか?」

「……分かった、聞く」


 俺の表情を見て、ゴドーの表情からも幸せそうな笑みが消える。

 うぅ、ごめん。

 俺は、昨日知り得た事から覚悟を決めた事まで、順に話していく。

 ゴドーは何も言わずにただ黙って聞いてくれた。


「ゴドーは、平気だって、言うかもしれないけど……俺はやっぱり、嫌だから」

「分かった。私はエドの判断に従う。最初からそのつもりだったし、問題無い」

「……ごめんな」


 ゴドーを抱きしめる。


「謝らなくていいよ、エド。私のためなのだろ?」

「……違う。これは、俺の自己満足だ……」

「そうか。それでも、私には私のためだと、聞こえてくるから、それでいい」


 ゴドーはそう言って、まるで許しを与えるかのように、口付けてくる。


「エドの思うようにしたらいい。私は、こうしていられるのなら、それだけで幸せだ」


 ありがとう。

 身勝手な俺を許してくれて。







-*---**







「シエノラ? それに名前決まったの?」

「ああ。だからこの姿の時はシエノラと呼んでくれ」


 セリアにそう説明するゴドー(シエノラ)


「シエノラ、シエノラ。ふーん。なんか可愛らしい響きだね。ぴったりかも」


 ぴったりという表現が嬉しかったのか、シエノラは微笑んだ。


「ありがとう」

「あ、あはは。それで、お兄は?」


 シエノラの笑顔にちょっと照れたセリアは話題を変える。


「大事な用事があると、すでに出かけた」

「え!? 自分の家族ほったらかし!?」

「そう……なるな。でも、早く終われば合流すると言っていた」

「ふーん。でも、新婚初日に奥さんほったらかしってどうなんだろ」


 眉間に皺を寄せたセリアにゴドーは小さく頭を横に振る。


「私のためだから。そんな風に言わないでくれ」

「ゴドーのため?」

「そう。私のため」


 言いつつゴドーはお腹を撫でた。


「それで、皆の観光を連れてってくれという事で軍資金も預かった。どこかおすすめな所ってあるか?」

「って、言ってもアタシ達も来たばっかりだしなぁ……」

「そうか、なら……。詳しそうな人の所に行くか」

「詳しそうな人?」


 セリアは首を傾げたが、ゴドーは頷いて、ルベルトの元へと向かった。


「……観光に向いている場所……か」


 紅茶を飲んでいたルベルトは話を聞いてしばし考える。


「吾もそんなに詳しくはないが……、それでもいいのなら」

「やった、案内人ゲット~! いやぁ、助かる~。ありがとうね、ルベ君」


 セリアはガッツポーズを取った。そんなセリアを見て、ルベルトは尋ねる。


「君はセリアだったか?」

「うん。そうだよ。ルベ君」

「君は随分とエドと仲がいいのだな、君もエドのハーレムに入りたい人間か?」


 エドのハーレムに入るためにはゴドーの許可が必要不可欠。

 昨日の動きからしても、セリアとゴドーは仲が良いように思える。だから、エドを得るためにそこから落とし初めているのかと思って尋ねてみるがセリアは笑う。


「あはは、無い無い。お兄とアタシがくっつくとか、まず無いって」


 しかし、セリアは全否定した。照れでもなく悲観的な否定でもなく、本当にこれっぽっちもあり得ないと思っている。


「そうなのか? てっきり……」

「そんなに意外? 仲が良いって言っても、男女の仲の良さじゃ無いでしょ?」

「…………どういう意味だ?」

「え?」

「男女の仲の良さじゃない、というのは、どういう含みを持って言っている?」

「へ? 恋愛ごとの事だよ? あれ? こっちじゃこんな風には言わないのかな?」

「…………こっち(・・・)じゃ? 君は別の国から来たのか?」

「あー……と……」

「彼女も転生者だ」


 どこまで言って良いのか分からず言葉を探すセリアに対し、シエノラがルベルトに伝える。


「え!? シエノラ!?」

「彼はエドが転生者、ニホンジンという異世界人だと知ってる」

「あ! なんだ! そうなんだ。なら説明もしやすいかな。アタシとお兄は前世で兄妹なんだ。といっても、そっちでもパラレルってるから厳密な兄と妹でもないんだけどね」


 ルベルトは驚きで目を開けて、それからセリアをじっと見て、眉間を思いっきり寄せる。


「君もシステム持ちか……。この情報は油断させるためのものか……いや、でもそれにしては……」

「あれ? セリアはシステムを持っているのか?」


 確かにシステムに続くスキルを渡した覚えはあったが、あれから音沙汰も無かったので、まだだと思ってたのだ。


「うん。持ってるよ」

「……システムは君にどんな道を示したんだ?」


 ルベルトは慎重に尋ねる。しかしセリアは首を傾げた。


「道って?」


 首を傾げるセリアにルベルトは誤魔化しているのかと思ったが、そうではない事をすぐに気づいた。

 彼女は本当にただ持っているだけで、システムを使ったこともないのだろう、と。


「お兄からはしばらく使うなって言われてたし、使ってないけど?」

「……何故だ?」

「育てば育っただけ、弊害も出るって今は分かってるからじゃないか?」


 シエノラは苦笑して答える。

 シムが言うにはすでに熟練度補助の効果も外しているとの事だった。

 あぁ、とルベルトは納得した。

 下手に育てれば同じ苦悩を味わせる事になると慎重になっているのだろう。


 よくよく見ると彼女は何かしらの力が籠もっている装飾品タイプの魔道具をいくつかしているようだ。なるほど、とルベルトは納得した。

 妹を守るだけなら、彼女自身のステータスを上げなくても、彼が作った魔道具を持たせるだけでもなんら問題はない。


 しかしセリアは弊害については聞いていなかったのかゴドーに確認を取る。


「そうなの?」

「みたいだな。ステータスが高くなると、ヒューモ族の種族特長が強化される。エドはそれで今苦労してるよ」

「へー……。今以上はちょっとやだなぁ……」


 セリアは困った顔をし、ゴドーも苦笑を返す。

 それが当たり前のルベルトとしては、どうやら本当に「ニホンジンのようだな」等と思っていた。







女版のゴドーさんの名前はシエノラに決まりました。

結構頑張って考えた。


由来はまたいつか。


分かったー! っていう人何人ぐらいいるかなぁ。




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