加速するぬるゲー
「何よあれ。降参するから情報出しなさい」
攻撃すらできない敵が正体不明を行動を見せたことで余裕がなくなったのか、光りながら体を伸び縮みさせる煙に杖を向けたまま横目でこちらに聞いてくる。
こういうのを見ると情報って大事なんだなあ、などとのんきに思いながら影から新たに液体の入った瓶を取り出しながら言った。
「奴はスクアディーム。最初は煙のような状態でお互い攻撃できないが、条件を満たすと段々状態が変わり攻撃が通る様になるぞ」
「そう、なら今からなら攻撃できるってことね」
「ああ、だがちょい待「今ままでの鬱憤晴らさせてもらうわよ! <ウインドコフィン>、<サウザントウインドバレット>!」」
ネットの情報を丸々と言っただけの俺にクラリアは頷き、続きを言う前に杖を振るって二つの魔法を唱えた。
結果としてそれは囲う風の檻と数多くの弾丸となって、未だ煙のまま蠢くスクアディームを貫いた。
「…ふむ」
これは先走るクラリアも悪いが、もったいぶった言い方をする俺の悪い癖のせいだろうか。本当は水属性の攻撃して石化させるというものだったのだが、まあいいだろう。
言葉通り鬱憤を晴らすために膨大な量の風の弾丸がスクアディームを貫き、その身を構成する煙が抉られていく姿は爽快を通り越してもはや可愛そうに思うレベルだ。
だからというわけではないが、嬉しそうにスクアディームを打ち抜くクラリアにやれやれと肩を竦めながら言った。
「そんな風にやってないでさっさと終わらせろよ。まだまだ先はあるんだぞ」
「ふう…確かにこれ以上やっても魔力の無駄ね。さっさと終わらせるわ」
「そうしてくれ。<影収>」
俺の言葉にひとしきり魔法を打ち込んで満足していたのか、クラリアが頷き杖を振り上げたのを見て俺はさっき投げようとしていた水入りの瓶を影に落とした。
クラリアの呪文ともに空気の塊がスクアディームを叩き、そこら中に炎と煙をまき散らした。
「ふふん、どんなもんよ」
「おつかれ。だが次は場所を考えてほし…」
クラリアが満足そうに胸を張るが、振動のせいでパラパラと落ちてくる砂埃を振り払いながら言った。
その時、目の端で今しがたはじけ飛んだはずの煙が浮いているのが見えた。
あんなふうに煙に色が付くなんて情報はなく、何か起きると感じて浮かび上がる赤い煙に目を向けたまま背後にある出入り口に向かってじりじりと下がり始めた。
「とりあえず部屋から出るぞクラリア」
「なによ。さっきのやつだったら倒したじゃない」
「それが生き返ってるくさいから言ってんだろ。ほら」
未だ気づいていないクラリアに顎をしゃくり、飛び散ったはずの煙が浮き始めているのを示す。、
部屋中から煙が一点に集まる光景に、先ほどまで上機嫌だったクラリアの頬が歪んだ。
「何よあれ。まだ撃たれ足りないっていうのかしら」
「そう考えちゃうかー。もう少し警戒心っていうのが必要「<多重詠唱>《エアランス》」だと思うって人の話聞こうぜ!?」
人が喋っている最中に、風でできた巨大な槍を十数個射出して俺は思わずツッコミを入れた。
哀れにも再度散り散りになった煙を傍目に、クラリアはうるさそうにこちらを見た
「うっさいわね。生き返ったところで倒せばいいのよ倒せば」
「いや、確かにそうだけどさ。もしも何かあった時の場合がですね」
「いいのよ、何があろうと私の魔法に手出しできるわけないし。それよりほら、さっさと次行くわよ」
「いつか痛い目見るぞ、その考え方…」
俺は痛くなってきた頭を抱えてぼやきながら、暴れて満足したのかスキップでもしそうなクラリアを追って部屋を後にした。
しかし、なんだか戦闘関連ではぬるゲーが加速している気がする。主にクラリアのせいで。
「これ別にボルカンに行っても平気だったんじゃねえかな」
長らく空いて申し訳ありません。長期休暇入ったのでようやく更新です。
しかし書き方とか色々忘れてるからやばい(小並感)