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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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お祝いをしましょう②




「えー、では、おに……ゴホン。では! エドとゴドーの結婚を祝ってかんぱーい!」


 かんぱーい!!


 セリアの音頭に合わせてグラスが掲げられる。


 そうしてスタートした披露宴。

 所狭しと並ぶ料理に飲み物。

 初めて見る物も多いのか、クパン村から来た面々は「結婚おめでとう」と各々一言言った後は舌鼓を打つのに夢中だ。


 頑張った甲斐もあったと、思わず笑ってしまう。


 日本の音楽を流しながら、みんなの和気藹々とした話声が聞こえてくる。


「二人とも改めておめでとう」


 そう言って声をかけてきたのはルベルト。


「ありがとうございます」

「ありがとうございます、ルベルト上皇」

「ただのルベルトで良い。この場はほぼ、地位など有って無いようなものだろ」

「まぁ、今日は無礼講ってしてくれるとありがたいです」


 俺はそう言うとルベルトは首を横に振った。


「今だけでなく、常にという意味でだ。神に至れる人間と、神の依り代三人の宣教師と、夏の国の王子やら副団長やらが、身分も関係なくやっているのだろう? ここで身分をどうのと言い出す貴族が居たら、吾は思いっきり嘲笑ってやるな」

「…………宣教師の三人がまぁ、それなりに位が高いのは分かるし、バロンやタンガも同じでしょうけど、俺もっすか?」

「この世界で一番の危険人物が何を言う?」


 ルベルトは思いっきり呆れたように言って、ゴドーも苦笑を一つしてるだけで、否定してくれない。どういうことかな~?


「君がその気になったら? この世界の人間は、何秒生き残れる?」


 ジト目の俺にルベルトは静かにそう返す。


「はっはっはっはっは~。やだなぁ、ルベさん。何秒だなんてそんな」

『一秒有れば、事足りますね』

「そうなのか!?」


 ゴドーが驚いた様に俺を見てくる。

 シム! 余計な事をゴドーにまで言わない!

 ルベルトは不思議そうにゴドーを見て、俺を見た。


「あーうー、まぁ、殲滅魔法がありますからね、数秒で可能かも知れませんね」

「それで、殲滅魔法持ちは何秒あれば殺せるんだ?」

「こんな祝いの席でそんな物騒な話、止めません?」

「なるほど、確かにこれは吾が無粋だったな」


 苦し紛れに言ったらあっさりとルベルトは頷いてくれた。そういう所、ホントありがたい。


「それにしても太陽と月の依り代とは……。君が、べた惚れなのも分かる気がするな」


 ゴドーを見上げて、苦笑を混じりにルベルトは言う。


「やらないからね?」

「そのような事はしない。絶対に何があっても、だ」

「うん。そういう意味ではルベさんは一番信用出来る」

「……そう言って貰えて嬉しいよ」


 「よく言う」と言いたげな表情に、俺は笑う。ゴドーは俺達の様子を見て、ちょっとだけ嬉しそうにしてた。


「何?」

「いや、思ったよりも仲が良さそうなので安心したというか」

「ああ、そうかもね。俺からしたら、ルベさんは『絶対にゴドーには手を出さない』って分かってるから」

「自主的に護衛をしても良いぐらいだぞ」

「ですよね~」


 わかり合う俺達。

 うん、ステータス見せた分、話が超スムーズ。


「でも、まぁ、さっきも話したけど、ある程度の苦難は自分たちで乗り越えないと人生面白くないよねって事で」

「ああ、分かってる。吾は今日知り得たことは全て口を閉ざす」


 やはり、わかり合う俺達。ゴドーは不思議そうに首を傾げている。


「ルベさんが本格的に俺達に協力しちゃうと、何もかもお膳立てされてて、俺達のためにならないからさ」

「ああ、なるほど、そういう事か。エドは偉いな」

「……えっと、他人事のように言ってますが、ゴドーさんもですよ?」

「ん? 分かってるぞ? むしろ、ここにいる全員に対してだろ?」

「……まあそうだけど」

「君は割と最初からそうだったじゃないか」


 そうだったっけ?


