熱
今回はちょっぴり長い。
二つに分けようかなって思ったけど、分けにくいのでやめました。
ルベさんと協力関係を結び、本日の結婚祝いというか披露宴でいいのだろうか? にも招待する。
俺は表裏一体の世界から地上へと戻り、空を見上げる。
神に至るのだとしても、俺らしさは失いたくないな。なんて思いながら俺は改めて、日本人だった頃の自分を思い出す。
母親が居て、妹が居て、父親は小さい頃に亡くなって。母子家庭で育ったから家事は主に俺がやってて、料理は割と得意だったこと。
女顔がコンプレックスで、からかわれた経験が重く心に残ってたこと。
……奥さんが居たこと。子供、たぶん息子が居たこと、孫も居たこと。社畜だった可能性があった事……。
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耳に一瞬、誰かが呼ぶ声が聞こえた気がした。
前世の名前を呼ばれた気がした。誰の声かは分からない。
でも、もしかしたら……。
「……ごめんなさい」
姿も思い出せない女性に謝る。
息を吐いて、頬を軽く何度も叩き、気持ちを切り替える。
とりあえず、今、俺が出来る事と言えば……。昔の俺を思い出す事と、それと……、ああ、あまりゴドーの負担にならないように、性欲をちょっと抑えなきゃ。
これで、例の繁殖期ってやつも抑えられると良いんだけどなぁ……。はぁ。
なぁ、シム。シムから見て、今の俺は、昔の俺に戻っていると思うか?
『ゴドーさまのために、全てを切り捨てるという事はないと思います』
昔の俺に戻っているわけではないのか。
『ゴドーさまのために、人間を捨てる覚悟は持っているので、昔とはまた違うと思います』
ああ……、なるほど。確かに。でも、まぁ、そこはそのままでいいか。
『はい、よろしいかと思います』
シムの回答に俺の口元には笑みが浮かんで、じゃあ帰るか、と転移した。
城に、というかゴドーの元へと帰る。
「エド? お帰り。早かったな」
俺を見上げて、ゴドーが微笑んだのを見て、涙が浮かびそうな感覚を覚えた。
もし、何も気づかずにあのままだったら、そのうち、こうやって笑って貰えなかったのかも知れない、と。
身をかがめ抱きしめる。
「……野暮用を終わらせてきただけで、帰って来ちゃった……」
流石にあの気分のまま買い物に行く気にはなれなかった。
「そうなのか?」
ゴドーは俺の頭を撫でてくる。
「何か、有ったのか?」
「……うん。ちょっとだけ、有った」
自分が思ってた以上に変わってただなんて。
人ってこんなに簡単に変わるんだなって驚いた。
特殊な例なのかも知れないけど、でも、早めに気づいて良かった……。
「そうか。言いたくないのなら言わなくても良い。でも、私にどうして欲しいか言ってくれると助かる。エドを慰めたいし、助けたいからな」
俺の可愛い人は、そんな事を平気で言う。最初っからそうだけど、ほんと、良く照れないよね。
俺はちょっぴり笑って、ゴドーを抱き上げ、代わりに俺がイスに座り、ゴドーは俺の膝に座らせる。そして力一杯抱きしめた。
ゴドーは何も言わず俺の背中を撫でる。
「ねぇ、ゴドー……。俺、さ……。ゴドーの事が大好きで、愛してて、ゴドーが手に入るんだったら、前の俺、前世の俺は無くなっても良いって思ってたんだ」
しゃべりつつ、違和感に気づく。
「そしたら結構本気で、前の俺、消えかかってたみたい」
ゴドーを抱きしめているのに、ゴドーに抱きしめられているのに。
「……たぶん……今はもう、大丈夫だと、思うけど……」
目を閉じる。触れる肌に意識を集中する。
しゃべる口とは別に、俺は、戸惑い、混乱しながらゴドーを抱きしめている。
「ちょっとだけ、怖い。ゴドーが好きになった俺は、前世の俺が有っての俺だし、それが消えたら、俺は……」
自分が死ぬよりも、ゴドーの愛を失う方が怖い。
そのはずなのに、そうだったはずなのに……。
「ゴドーが好きになってくれた俺じゃ無くなるんじゃないかって……」
違和感をもうごまかし切れずに、俺は口を閉ざす。
感じない。
ゴドーを抱きしめていても、ゴドーに優しく抱きしめられて撫でられていても、感じない……。
幸せで、温かくて、大事な気持ちを。
そんな馬鹿な……。
愕然とした。
あれほど有った熱を……。
---ゴドーに触れられるだけで、温かい気持ちになった。
---ゴドーに触れて貰えるだけで幸せだった。
今は微塵も感じない。
なんで、どうして? だって、さっきまではあんなに溢れていた。
あんなに……、それこそ、ゴドー以外を全て切り捨てても構わないって、冷酷に決断すらしかけたのに。
思い出したから?
