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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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スキルの使い方。

タイトル、ルベルトとエド③にしようか、どうしようか迷った……。





「……突然、なんだ? 覚悟とは?」

「前に言ったじゃん、俺のことを知りたいのなら、直接聞けって。周りを巻き込むなって。まぁ、もっとも、今回は、ギリギリセーフみたいだけどね? でも、これが最後の警告だ」


 ルベルトの首に赤い線が現れて、それはやがて血を滴らせる。


「何をした!?」


 首を押さえ、後ろに飛びながらルベルトは叫ぶ。


「俺は何もしてないよ。でも、『表裏一体の世界』が絶対に安全とは言えないんじゃない?」


 俺の言葉に、ルベルトは息をのんだ。





 黒のみの世界。そこに、ルベルトは居た。

 首に、銀色に輝く刀を押し当てられながら。


「意識がこちらへと戻ったか? 何をしておる。我が神と、主の話は終わってはおらぬ。戻られよ。でなくては、この首跳ねるぞ?」


 侍が凶悪な笑みを見せる。

 その背後から、ルベルトの分身体の一つが、転移してきて斬りかかり、本体も距離を取ろうとする。しかし、分身体は裏拳一つで絶命してしまった。

 ルベルトの顔から血の気が引く。


「流石、攻撃超特化型」


 特化し過ぎてて使えないだけはある。

 転移してきた俺は、見た光景に苦笑混じりにそう告げると侍、柳と名付けたそれは嬉しそうに笑った。


「おお、我が神に主! こやつ、思ってた以上にもろいですぞ!!」


 おい、シム。神()主ってどういう事だ?

『私からも命令を出せるようにとしたら、妙な事になりました』

 シムが失敗するなんて珍しいじゃん。

『私が失敗したのではなく、柳の人格が可笑しいのです』

 シム、そこは素直に認めようぜー。


「主、即刻この首を跳ねましょうぞ」

『止めなさい』


 シムがそう命令を出したが、柳は取り合わない。


「大丈夫です。綺麗に落としてみせますぞ」

「止めろ」

「御意」


 しかし、俺が声をかけると柳は食い込ませていた刀を少し戻す。

 ……なるほど、一応俺の命令はきちんと聞くのか。


「控えてろ」

「御意」


 頷くと俺の斜め後ろに転移してくる。

 そして、主命を待つように膝を折って控えてる。


「……それは、なんだ(・・・)?」


 血が流れている首を押さえながらルベルトは、何かを含むかのように尋ねてくる。


「……『侍』だよ。ルベさんだって知ってるだろ?」

「『侍』……だと?」

「そう、攻撃超特化型の高位スキル『侍』だ」


 俺が何度も攻撃超特化型といっているのも理由がある。

 攻撃系・移動系スキルしか使えないのだ。

 治癒魔法も結界系スキルも使えない。

 攻撃は最大の防御っていうタイプだ。

 峰打ちで殺してしまうタイプだ。

 ぶっちゃけると上級スキルまでしか使えない忍の方が遙かに使い勝手が良いというか使える。

 ただ今回、相手がルベルトという事もあって、忍ではキツイだろうと思って、侍を初めて使ってみた。

 しかし、思ってた以上に使いにくいな。っていうか攻撃過多だ……。過多過ぎるとぼやきたいくらいだ。

 

