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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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約一ヶ月ぶりの人達と、数時間ぶりの人達。



 約一ヶ月ぶりに、俺とゴドーは城に戻ってきた。

 エントランスの扉を開け、中へゴドーを促す。


「少し寝られるけどどうする?」

「いや、半端に寝る方が辛いと思う。起きておく」

「そう? じゃあ……俺は朝食作るけど」

「私も一緒に行ってもいいか?」


 もちろん俺の答えはイエスなのでゴドーの手を握り、キッチンへと向かう。


 二人で野菜の皮を剥きながら話をし、スープを煮詰めながら、手と手を重ねて笑いあう。そんなイチャイチャをしていたらいつの間にか皆が起きてくる時間になった。


「朝の祈りは?」

「そうだな。先ほど直接会ったばかりだが、一応しておこうかな……」


 ゴドーはそう言ってキッチンから出て行くので、俺も鍋に蓋をし、火を落としてその後を続く。

 ゴドーは庭に出て太陽が見える場所を探し、膝をつき、手を組み祈る。俺はその横でその姿を眺めていた。


 農園に居た頃は、その姿に、自分のものにはならないと突きつけられているようで、嫉妬と独占欲を覚えたけど、今はそんな感情は浮かばない。


 俺の位置から見える、ゴドーの薬指に光る二つの指輪。

 それが俺の心に余裕を持たせてくれている。

 俺の薬指にはまだ何もないけど、ゴドーがいつか渡すと約束してくれた。

 ペアリングが正しいのかもしれないが、そんな風習がない異世界だ。そこまでは求めない。ゴドーが俺のために用意してくれるだけで十分だ。

 

…………まあね、分かってるよ。どうせ結婚出来たって事に浮かれて、一時的に心が広くなってるだけだろってのは。


 


 朝の祈りが終わり、ゴドーが俺の元に戻ってくる。

 お帰り俺の奥さん。と、頬にキスをすると、ゴドーも俺の頬にキスを返してくれた。


 来た時と同じように手を繋ぎ城の中へと入る。

 中に入るとばったりセリアと会った。


「あ、おに……どちら様でしようか?」

「お前の兄貴のエドです」

「え!? エド!? ホントに!? 成長したの!?」

「まぁな。で、皆にいろいろ説明したいことがあるんだが、みんな揃ってるか?」

「神官三人はまだだけど」


 言いつつセリアの目が、俺の横へと移動する。そして、目を大きく開けて、それから眉間にしわを作り、俺を睨みつけた。


「お兄。その人は?」

「えっと、ゴドーさんです」

「そのゴドーさんによく似た女性(・・・・・・)はどこのどなたですか、と聞いているのですけど?」

「いや、だから、ゴドー本人」

「すまないセリア、こんななりをしていても、一応本人だ」


 勘違いし、怒っているセリアに俺とゴドーはそうきちんと伝える。

 いや、本当の事を知ったら知ったで怒るかもしれないか、そこは素直に怒られよう。


「本人?」

「ああ、神に願い、性別を自由に変えられるようにしてもらった。諸事情により、今は男に戻れないが……」

「え!? お兄のためにそこまでしたの!?」


 セリアは驚いて、そして俺を見た。


「お兄。愛されてるね」

「いやぁ、はっはっはっは……。って、やっぱり知ってた?」

「んー、知ってたっていうか、もしかしたらっては思ったけど、でも、あくまで友達としての関係だろうな、って。ゴドーは男だから、絶対、意地でも恋愛には発展させないだろうなって思ってた」

「……やっぱ、そっちの俺も、顔で面倒な事になってたか……」

「うん。中学の頃は彼女が居ない時期はなかったんじゃないかな?」

「そっか」


 しかし彼女持ちだったのか。そこはパラレルの俺、ムカつくな。

 あ、いや、でも俺には今、ゴドーという彼女……じゃなかった奥さんがいるからいいや、別に。


 とりあえず、ダイニングに向かう。

 途中でバロンにあった。


「あ、おはよぅう? ……エド様?」


 俺を見て首傾げてくるバロンに俺は頷いてやる。バロンはやはりセリアと同じように横に視線を向けてそこに立つゴドーを見て、目玉が飛び出すんじゃ無いかってほど大きく目を開けた。

