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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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お祝いをしましょう①

今回はさくさくっと進む?



 あれから『結婚祝賀会なら母親も呼んだ方がいいんじゃないか?』と言う話になり(言い訳じゃないけど、後日きちんと報告に行くつもりだったよ!)、じゃあ、仲の良かった農家のおばちゃんと、鍛冶屋の夫婦も呼びたいな、となり、お客様が増えました。


 ゴドーの方も誰か誘うかと聞いたら首を横に振られました。

 遠慮してるのかな、と、思ったけどそういうわけでもないみたいで、まぁ、俺も友達少なかったけど、ゴドーも少なそうだよな、と思い、「ああ、依り代だからか」と、思い至った。きっと、その事が頭にあって、距離を無意識に作っていたのだろう。

 そう思うと同期だと思われる依り代二人はすでに参加決定。これ以上呼ぶ人がいない。という気持ちも何となく解った。


 一度転移でクパン村に行き、招待する人達に、今日の夜やるから! 宿泊施設も用意してるから。と言うと、『今日!?』と、返されたけど、またあとで迎えにきます。最低限の着替えだけでいいよ。とだけ伝えてまた城へと戻り、バロン達へと連絡。ゴドーと買い出しデート!(超・重要!!)

 幸せでしたよ! もう大興奮でしたよ!


「おっちゃん、今日ね俺と彼女の結婚記念日なんだ! パーティーするんだ! おすすめの食材とかってある!?」

「エド……」

「お! そいつはおめでとうさん!! お祝いか、なら、馬頭鯛なんてどうだ?」

「おいおい、それよりもこっちのコーコーハクハクの方がめでてぇぞ!」

「両方頂戴!」

「「よしきた!! まいどあり~!」」


 なんてやりとりが繰り広げられたせいで、隣でゴドーが眉間を押さえてたけど、俺は気にしない~。

 金なら腐るほどあるし~。


 ゴドーもそれが分かっているのだろうから最初は、特に煩く言ってこなかった。

 しまいにゃ、俺に買わすために「嫁さんべっぴんだなぁ!」なんて飛び火してた。

 べっぴんだけど、黒子使ってるから、たぶんべっぴんの印象ってないと思うんだけどねぇ。


「べっぴんでしょ!」


 もちろん俺は乗っかるよ!


「べっぴんさんにはこいつがおすすめだぞ! この果物を食べたら、べっぴん度が二割増し!」

「ほうほう」


 と、興味が引かれる俺をゴドーが行くぞと引っ張っていった。

 