前の俺を引きずり戻したから?
ヒューモ族と相容れないと言われた日本人の俺を取り戻したから?
冗談……だろ?
前の俺が強くなったら、ゴドーの事を好きじゃなくなるのか?
あれほどあった熱が、嘘のように静かだ。冷め切ってる。
ゴドーを抱きしめてても、何も感じない。
分からない。自分の感情が……。なんでこの状況で、まだ落ち着いてられるんだよ。
「なぁ、エド。私も、君と友達だった頃と、きっと変わっていると思うぞ」
「え?」
「自覚したらもっと変わった」
そう言ってゴドーは俺の額に唇を落とす。
……やっぱり、何も感じない。
嫌だ。
俺の心はそう叫ぶのに、熱は戻ってこない。
これじゃ、まるで……。
心変わりした自分を必死に誤魔化してるようじゃないか。
ゴドーの温もりを感じるのに。柔らかくて、甘い匂いを感じるのに、幸せを感じない。
熱を感じない。
ゴドーへと向いていた重すぎる愛を感じない……。
心臓、動け。
「君の事が愛おしすぎて、お役目すら忘れてしまいそうになって。でも、そのお役目があったからこそ、私はエドを助けられたのだと誇りを思い出せれば、割とすぐに落ち着いた。もちろん、エドを中心にした私の想いは変わらなかった。だから、エドが言うとおり、前世の君の人格が消えかかっていたのだとしても、それを思い出したのなら、大丈夫じゃないかな? と私は思う」
優しい笑顔でそう俺に言ってくれた。その笑顔があまりにも優しいから俺は何も考えずに口を開いた。
「それで、ゴドーへの愛が、薄れてしまったのだとしても、いいの?」
なんでこんな事を口走ったのか。言ってすぐに後悔した。
でも、放たれた言葉はもはや取り返しが付かなくて、ゴドーの表情が驚きになり、悲しそうに微笑まれた時、心臓が握り潰されたと錯覚した。
「そうか、それも仕方が無いかも知れないな。この愛し方は、ヒューモ族のものだから」
目尻から涙をこぼして、それでも、俺を責めるのでもなく、そう言って微笑む。
違う……。
浮かぶのに、口から出ない言葉。ゴドーの流した涙に俺は固まってしまって動けなかった。
「それでも、いいよ。それでも、私はエドの傍に居て、エドを愛し続けて良いのだろ?」
なんで、そうやって微笑むことが出来るのだろう。
俺は君を傷つけたのに。
「違う、ごめん。違う……」
ゴドーの頬にある涙の痕を拭う。
自分自身の馬鹿さ加減に嫌気がさす。
「ゴドーを泣かせたかったわけじゃないのに、悲しませたかったわけじゃないのに、あぁぁぁぁ、俺、何やってんだろ」
前も馬鹿な事やって後悔したってのに、これだ。
それともアレは最終的には俺の喜びになったからのど元過ぎたとでもいいたいのか。
ああ、そうだな、この馬鹿っぷりは、そんな馬鹿っぷりだろう。
あんなこと言われて、悲しまないはずがないのに。
「不安……だったんだ。ただ、漠然とした不安が、あって、それで……怖くなって……。うぅぅ……ごめん~」
ゴドーをもう一度抱きしめる。
泣かないでくれ。泣かせてしまったのは俺だけど、でも違うんだ。泣いて欲しかったわけじゃないんだ。ああ、でも、あんなこと言われて、傷つけないわけないじゃないか。何やってるんだよ、俺。何がしたかったんだよ、俺。
頼むから、戻ってきてくれよ!