 全員こんな感じになりそうだな。なんて思いながらダイニングに俺達は入っていった。





一同が集まるダイニング。

 そこのお誕生日席に座るゴドー。俺はその横に立ち、みんなの「いろいろ聞きたい」っていう視線を集める。


「まず最初に。俺はエドで、こっちはゴドー。っていうのは良いかな?」


 確認を取ると全員頷いた。

 本当は色々質問したいんだろうけど、まずは俺の話を全部聞いてからだと思っているのだろう。

 でもさぁ。言える事と言えない事があるよねぇ。


「えー。俺は、前世は異世界人っていう影響で、ヒューモ族のくせに、男と恋愛っていうのがどうしてもダメだったんだ。そんな俺のためにゴドーは、女性になってくれました。そのおかげで俺は、自分の心を素直に認める事が出来て、晴れて、恋人同士となり、そして先ほど、神に結婚の誓いを立ててきました」

「スピード婚過ぎる! どんだけ電撃結婚なのよ!?」

「ついでにゴドーさんのお腹の中には俺の子供も居ます!」

「はぁ~!?」

「「あり得ない!!」」


 驚愕の一同と、別の意味で全否定する神の依り代二名。


「ちょっと待ってお兄! いくらなんでもはしょりすぎ!」

「ゴドー! 君、そんな嘘ついたのか!?」

「いや、嘘ではなく」

「はいは~い。ちょーっと待ってね~。まずは俺の話を聞こうや」


 まぁ、冷静さを無くす話し方をしたのは間違いなく俺だけど。


「先に、重要な事があるから、それだけは先に言わせろ」


 俺がそう声をかけると、何かを感じ取ったのか、皆は口を閉ざしていて、浮かせていた腰をイスに下ろす。俺はにっこりと笑った。


「俺は先ほど上げた二種族の影響で、ゴドーへの愛が重いです。セリアには病んでるっていった方が分かりやすいんじゃ無いかってくらい、重いです」

「げ……」


 俺の言葉にセリアは小さく呟いた。


「だから言わせて貰いたい」


 冷酷な眼差しで俺は一同を見つめているだろう。


「ヒューモ族だからって、男のゴドーだろうが、女のゴドーだろうが、遊んでくれるだろうと手を出して見ろ。俺は、それが友達だろうが、仲間だろうが、妹だろうが、容赦なく牙を剥く。俺に殺される覚悟があるやつだけ、ゴドーに手を出せ。俺が叩きのめしてやるから」


 不穏な俺の言葉に、ダイニングは、信じられないくらい、無音となった。

 物音一つ立てただけでも、殺されるんじゃないかって思うくらい怖いのだろう。

 俺が不穏な空気を発するのを止めて、「と、まぁ、本気で脅かすぐらいには愛が重いから、ゴドーに手を出すのは止めとけよ~」とおちゃらけたように言うと、皆が同時に頷く、そして、緊張の糸が切れたからか、ニアが泣き出してしまった。


「うえぇぇん、うえぇぇぇん。こわい~ぃ」


「あー……。わりぃ、ニアをそこまで脅かすつもりは無かったんだけど~」


 と、言っても後の祭り。

 ゴドーからお叱りの眼差しを受け、俺は自主的にその場で正座。


 あ。この位置、ちょっと顔をうつむけたら、前髪で隠れて、ゴドーの足を観賞しててもばれないかもしれない。

 でもうーん。あえてだぼだぼの服を着て貰ってるから、あのお美しい御御足様が分からないなぁ。

 でも、ゴドーの観賞は楽しいから---。


「エド、反省する気ないだろ」


 そんな事言われて反射的に顔を上げる。

 ジト目のゴドー。え!? なんで!? 何でバレたの!? っと思ったけど、すぐに理解する。


 シム! お前、俺の事売ったなぁ~!!

『事実を言っただけです』

 ひでぇじゃないか。

『自主的反省に正座するのならきちんと反省してください』

 反省するつもりはあったんだよ。初めは。

『最後まで貫いてください』


 などという醜い争いをする俺。


 ゴドーはため息をついて一同を見た。


「エドが言った事は大まかには本当だ。確かにはしょりすぎではあるが……。子供については、私とエドは、一月ほど、異世界に行ってたので、その間に身ごもった。なので私は子供を産むまで、男には戻れない。あと、私はヒューモ族だが、太陽の女神に結婚の誓いをたてた影響で、エド以外には発情しない。私に手を出してもなんの意味もないとだけは一応伝えておく」

「待って! その辺の話も詳しく!!」


 ゴドーの言葉に激しく反応したのはミカだ。

 たぶん俺以外には発情しないという事に強い興味を持ったと思われる。


「異世界に行く理由と、そこで一ヶ月過ごす事になった理由については」

「そこは聞いてない!」


 ブンブンとミカは首を横に振った。


「……ああ、ヒノワ様に結婚する事を誓うとそうなるらしい」

「ヒノワ様か~……」


 泣きそうな顔でミカは頭を抱えた。

 やっぱ、あれか? ミカの場合はトキミ様じゃないといけないのか?