 と、首を傾げたが、ゴドーは笑っている。


「さて、あまり主役達を独り占めしてるのも悪いかな? 今日は本当におめでとう」


 そう言ってグラスを軽く掲げて、俺とゴドーと再度乾杯するとルベルトは立ち去っていく。


「ねぇ! お兄!!」


 すぐさま、セリアが走ってきた。どうやら話しかけるタイミングを伺っていたようである。たぶんルベルトはそれに気づいたのだろう。


「ゴドー借りてって良い!?」

「え!?」

「悪いようにはしないから!!」

「不穏な響きしかねぇぞ、それ」

「あと、例の魔道書貸して」

「……何する気?」

「いいじゃん」


 ニコニコと笑っているけど、お前何か企んでいるよな? 絶対。


「例の魔道書というのは、業務魔法のか?」

「そう!」

「それなら、たぶん私が出せるぞ」

「え!? そうなの!?」

「ああ、色々あって、エドからそんなに離れなければ、私でも出せる」

「じゃあ一緒に来て!!」

「おい! こら! セリア!!」

「悪いようにはしないってば!!」


 そう言ってゴドーを引っ張っていく。


「ゴドー! あんまりセリアを甘やかすなよぉ~!!」


 素直について行くゴドーの背中にそう声をかけた。

 ネーアやニアまでついて行くからまぁ、変な事にはならないだろうけど……。心配だなぁ。


「結婚おめでとう」


 そう声をかけられて振り向くと今度はミカが居た。


「ありがとう」


 グラスを叩き鳴らし、互いに一口飲む。

 あ、俺はゴドーに付き合って、ジュースです。


「君さ、本当に、ゴドーの事、怖くないの?」

「……怖いってなにが?」

「ボク達は、両親はいないよ?」

「それについては別段気にしてねぇよ。子供時代が無かったっていうのも。有る意味、俺も似たようなものじゃん? 四歳からあっという間にこんなに成長しましたし?」

「それは種族的なものだろ?」

「んー……でもさ、俺、思うに、どの種族も、原初と呼べる人類は神の依り代と同じ生まれだと思うよ?」

「え?」

「丁度ルベさんいるし聞いてみたら?」

「……本当に?」

「うーん。確認とったわけじゃないからなんとも言えないけど、でも、どの国に住むかって闘った時の話を聞く限りそんな気がするんだよね~」

「……そう。もしそれが本当にそうなら、少しは気楽になるね」

「だろ?」


 笑うと、ミカも苦笑して、グラスの酒を揺らしながら呟く。


「たぶん、今頃、山の方でも、大騒ぎだと思うよ」

「へ?」

「神の依り代が結婚して、ましてや子供まで居るって言うんだから」

「そう、かな?」

「そうだよ。今まで結婚した依り代が居ないわけじゃないけどね。でも、全てを話して、というのは初じゃないかな」

「……そうなんだ」

「そうだよ。結婚しても、子供が産めるわけじゃないし、ハーレムの一部に入れて貰うってのが精一杯。だから、わりともうみんな諦めてた。ボク達は結婚出来ないって」

「でも、ゴドーはそれを全て覆した、と?」

「そうだね」

「……まだ、ゴドーの事嫌い?」

「……分からない」


 ミカは答えて、俺を見る。その表情にあるのは困ったという顔だ。


「ボクがゴドーを嫌いだったのは、神に愛されていたからだ。ボクは愛されていないのに、二柱に愛されている彼が羨ましかった。だから嫌った。でも、それはボクの一方的な勘違いだった。散々逆恨みだと言われたけど、自分でもそれを分かっていたけど、勘違いだと分かった今、自分の気持ちの整理をどうすればいいのか分からない」

「仲良くやればいいじゃん」

「まあね、今まで通り(・・・・・)仲良くするけどね。……そういえば、君は今後、ゴドーに手を出すヤツは許さないって言ってたけど、その前のやつらについてはどうするの?」