「不安?」
耳元でゴドーの声がする。柔らかい女性の声。初めは聞き慣れなかった声。今は愛おしい声の一つ。
そう思うのに、思うのに……。思うだけ。
嫌だ嫌だいやだいやだいやだ。
「ああ……。もしかして、変わってしまった自分は愛して貰えないとかそう思ったのか?」
心臓が跳ねる。
そう、きっかけはそれだった。
ゴドーに愛して貰えないのが嫌で、前の俺を思い出した。呼び戻した。
---そしたらゴドーへの想いを失った。
「多少変わったくらいで、私のこの想いは消えないよ。神の警告もあったし、不安に拍車をかけたのかもしれんな」
ゴドーはそう言って俺から体を少し離し、顔を見つめてくる。
「喩え、君が神になった時、私への想いが無くなったとしても、私は変わらず、片思いをし続けるよ。死ぬまでずっと」
「……俺が、もし、ゴドーを嫌いになったら?」
「悲しいけど……。エドへの想いは変わらない」
「……もし、俺が他の人を好きになったら?」
「もともと、私の想いが成就するとは思っていなかった。だから前の状態に戻るだけだ」
「……それでも、俺を愛し続けるの?」
「ああ。愛し続けるだろうな」
ふわりと笑うゴドーに、俺はなんと告げれば良いのか分からなかった。
こんな男、そこまで想う価値無いよ?
そんな言葉すら浮かぶのに、口に出来ない。
口にしたくない。
ずっと俺を想っていて欲しい。
そんな自分が、分からない。自分はゴドーへの熱を失ったとしても、ゴドーからの熱は欲しいというのか。
「でも、そうだな……、そうなったら、エドが殺してくれ」
「え?」
「私の想いが邪魔で、私の存在自体が邪魔だと思うのなら、エドが私を殺してくれ」
「…………何を、言って……」
「良いだろ? 私はきっとどうしようもなく君を想い続ける。さっきも言ったが死ぬまで想い続けるだろう。君に嫌われ、疎まれて、それでも想い続けるよりは、愛する君の手に掛けてもらえる方が、その私にとっては一番幸福な終わり方だと思う。……もちろん、それすらも嫌だと言われるほど、嫌われている可能性もあるけど」
…………なぁ、ゴドー……。なんで、お前は俺をそこまで想えるの?
「俺に……そこまでする価値なんて、ない」
こんなにあっさりと変わってしまう俺に、価値なんてない。
「価値? 私がエドに対し、どういう価値を持っているか、エドに難癖付けられる覚えは無いぞ? 価値というものは、欲しいと思う人が付けるものだ。私にとって、エドはそういう存在だ。君にも文句は言わせないし、神にも言わせない」
「…………」
「……ふ……。さっきからずっと思っていたのだけど、そんな顔をするぐらいなら、『設定』を切って、素直に泣けば良いんじゃないか?」
ゴドーが俺の頬を撫でながらそんな言葉をかけてくる。
設定を切る?