「……その前に確認を取るが、エド。お前はオレ達依り代がどういう風に生まれてくるのか、……聞いたのか?」

「ゴドーから全部聞いた。俺からすればそんなの、結婚を躊躇う理由どころか付き合う事の躊躇いにもならないよ」


 そう告げるとシェーンもミカも困惑を見せた。


「あくまで、俺は、だけどな」


 これで俺のせいでダメだった! なんて言われても困るので一応、保険で最後はそう付け加える。でも、だ。


「でも、俺からすれば、その程度で無理ってなるヤツは、所詮その程度って思うぞ? まあ確かに色々ハンデ背負ってるといえば背負ってるだろうけどさ」


 二人は無言だった。無言で、ゴドーを見た。

 ゴドーはそれに対し、苦笑を返す。


「私は恵まれていると自覚してる」


 ゴドーがそう返すと、二人は顔を少し俯けた。

 俺が特殊だって言いたいのだろうか。

 ミカは深いため息をついて、イスに深く座り直し、シェーンもそれ以上何かを言う事は無かった。

 たぶん、他の人間がいる所では聞きにくいのだろう。


「……あの、女性になるというのは、どうやってなったんですか?」

「神から専用のスキルを貰った。宣教師になってからの働き全てと引き替えだけど後悔はしてない」

 バロンの質問にゴドーは嬉しい言葉も追加してくれた。


 後悔してないって。

『良かったですね、マスター』

 なー。


「あ、そうだ。それなら、ゴドー、あとでスキル売ってよ。全種類一つずつ」


 これを育てれば、またゴドーに貢献度が入ってくるし、と、正座のまま見上げて告げるとゴドーは振り返り、首を横に振った。


「それはもはやズルだと思うから、止めとく」

「酷い! ズルなんてしてないのに!」

『そうです!』

「いや、確かに何も不正は行ってないのだろうけど、印象的にはもはや、ズルだと思う」

「よくわかんないけど、お兄はすでに存在自体がチートっぽいもんね」

「だから、チートはしてねぇって!」


 でも、こういう時のゴドーは譲らないんだ。結局買えなかった。

 あとでどうにかして、貢献度を溜めさせないと。

 なんだかんだ言っても、この世界で一番強いのは、この世界の神なんだし。


 朝食のスープを食べつつそんな事を考える。

 そして半分ほど食べた所で気づく。


 しまった!! 夫婦で初めての共同作業で作ったスープを半分以上上の空で食べてしまった~。味わうつもりだったのに……。


 しくしくしくしく。


 心の中でのみ涙を流し、残りの分はしっかりと、味わって食べた。





 色々な手続き、本来なら、面倒と思う手続きも結婚となると、別だね。

 始終笑顔で手続きをし、終わらせる事が出来た。

 用事が終わると城へとゴドーを送り届ける。

 黒子を使用してるから変なやつらに絡まれる事はないと思うが、俺の安心のためには重要だ。


「じゃあ、俺野暮用終わらせたら、買い物行くけど、何か買いたいのとか食べたいのとかある?」

「いや、特にない」

「そか、分かった。そんなに遅くならないと思うけど何か有ったら連絡して」

「分かった」


 エントランスで別れる前に、チュッとキスをする。


 お出かけのキスなんて、新婚さんっぽいね!


 なんて思いながら、俺は転移する。

 野暮用をさっさと終わらせて、パーティー用の食材を買い揃えたい。

 ウェディングドレスと言っても、ゴドーは男だし、女性が憧れるドレスとかには興味ないだろうし。

 それよりは飲み食いの方が良いかなって、ゴドー、酒は駄目か。まぁ、仕方がない。美味しいフルーツジュースにしよう。


 そんな事を考えながら、転移先に出て俺は口を開く。


「さて、ルベさん、覚悟はいいかい?」


 正真正銘の城、王城に転移した俺は、そこにいたルベルトにそう告げた。




おかしい。おかしいです。

なんでこんなに話が膨らんでいるんでしょう。

こんなに膨らむなんて。でも脇道にそれてるわけではない。


元々予定してた内容でした。内容だったけど、話がちょっと膨らんだ。

神の山ももうちょっとさくっと終わると思ってた。

さくっと終わらなかった。

二つに割れるほどだとは思ってませんでした……。


神の山から城まで更新一つ分かなぁ。なんて思ってた私。

全然違ったよ……。



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