「前?」

「ゴドーはヒューモ族だよ? 君以外とも散々してると思うけど?」

「…………結婚を祝う席で言う事か? おい」

「今後のために聞いておこうかと思って」

「何がどう、今後のためなんだよ」

「だって、ねぇ? ここは王都だよ? 昔、ゴドーはここに勤めてたんだよ? それなりに知り合いだっているでしょ」

「それは……そうだけど」


 口ごもる。考えたくもなかった事を言い出しやがって。


「……無罪放免……としか言いようがないじゃん……。俺と付き合う前だし、下手をしたら俺が生まれる前の話だし……」

「そう。良かった」


 安心したように笑うミカ。俺はそんなミカを見上げて苦笑する。


「同僚の心配?」

「いや、自分の身の心配」

「え……?」


 思わず固まる俺に、ミカはにっこりと笑った。


「神の依り代同士なんでね、その方が手っ取り早いんだよ」

「……………………」

「いやぁ、無罪放免で良かった良かった」

「おい、ミカ」

「今後は手を出さないから安心してよ」

「……いや、それも有るけど、お前、ゴドーの事嫌ってたんだろ?」

「嫌ってても、そうする方が楽なんだよ。聞いてるかどうかは知らないけどね。興味があるんだったらゴドーに聞いてみたら? 君が嫉妬で地団駄してる所を想像してボクは今から美味しい酒を飲むから」

「悪趣味だな、オイ!」


 思わずそう口にするとミカは寂しげな顔を見せる。


「だってさぁ。羨ましいんだよ。分かる? ボクが切望してた事をゴドーは叶えちゃったんだよ? ちょっとぐらい良いだろ? ゴドーにやると君は本気で怒りそうだから、君にしてるんだよ」

「……それはそうだなぁ。ゴドーに嫌味ネチネチされるより俺をからかってくれる方がいいけどっ」

「……それに、ちょっと思うよ。出会う順番が逆だったらって」


 ぽつりと零された言葉に俺は言葉を失う。

 それは、どういう意味? とは聞けなかった。聞けば、後悔しそうで。

 ミカは笑って、ごめんね。と謝った。


「何はともあれ、結婚はおめでとう。一応、この言葉は心からの言葉だよ」

「……それはどうも」

「君に神のご加護があらんことを」


 ミカはそう口にする。

 キラキラキラと何かが降ってくる。


「なにこれ? っていねぇし」


 どうやらちょっぴり見とれてたらしい。ミカは居なくなっていた。

 後でゴドーに聞いてみよう。


『どちらをですか?』

 ……今の珍現象だよ。分かってるよ分かってるよ! セルキーでの事だろ!? 聞けるわけねーじゃん!!


 シムに怒鳴り返し、気を紛らわすために、肉を食べ比べてると思われるタンガとシェーンの所に向かう。


 あ、タンガの体に隠れて見えなかったけどルベさんもいた。


「この肉に合うのはこの酒じゃないか?」

「いや、こっちの酒の方が」

「この肉ウマシ! こっちの肉と甲乙つけがたし!」


 あ、やっぱり近づくの止めよう。

 近くで見たらわりと目がマジの飲み比べ食べ比べだった。


 進路方向を直角に変えて、周りを見る。割とみんな楽しげに料理を食べてる。

 兄貴達もリスかってくらい顔をパンパンにしてる。

 父さんも、母さんにコレが美味しいと言って食べさせてたりしてる。

 農家の息子さんは、タンガとルベルト達の飲み比べに参加したりと、わりと楽しそうで、俺の表情も緩む。

まあ良いか、と俺も料理に舌鼓を打つ事にした。





第2章の終わりを大まかな流れでなんとか書き上げました。

後は加筆と修正と誤字脱字か……。……多いな……。

やる事いっぱいだけど、流れはこれ以上変わらないので、第2章が終わるまで、また朝8時の予約投稿に設定したいと思います。

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