「君はなんで自ら、カモになる……」

「だって、めでたいじゃん。嬉しいじゃん。こんな時にこそ、金を使わなきゃ。皆に祝って貰って俺ハッピー、みんなも沢山売れてハッピー。良いことづくし」

「……エド、君なぁ……」

「今日だけは許してよ」


 そう言って、次の店へとゴドーと手を繋ぎながら行く。

 今日だけと告げたからかゴドーはため息をつくだけそれからはもう何も言わず俺の我が儘に付き合ってくれた。




 自らカモとなった買い物が終わって、料理の準備となったわけだが、ここで、農園での毎朝の恒例が役に立った。

 分身による、一斉料理。


「お兄、人間辞めてなーい?」


 なんてセリアに言われたが、そんな事ねーよ! と、だけは返した。まだ人間辞めてないから。辞めてたらたぶん、神になってるから。


 そうやって準備を終えて、黒天馬が引く馬車と共に村まで転移し、みんなを馬車に乗せる。


「うちの息子も一緒に行ってももいいかしら?」

「どうぞー。かまいませんよ。部屋はいっぱいあるので」


 農家のおばちゃんの所は、旦那さんと丁度行商から帰ってた息子さんも参加、鍛冶屋の夫婦、後はうちの家族の計九名。

 シムが今頃合計人数をゴドーに伝えてくれてるだろう。客室の準備よろしくお願いします。

 彼らは馬車に乗り込み、俺はくーとろーに城まで宜しくと、声をかけて中に入る。

 御者が居なくても彼らに任せておけば問題ない。

 扉を閉めると彼らは走り出し、やがて空を跳び始めたのか、振動は完全になくなった。

 でも、皆おしゃべりに夢中で今のところ気づいていない。


「えーちゃんのお嫁さんってどんな人?」

「えーっとねー」

「短命種と結婚するぐらいだから、どーせ、ドブスだよ!」

「そうそう。もしくは向こうも短命種とか」

「こら! 二人とも!!」


 兄貴ズの言葉に母さんは声を張るが二人は気にした様子はない。

 俺の口元には笑みが浮かんだ。


「俺の嫁さん超美人だぞ!」

「「嘘付けー!」」

「じゃあ、本当に美人だったらどうするんだよ」

「今までイジメてごめんなさいって謝ってやるよ!」

「その代わりブスだったら、今まで生意気言ってごめんなさいって謝るんだぞ!」

「二人とも! いい加減に」

「いいよ、母さん。その勝負乗った!」


 ニンマリと俺は笑った。

 負ける要素絶対にねぇもん。


 そして、楽しくおしゃべりしている間に、というか、わりとあっという間に城についたらしい。

 着地したのだろう。ドッゴンといった感じで馬車が大きく揺れた。

 着地って難しいんだよねぇ。

 っていうか黒天馬って本気で走ったらかなり早いんだな……。


「さって、着いたよ」


 馬車が完全に止まったのを確認し、俺は扉を開ける。

 みんなは馬車から降りて、大きなお屋敷ね。と言いながら建物を見上げている。

 大きすぎる物ってさ、近くで見たらいまいちサイズが分からなくなるよね。

 って、事でみんなはただの大きな屋敷だと思ってくれてます。

 まさかさらに奥に厚みがあるとは思わないだろう。


「さ、入って」

「お帰りなさい。エドさま。いらっしゃいませ、お客様」

「お帰りなさい。くー達を戻してきます」


 バロンが軽く会釈をし、タンガが黒天馬達を連れて行く。

 みんなは戸惑いながら中を見たり、タンガやバロンを見てる。


「えーちゃん、ここは? 高級宿屋?」

「いや、俺達パーティーの拠点?」

「え? パーティーの持ち家って事?」

「まぁ、うん。そうなるね」


 あまりそこら辺は深く聞かないで貰いたいなぁ。


「あ、お兄帰ってきた」


 セリアが駆け足で来て、客室の準備出来てるよ~。と言ってくる。


「「ブース!!」」


 兄貴ズがセリアに指を向けて、そう発言する!

 なんてことを!


「なんですって!?」

「セリアさん、すみません! 俺の馬鹿兄共が!!」


 やめよーぜー! いくらなんでもよぉ!! せめて俺の嫁か確認してからにしろよ!!


「兄!?」


 怒りながらも驚きを俺に見せる。


「ああ……、そっか、お兄って短命種だったっけ」


 ちなみに兄貴ズは母親から本気のゲンコツを貰ったようで頭を押さえてのたうち回ってる。


「ごめんなさいね、うちの子が」

「……いえ」


 まだ不満は残るが、痛そうなゲンコツによる制裁を受けてるからか、セリアはとりあえず怒りを収めたようだ。


「あと、彼女は俺の嫁さんじゃないです」


 のたうち回る兄貴達を見ながら俺は一応事実を告げる。


「は? 当たり前でしょ?」

「いや、それが」


 馬車での賭を説明をし、セリアは納得したように腕を組んだ。


「で、そのせいでアタシはブス呼ばわりされた、と」

「真に申し訳ございません」


 平身低頭にて謝罪をする。こういう時は女に逆らうな!