思うと同時に、ふっ、と何かが解かれる感覚がして、目の水位が上がってくる。
それはすぐに決壊し、瞼の縁を越えていく。
ああ、そうか……。前に、泣かないようにってしたんだった。
くそう、シムめ、ちくったな……。
思い出し、ゴドーを抱きしめる。
泣き顔を見られるのは余り好きじゃ無い。
「俺が、悪かったから……。そんな事いうの、止めてくれ」
考えたくも無い。俺がゴドーを殺すなんて。そんな未来、要らない。
「……えど、さすがに、ちょっと苦しい」
どうやら、思ったよりも強く抱きしめていたようだ。ゴドーからそんな声がかかり、少しだけ緩める。
それでも離す事は出来ない。離してしまったら、なんだかゴドーが消えてしまいそうで、怖い。
自分自身、訳が分からない。
愛しているの? 愛していないの? ゴドーを抱きしめていても、あれほどあった熱は戻ってこないというのに。居なくなるのは嫌だというのか。随分と身勝手ではないか。
まさか友達として、傍に居て欲しいと、今更願うとでもいうのか。
「……エドはよく、『俺の愛は重い』と言うだろ? 私は月の依り代の先輩に、『愛は狂ってこそ』だと言われた。私もそうだと思う。だから私の愛はきっと狂っているのだ。だから、エドがエドなら……、ああ、こういう言い方をすると余計勘違いさせるか……、そうだな、エドの魂……なのかな? 私の全てが欲しいと言った君に、私はこの心は全て差し出すといった。私はそれを受け取って貰っているつもりだ。だから、性格が変わっても構わない。君がどんな風に変わってしまったとしても、私は君を愛し続ける。喩え、君が、意味もなく、理由すらもなく、世界中の人を殺したとしても、その中に私が含まれていたとしても、私の想いは変わらない」
ふわと、空気が微かに耳元で動いた。
「エド、愛している」
耳元で聞こえる声。
「こんな私を許してくれ」
「……なんで、ゴドーが謝るんだよ」
謝らなきゃいけないのは、俺の方なのに。
そう思って顔を上げる。すぐ近くにゴドーの顔が有って、自然と唇が吸い寄せられる。
触れて、重ねて、絡める。
幸せ。
---の、はずだった。
それでも、朝まであった、あの熱は戻ってこない。
嫌だ。怖い。恐怖すら、浮かんできた。いや、恐怖なんて今更だ。むしろ遅いぐらいだ。
失いたくないのに!!
しかし、ゴドーも、何かを感じ取っているのだろう。
するりと舌が戻っていき、唇が触れるだけになる。キスが、終わってしまう。
『マスター。ゴドー様を抱いてください』
でも、シム。ゴドーに負担が。
『マスター。優先順位を間違えないでください』
それは、強制力すらありそうな強い言葉だった。否定を許さないという言葉。
シムが俺に対し怒っているという事。
俺は訳が分からず、混乱すらしてしまいそうだったが、それでも、優先順位を間違いたくなくて、ゴドーを失いたくなくて、ゴドーを愛し続けたくて。
離れていく唇を追った。
ゴドーは少し驚いたようだったが、俺を受け入れてくれた。
抱きしめて、触れて、抑えていた欲求を解き放つ。
そうして俺は、シムがそう言った理由を知る。
ゴドーは蕩けきった顔で俺の腕の中で、休んで居る。
かわいい。なんて想いと共に、失ったんじゃないかという熱が胸をくすぐる。
つまり、俺は、ゴドーに負担を強いるか、真面目にハーレムを作るしか無いという事か。
ゴドーを抱きしめながらそんな事を俺はまず思った。
先ほどの、ゴドーを抱きしめても何も感じないという、愛が消えてしまったのかと焦った、異常事態の原因は、消えかかる前世を引きずり戻した事ではなく、ハーレムは嫌だし、ゴドーへの負担を軽減させたいと性欲を抑えた事だった。
つまり、なにか? 性欲=愛情とでもいうわけか? 片方を抑えたらもう片方も凍結されるというのか?
プラトニックな愛など認めない、と。
『夜伽の神が作った体、ですからね……』
ツキヨちゃん! マジ恨む!!