 まさかシムが少し脅せといっただけで、こんな事になるとは。

 裏拳一発で、限界突破してるであろう分身体を倒すとは……。


「……吾が知っている『侍』と随分と違うな……」


 俺はその言葉に、笑みを返した。


「だろうね」


 そして、それが、俺とルベさんの強さの違いだよ。


 そんな思いを笑みに隠して俺はルベルトを見つめる。

 ルベルトは俺を忌々しげに睨み付けていた。

 そうして睨み合う事数秒、俺は笑みを強めた。


「たぶん、何度やっても無駄だよ?」

「…………そのようだ」

「いや、でも流石だよね。殺す事に躊躇いがない」


 ルベルトは俺を睨み付けながらも何度も殲滅魔法を使ってきていた。

 俺にはそれは効かないし、柳はスキルだから魂がない。


「さて。まず、一つ。ゴドーの事だけど。ゴドーは太陽と月の依り代だ。一柱の名前だけだと出てこないよ」

「…………」

「調べたんだろ?」

「すでに、吾の居場所がバレていたという事か」

「とっくの昔に」


 もっとも詳しくは聞いてなかったけどね。興味無かったから。

 ただ、いつでも殺せる準備を、シムはしてただけで、俺もそれを許可していただけ。

 その向けた銃口の引き金を引くかどうかは、ルベさんの行動次第だったのだ。


「今回は、俺の事を調べてる途中で、ゴドー自身に疑問が出て、ゴドーの事を調べた。だからセーフと判断した。良かったね、じゃないと今頃、首と胴体お別れしてたかもよ?」

「……」

「さて、分かってるとは思うけど。侍はいくら攻撃特化型と言っても、スキル保持者のステータスを超えない。つまり、ルベさんでは俺は倒せない。殲滅魔法が効かない以上、その他の攻撃魔法も無駄だろうね。試したいのなら試してもいいけど?」

「……止めておこう」

「そう?」

「お前自身の事は、お前に聞けば答えてくれるとの事らしいが、一つ、質問してもいいか?」


 この場面でそんな事を言われて俺の口元には笑みが浮かんだ。純粋に興味がわいた。


「どうぞ」

「システムは、お前にどんな『道』を見せた?」

「神へと至る道。かな?」

「……………………は、…………はは……。なるほど、驕っていたのは吾か……」


 抵抗する意志すら無くしたらしい。ルベルトは深く息を吐き、脱力したように座り込む。


「いやいや、流石ですよ。まさか、そんな質問が来るとは思いませんでした」

「……吾の首一つ差し出せば、ヒューモ族を見逃してくれるか?」

「いや、勝手に人を大量殺人鬼にしないでよ。それに今はルベさんの命を取るつもりはないよ。さっき言っただろ? 最後の警告だって。前回は見逃してやった。今回は、俺の事ではなかったからおまけした。一応ね、俺は、恩を仇で返すつもりはないんだよ。ルベさんの思惑がどうであれ、色々してもらえたし、色んな話も聞けたしね。まぁ、アレのせいで勘違いさせたかもしれないけど」


 後ろに居る柳に視線を送る。

 柳はほんの一瞬だけ「残念」という顔を見せていた。

 危険なやつである。ホント。


「……『侍』があんな風に動くとは思いもしなかった……」

「……だろうね」


 俺の視線の先を見て、ルベルトは疲れたように口にした。

 いや、最初は不思議だったんだよね。確かに高スキル保持者には、高スキル保持者をぶつけるしかないとしても、情報収集すら分身にさせてる事にさ。

 俺の所なんて許可さえ出しておけば、シムが勝手に集めてくるのにって。

 

でもルベルトはそれをしていなかった。むしろ出来なかった。

 シムがスキル『森羅万象』を三百個ほど対価に得たルベルトの情報にはスキルの使い方もあった。

 分身の使い方。システムの使い方。忍達の認識の誤りなど。

 いや、そもそも。


 スキルに人格があると考える方がおかしいのだろう。


 一人暮らしの最初の頃、俺は話相手を欲した。

 マンガや小説の中ではしゃべる剣や魔道書、それこそしゃべるスキルなどは割とありふれていたから、転生した世界に、『スキル』というものがあった時、スキルに人格の一つや二つあればいいなと思っていた。だから、スキルが人格を持とうが、人の形を持とうが、不思議ではないし、「そういうものなのか」で終わるが、ルベルトは違った。

 ルベルトにとって、スキルは自分が使うものであり、自我が有るなど思いもしないし、許しもしないのだろう。それ故に彼らは満足に動けず、受理した命令通りにしか動けない。

 高性能なゴーレム。それがルベルトにとっての忍や侍だ。逐一命令しなくては動かない。そんなものに情報収集なんて頼まないというわけだ。

 それでも、監視カメラのように対象者に貼り付けておけばいいと思うのだが、本来はサポートスキルである、システムや処理速度向上、思考加速など、「消費することのないスキル」達を一つずつしか持っていないため、立ち上げすぎると処理落ちしてしまうのだ。