「はぁ、まあいいわよ。別に。他のみんなに比べたらブスだもん」

「そこで拗ねるな~。大丈夫、平均よりも可愛い」

「平均よりもは余計よ!」


 そんな会話をしてる内にネーアとニアがやってきた。


「エド様、お客様を先に客室にご案内しますか?」

「あー、そうだね……」

「ねぇ、お兄ちゃんズ」


 セリアがどこか含みを持った言い方でうちの馬鹿兄二人を見てる。


「彼女には無いんだ?」


 根に持ってるなぁ。まぁ、気持ちは分かるけど。


「……あの人がエドの奥さんのわけないし」

「そうそう」

「ふーん。ニア、ゴドーは?」

「いま、上で、シェーンおにーちゃんタチとおはなししてたよ」

「呼んできて」

「はーい」


 ……セリアが会話の主導権を握ってるな……。俺は黙っておこうかなぁ。怖いし。


「ねぇ、えーちゃん。彼女がパーティーリーダーなの?」

「え? いや、どちらかというと、俺だけど」

「そうなの!?」

「「ばっかじゃねーの!?」」


 俺と母さんの会話を聞いてた兄ズがまた声を上げる。


「短命種にパーティーリーダーを任せるとか!」

「自殺行為ってやつだぞ!!」


 俺を指さし、そう口にする兄貴に、バロンが俺を見て尋ねる。


「そういえば、エド様って今、実年齢いくつなんです?」

「……まだ六歳です」


 思わず視線を逸らす。

 いや、だってねぇ……。


「六歳かぁ。日本なら、犯罪ね」

「そうだな。成人してるけど外見年齢十四でも十分犯罪だよな」


 セリアの言葉に俺も同意する。

もしかして、お兄それで、その外見年齢になったの? なんて聞かれたから、たぶん、無意識のうちにそれもあったのかも。なんて話をしてたから、横で、『外見年齢』からか、兄貴ズの話もそれに移っていく。

 短命種にとって外見年齢の成長は、寿命が終わりに近づいているという事で、残り寿命はあと六十年ぐらいだろうなんて、兄貴ズが何故か勝ち誇った顔をしていた。母さんの悲しげな表情とは対照的である。

 そこまで嫌いか? と思ってもいいのかもしれないが、疑問も浮かんだ。


 兄貴達は本当に、人が死ぬという事はどういうことかを理解しているのか。ということだ。


 俺、よくよく考えればこの世界の葬式って一度も見たことない。村で葬式があったという話も今の所聞いた事はない。

 なんというか兄貴達はそれなりに歳を取ってるけど、でも、経験する事は子供が経験するような物のみ。周りも兄貴達を子供として扱ってるわけだし。

 ……うーん。どうなんだろうな。


 でもそれとは別に、母さんだけにでも、見た目だけが短命種なのは言った方がいいのかどうなのか。

 そんな事を悩んでいると、ニアが戻ってきた。その後ろには、神官三名が揃っていた。

 ゴドーを手招きする。


「えー、ではご紹介します。俺の奥さんです」

「本日は、突然お呼び立てして申し訳ありません。エドの妻となりました宣教師のゴドーと申します」


 ぺこりと軽く頭を下げるゴドー。

 あらあら、まあまぁ。と奥様方はいかにも恰好の話相手を見つけた、みたいな感じだ。


「「で?」」


 俺とセリアは、硬直している兄貴ズに、結果を促す。


「う……」

「な……」


 ぱくぱくと金魚のように口を開けてる兄貴ズ。


「「エドのくせに生意気なんだよ~!!」


 なんて言って逃げ出しやがった。

 

「バロン、追いかけて、時間まで客室放り込んで置いて」

「かしこまりました」


 兄貴ズを追いかけるバロン。

 

「じゃあ、みんなを客室に案内……」

「それはこっちでするからお兄はさっさと着替えてきなよ、一応主役なんだから」

「一応って、何だよ一応って」


 どうせ結婚式の主役は花嫁だけどさ、たぶん本人そんなつもりこれっぽっちもないと思うぞ。なんて思いながらも、俺は大人しく着替えをしに部屋へと向かった。





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