シムの言葉に、全ての元凶とも言える月の神に呪いすら吐きたくなった俺はきっと許されると思う。
……前世の頃、何かで読んだ。
人は心で人を愛するんじゃない。臓器で愛するんだ。と。
その時はなんだそりゃ、と思ったけど、なるほど、こういう事か、と理解した。
体が反応しなければ、心はついて行けないわけだ。
「エド…………」
「ん?」
掠れる声で、呼ばれて、首を傾げる。
ゴドーは俺を見て、それから、とても可愛らしい表情で笑った。
その威力は、俺の心臓と呼吸が真面目に一瞬止まったと思ったほどだ。少なくとも呼吸は完全に止まった。
くっ。さっきがさっきだっただけに、一撃一撃がクリティカル。
「悩み事は……解決したのか?」
「んー……したような、してないような……」
繁殖期に関しては今の所打つ手無しって事だし。
「……そうなのか? いつものエドが戻ってきた、と思ったのだけど」
俺の頬を撫でてゴドーは言う。
「あ、それでいうと、そっちの悩みは解決した。ゴドーへの負担を軽減させたくて、ちょっぴり性欲抑えたら、大事な感情の方まで、一緒に凍り付かせてたみたいで。ごめんな」
優しく抱きしめる。さっき、ゴドーが痛いと言った時、この人軽く言ってたけど、肋骨、ヒビ入ってたよ……。もっと早めに止めてくれ。いや、悪いのは俺ですけど。
でもそれに気づいた時、思ったよ。止めるって事は、それだけの事なんだよね、ゴドーの場合……。
ああ、ほんと至らない旦那ですみません。
なんて、自己嫌悪しているとゴドーは首を傾げた。
「私への負担軽減? そんなのしなくていい。されるのは、寂しい」
「~~~~!! ああーもぉー! 大好き~!!」
ちゅっちゅっちゅっ。と何度もゴドーにキスをする。ゴドーはくすぐったいと笑いながら、それでも、嫌がる事はせず、最後には俺に熱~いキスをしてくれた。
「……ゴドー、俺、これから買い物に行くけど一緒に行く?」
「一緒に行っても良いのか?」
ああ、やっぱり一緒に来られると不味いっていうのをさっきは感じ取っててくれたんだな。
「うん。野暮用終わったし」
「……そうか」
「心配しなくていいよ。ルベさんときちんと協力関係を結んできただけだから」
まぁ、その前にちょっぴり荒事がありましたが。
「そうなのか?」
「うん。今日の夕飯にも呼んだ。お祝いしようと思って」
「お祝い?」
「そう、俺とゴドーの結婚祝い。前みたいにみんなでぱーっとやろうよ。ううん、前よりもどーんと派手で楽しいのがいいな」
「派手に、か。エドがいうとちょっと怖いな」
「いや、そこで本気で心配しないでよ。あ、あとゴドーはお酒飲んじゃ駄目だからね」
「え?」
「飲酒はお腹の子に悪いのです」
「あ…………、そうか……そう、だよな……」
あぁ、しょんぼりしちゃった。でも、ごめん。こればっかりは我慢して、としか言いようがない。
ゴドーはお腹を撫で、それからしょんぼりを笑顔に変えた。
それだけで、見ているこっちも幸せな気分になって、ゴドーをぎゅっと抱きしめる。
「じゃあ、もう少し休んだら、買い物に行こう」
「うん」
「ここで、この世界でデートをするのは、初めてだな……」
「そうだね。楽しみだなぁ~」
ああ、やばい、ちょっとデートの事を考えただけで、顔がにやける。
「手を繋ぐのはありか?」
「腕を組むのもありですよ?」
「ふむ……。どっちがいいだろうか?」
真剣そうに悩むゴドーにちょっぴり笑えてしまう。
「なんだったらキスしてもいいですよ?」
「それはしない」
「ちっ」
ヒューモ族って、あけすけだけど、外ではキスもほとんどしないっぽいんだよねぇ。
農園でも、片手で数えるぐらいしかさせて貰えなかった。
そこらへんの倫理観はよく分からない。
……いや、もしかしたらそこらへんは月の神が何かしてるのかもしれない。あの人変な所で常識神……。
でも、この体の作りはマジ恨む。
下書きが……。間に合わないよぉ……。