冒険の始まり
「随分と凝った創りなのね。ここまで来る道とは大違いだわ」
俺の説明を聞いたクラリアが、扉の外をちらりと見ながらそう言った。確かにモンスターは一匹しかおらず、最後は退屈になる道のりと反比例するかのようなダンジョンだから、そう言いたくもなるだろう。
「まあね。とりあえず余計な行動はできるだけしない方がいいぞ。何が起きるか分かったもんじゃねえ」
「注意するのならその余計な行動がどんなものか言ってほしいのだけど。うっかりでやったら目も当てられないわよ」
「そのやるといけないことは結構多いぜ? だから今言っても無駄だろうよ」
確かに教えてやりたいが、部屋数=条件数じゃないので俺も主要な物しか覚えていないし、お前が覚えきれるとは思わないというのは心の中だけで留めておく。
例を挙げると、『斬撃系の武器を所持している』と刃を通すことができないほど固い甲羅を持つモンスターが出てくる部屋や、『魔法を打つ』と魔法に強いモンスターが出てくるといったものだ。ちなみにこの二つは同じ部屋という素敵仕様なので、考えた奴は滅びればいいという意見が多い。
そんな際立ったものしか覚えていないことをごまかすために肩を竦めて言うと、クラリアは腕を組みながらどことなく疑うような視線でこちらを見ていた。
「ふーん、まあいいわ。じゃあ部屋に入る前に分かるだけ言ってちょうだい」
「え、嫌だけど」
返答までノータイムだったのでクラリアは一瞬きょとんとしていたが、俺が言ったことが分かったのか杖を握りしめながら、苛立ちのせいか若干引き攣った笑みを浮かべた。
「…私の耳が悪くなったのかしら。私だけでなく、貴方の安全のためにも部屋に入る前に教えなさいよ」
「え、嫌だけど」
「……私の「え、嫌だけど」ミンチになるのと遺跡のシミになるの、どちらがいいかしら?」
「どーどー。冗談だからその杖しまえ、な」
一言も違わない三度の拒否に笑顔で女子としては物騒過ぎる言葉を吐き杖がこちらに向けられ、光を湛え今にも魔法を放ちますと言いたげな宝石が鼻先に押し付けられる。
こんな狭い場所で魔法を放たれてはどうなるか分ったものではないので、後ずさりしながら宥めにかかるとあちらも冗談だったのかあっさり杖を下した。
「まあ俺としては初めての冒険だから、あんまり口出ししないでおきたいって思ってな」
「あら、思ったよりまともなこと考えてたのね。貴方なら面白いとかいう理由だけで拒否しそうだったのに」
「んなことはしねえよ。それじゃあ最初の選択だ。お前はどの道を選ぶ?」
「真っ直ぐよ真っ直ぐ。とにかく突き進むのみよ」
2割ほどそう思っていたが言われるのは読めていたので否定し聞くと、そう即答して杖を手に持ち先に進んでいった。そこからは左右とこの部屋にしか来れないと言ったはずなんだがねえ、全く。
「早く来なさいよ。貴方が来ないと暗いままでしょ!」
「へいへい今行くぜー」
まあ入ったら確実にあの罠に引っかかるだろう。そんなことを考え、楽しみにしながらクラリアと共にダンジョンの奥に進んでいった。
剣Lv36 回避Lv39 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv22 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv39
話の展開を早くしなければ…