 それこそパソコンのフリーズの様に。こういう所はほんと、嫌らしい作りだと思うよ。


「……俺ね、ルベさん。さっき結婚したんだ」

「結婚?」

「そう。前世のしがらみでずっと好きだって認める事が出来なかった人と結婚したんだ」

「そうか。それはおめでとう」


 それは、言葉だけのものではなく、こんな状況にもかかわらず、ほんの少し心がこもった言葉で、俺も素直に受け取れるものだった。


「ありがとう」


 そう礼を言って、ルベルトを見る。


「だから、今後は絶対に、許さない」

「……第一欲求に属する人間か」


 俺の言葉に籠もる何かに気づいたらしい。ルベルトはため息交じりにそう口にした。


「そうだよ。俺の全てだ」


 答えて、俺はルベルトに一歩一歩近づく。ルベルトはもはや警戒することも身構えることもしなかった。

 俺が殺そうと思ったら、次の瞬間には死んでいる事を理解しているのだろう。


「俺は、前世の記憶をある程度持つ。だから、自分がいかに異常であるか分かる。前世と今世が混じって妙な事になってるんだと思う。ヒューモ族の第一欲求って、基本、愛を捧げる事だよね。相手が人間の場合って。ルベさんはヒューモ族のために頑張ってるけど見返りを求めてるわけでもないんだろ?」

「……見返りがそもそも求めにくいものだからな、ただ、子らが、笑って、幸せであればいいと思う。それを見るのが吾に取って一番の喜びであり、見返りだろうか……」

「うん。俺の嫁さんもそんな感じ。自分の幸せよりも、俺の幸せを願うような感じ。俺の傍にただ居られればそれで良い、みたいなさ。ヒューモ族はさ、あれだね。第一欲求が空白の時の方がタチが悪いね」

「……否定はしない。渇望しているものが埋まらないから別の何かで満たそうとする」

「第一欲求に人間以外が来るなんて事あるの?」

「……それはありえるだろう。吾の欲求も、人ではあるが、個人に向けてのものでは無いからな」

「そう。……第一欲求ってのは、変わることはあるの?」

「吾は神では無い。だから絶対とは言えぬが、本物の第一欲求であれば、変わらぬだろうと思う。吾は一度たりとも『ヒューモ族の未来』以上の存在などなかった。妻が居て子もいたが、それよりもヒューモ族の未来の方がよりずっと吾の心を占めた。義務だからではない。本当にただそれが愛おしかった。それは吾が生まれてからこの日まで、ずっと揺らぐことは無かった」

「そっか」


 俺の口元に笑みが浮かぶ。

 俺のゴドーへの愛が変わらないという言葉にほっとする自分が居る。

 そして、ゴドーからの愛も。






基本的に私の書き方は脳内キャラクターのセリフをそのまま書いて、で、手直しして、みたいな感じになります。その書き方がいいのか悪いのかはわかりませんが、最初はとりあえず、そんな風に書くので、キャラクターによっては決めセリフっぽく、ポンッと重要な意味を持つような言葉を放ってきます。

で、なんでこんなセリフを吐いたんだ!? って考えて、ああ、なるほど、こういう事か! ってなる時があるのですが。


今回の話を書いてて一番焦ったセリフ。


「お前自身の事は、お前に聞けば答えてくれるとの事らしいが、一つ、質問してもいいか?」


でした。

ルベルトのこのセリフに一番戸惑った。


「一つ!? 質問するのは構わないけど1個ですか先生! ちょっ、貴方は頭がいい設定だからつまり、それで全てが解決するって思ってるのかも知れないけど、それを考えて書く方の身になれ! なんだよ一個って!! どのスキルを持ってたら、敵わないっていう考えになるんだ!?」とちょっと焦りました。

スキル表見て、そんなんねぇわぁ!! と書き直したれ、と思ったけど、書き直すんじゃ無いっていう脳内のルベさんからのプレッシャーが。


あ、システムか! ってなったのはたぶん二分以上は経ってたと思われます。

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